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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十三章~休息の時~
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9.愉快犯組

「……うん。滅亡寸前の王都に着いたな。」

「どうしますか?」


 攻められて城の城門がそろそろ破られそうになっている所を上空から今村たちは眺めていた。


「ん~そろそろ王子さんが敵の将軍と一騎打ちを起こして勝ちかけたところでハリネズミにされるところだと思うが……」

「どうかしました?」


 今村が言葉尻を濁して少し微妙な顔をしたことで祓がそう尋ねると今村は最後のシーンを思い出して微妙な顔をしていた。


「そう言えば……あの王子最後のシーン姫さんの身を案じることしか言ってなかったな……そこは一騎打ちを一方的に破ってきたことに対する突っ込みを入れるべきだと思うんだが……」

「……では、別の所に行きますか?」


 少しどうなんだろうと思わないでもないが祓は基本的にわからないことであれば今村が言うことには肯定の意を示すので特に突っ込みもなく今村にそう言うが今村は横に首を振った。


「いや、もうそろそろ待ち合わせの時間だ。」


 祓が今村の言葉に首を傾げたその瞬間、目の前の光景が一変した。


「オイーっす!」

「ヨーっす。」

「……何で爆破したんだよボケカスどもが……」

「「ノリっす!!」」


 全く同じ格好をして全く同じ顔をした美青年たちが城壁や街並みを全て綺麗に更地にしながら目の前に降りて来ると今村は祓を見て尋ねた。


「こいつら格好いい?好みのタイプ?」


 祓はいつもの薄い表情から露骨に嫌そうな表情を出すと答えた。


「嫌いです。……あの、先生……私先生以外の異性は嫌いなんですが覚えておられないですか……?そんな顔されても困りますが……」

「フィトは?」

「…………むにゃ……?」


 フィトは今村の後ろ側でローブのベッドを作ってもらいその中から目の前の二人を見て首を振った。


「……何か~いるの~?」

「……本っ気で興味ないんだな……認識外に置くとか……」

「何この呼び出されてこの仕打ち。」

「酷いね。」


 目の前の双子は若干イラッと来たようだ。そして何か考えついたらしく悪戯っぽい笑みを浮かべると術を掛けた。


「反転!」

「面がいいからって傲慢なんだよ!あんたら、ブスになれ!」


 双子の術は綺麗に祓とフィトに掛かったが驚くのは双子の方だった。その様子を見て今村が軽く説明を入れる。


「あー……こいつら、もう概念体に近付いてるからそんな術じゃ無理。あらゆる視点に置いてあらゆるモノが美少女と思うようになってる。」

「……第1世界の術でも無理だと……?」


 術が掛かったのにもかかわらず変わらない姿の二人を見て双子が軽く驚愕しているのを無視して今村は虚空を見上げて口の端を吊り上げて笑った。


「来たか。」

「はーいお頭さんよぉ来ましたよ~♪ここからはぁ~っDJテイナーが!お、お、くりいたしまぁすっ!」


 瞬間、ラッパの音が鳴り響くと地面から植物の発芽の様に先程まであったモノが全て生えて来て戦っていた人物たち皆が状況を把握できずに呆然としている状態が生み出された。


 今村はその中で王子たちの場所を確認した後に頷いて自分たち一行に伝える。


「さて……まぁ今日来れるのはこんな所だろ。そんな感じの愉快犯組が揃ったところで……突っ込み探しの旅を始めるぞ!」

「イエー!」

「「これと一緒にされるのは心外。」」


 双子はそう言い残して帰って行った。テイナーと自称する男は口笛を吹いてそれを見送り今村はそう言えばと祓の方を振り返る。


「祓、これ、タイプ?……まぁお前の見りゃわかるが……」

「でしたら言わないでもいいですか?私は、先生だけが大好きです。」

「ひゅー!あっついですねぇ!あーあんまりにも熱すぎたから……あ、ほら。太陽が生まれたようですよ?」


 地上で天変地異だという叫び声が上がり、空を見上げると太陽が7つに増えていた。今村は暑いということでその太陽を瞬時に消し飛ばす。


「ん~……あつい~……ね~あついよ~」

「うわこりゃまた可愛いお嬢ちゃん!これ貰っていいっすか!?」

「本人に訊「やだ~」……だそうだ。」

「うわ~こりゃまた、しっかり見たらたまらない……見たことないレベルの……第1世界でも稀に見る……」


 テイナーが興奮していると再び空に太陽が増えたので暑そうにしていた今村を少しだけ見た祓はそれを無言で粉々にして撃ち落とす。


「こっちの姉ちゃんもレベル果てしなく高いけどこっちはホント凄い!お頭さんよ、どこで引っ掛けて来たんすか?」

「運命だよ~フィトは~旦那様~だ~いすきなの~」


 フィトがテイナーと会話しているのを見た祓は少しだけ面白そうな目で二人を観察している今村の表情を見てフィトに忠告しておくことにした。


「……フィトさん、あまり異性と話すと……捨てられますよ?」

「祓、変なこと言わなくていい。……あ、フィト気にするなよ。そんなことあるわけないだろう?会話を続けた方がいいよ?楽しいだろ?」


 今村は至極通常のトーンで言ったのだがフィトはそれが逆に怖く感じる。あまりにも普通の声は自分に何の特別な感情も向いていないということを肌で感じさせるには十分だったのだ。


「ご、ごめんなさい~……」


 フィトが今村の背中で僅かに震え始めるのを感じると今村はフィトには見えないが露骨に顔を顰めて小さく舌打ちした。


「……祓の所為で新しい可能性の芽が……あー取り敢えず、テイナーはい。」

「いや~!やだ~!」


 まるで荷物の受け渡しのように渡されかけたフィトはシュミーズドレスの袖から木のようなものを今村に巻きつけて抵抗する。その光景を見てテイナーは苦笑して呟いた。


「あ~何かアリアちゃんを思い出す……」


 そのテイナーの一言で今村も自分が拾って育てた子どもであるアリアのことを思い出した。


「アリアお前のこと嫌いになったよな。アハハ。」

「……お頭の所為でしょうがぃ……あーその子はもう狙いませんから。肩車でもしておいてあげてくださいや。」


 アリアは今村が拾って基本的に育てた子どもだが、一時期テイナーに懐いた時期がありその時に今村はテイナーに預ければいいやという考えに至り、テイナーがいない時しか構ってあげないようになるとアリアはテイナーのことを目の仇にするように嫌い始めたという過去がある。


 それはともかく、テイナーが諦めたということなので今村も押し付けるのは止めて力を抜くとフィトも触樹を引っ込めて少し大きな息をついた。


「ふーふ~っ……あ、ありがと~祓ちゃん~」

「いえ。貸し一つです。」

「……しっかりしてんな。」

「おっき~借りだね~……頑張るよ~」


 逞しく育っていた祓を見つつフィトが首に巻きついて来るのに若干イラッと来ながら今村はいい加減に待てないと下を見下ろして叫んだ。


「……突っ込み入れろよ!」

「え、あ、わ、私、ですか?」


 そして理不尽に城壁に居た王子にそう叫び、丁寧に突っ込みどころを説明した後精進しなと伝えて一行は別の世界へと飛んで行った。





 お疲れ様でした。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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