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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十三章~休息の時~
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7.メンタルケア

「ということで姉貴。踊りたい?」

「え?ひとくんとなら踊りたいけど……何で?急にどうしたの?」

「いや、俺は踊りたくない。」


 今村はアリスにも賠償を行おうとして彼女の部屋の扉を開けた後何かもう今日はいいやと言う気分になって帰りたくなった。当然部屋の扉を開けて急に踊りたいか尋ねられたアリスは困惑した。


「お姉ちゃんが踊るところ見たいの……?」

「全く。」

「……ひとくんが見たくないのに踊らないよ……?」


 本当に何を言っているのか分からないがアリスは取り合えず今村のことを部屋の中へと招き入れた。


「さて、前回の消滅の件について、頑張りましたで賞をあげるが何がいい?出来る限り叶えよう。」


 今村の言葉を聞いてアリスは考える。


(……ん~……正直、貰う権利とかないと思うけど……でもひとくんの方からご機嫌で言ってくれてるからあんまり無下にしない方がいいよね……簡単なのがいいかな?危ないことしないでほしいは……無理よね……結婚とか、そういうことは私たちが悪いのに望み過ぎだし……)


 色々考えた結果、アリスは以前祓から聞いたある事件のことを思い出して今村に尋ねた。


「……恋愛君って、あるの?」


 今村は少し考えるとにやりと笑って頷く。だが、その笑顔を見てアリスはすぐに悪巧みされたことを感じ取ってその案を棄却する。そこで思いついた。


「あ、お姉ちゃんをね、ひとくん以外の相手とくっつかせようとするのをやめてほしい。」


 その言葉を聞いて今村は間違えて貴腐酒を飲もうとして殺神用の苦薬を大量に飲んでしまったような顔をする。


「……まぁ、元々あんたは処女神だから間違ってはないんだが……ん~……タナトスとかもダメって事だろ?」

「うん。勿論。」

「トーイも、イグニスも、アーラム「ダメだよ?ひとくん以外全部いや。」以外を()に変えてくれればいいのに……」


 今村は色々考えてアリスに説教を開始し始めた。主にもっと視野を大きく持つことと過去に縛られないようにすることを熱心に説くがアリスはいやの一点張りだ。


「……わかった。」

「うん。ありがとー」

「ただし、今から一年間はしないっていう期限つきな。」


 アリスの顔が強張った。


「……どうして?何で一年間だけなの?お姉ちゃんは一生ひとくんに独占されたいのに……」

「先の一件で思ったよりあんたらがいい人だったから俺の方も頑張って君らのいい相手見つけようと思ってるんだよね。大丈夫、その優しさと美貌があれば第1世界でも相手を……」

「怒ってるの……?」


 今村の台詞を途中で切ってアリスは僅かに怯えの色を見せる声で今村にそう尋ねた。今村は首を傾げる。


「え?俺は楽しいし、あんたを褒めてるんだが……」

「じゃ、じゃあ何で、嫌なこと言うの?」

「はぁ?」


 今村が意味が分からないので上げた声をアリスは苛つきの声だと思って軽く目に涙を浮かべ始める。


「や、やっぱり、怒って、た……か、勝手に、ご機嫌だと、思って、ごめんなしゃい……お、怒るよね……余計なことしたんだもん……で、でも、良いことだと思って、したんです……だから、追い出さないで……」

「……まぁ、余計なことは事実だが……頑張ったのも事実だからご褒美と思って来てるんだが……何で泣くんだ?はいよしよし。」


 今村はアリスを宥めることにして子どもをあやすように頭を撫でてあげる。アリスは涙腺を決壊させて今村に抱きついた。


「ぅぇ……だいしゅき、です……これは、ホントです……だから、」

「はいはい。落ち着いて落ち着いて。面倒だなぁ……埋めようかな……」

「なら、ひとくんの、畑がいい……ずっと一緒がいい……」


 今村のボヤキが普通に聞こえたアリスは軽く引くようなことを言って今村を普通に引かせた。そんなことを言って今村のローブに顔を埋めていたアリスは少しして疲れたのか眠ったので今村はそっと乙女チック1000%のベッドにアリスを横たえるとアリスの部屋を後にした。


「……さて、褒美はなしだが……メンタルケアしに出かけないとなぁ……本っ当に面倒だが……」


 そして鬱気味になっている白崎の下へと移動し始めた。

















「……猫ダマシ!」

「ひゃ……」


 広い高級感のある部屋のベッドの上でずっと横になっている怜悧な顔立ちをした白髪の美少女を前に今村はいきなり目の前で大きな音を立てた。


「い、今村くん……」


 怜悧な顔立ちをした白髪の美少女、白崎は今村の姿を見るなりベッドの上で土下座状態になってそれっきり黙り込む。

 ここ最近、彼女はそんなことを繰り返していたが今回は少し違う。いい加減面倒になって来た今村は強制策を取ることにしていた。


「はい。今日から普段通りの生活をしようか。いい加減鬱陶しいから。」

「……でも、」

「うるさい。仕事しろ。働け。……嫌って言うなら失敗の記憶を消す。反省すら許さない。」

「そ、それは……」

「うっせぇ。お前は何だ?俺が創った機械人形だぞ?この程度で不具合を生じさせるなんざ俺に対する冒涜だ。働け。」


 白崎は反省すら許されない状況に陥る自分を想像して溜息をつき、言葉を選びながら口を開こうとするがその前に今村が言う。


「周囲のことなど気にするな。ほぼ全員が世界を滅ぼしかねない位の大きなミスを犯したことがある。お前がやったのはたかが一個人を精神的に殺しかねなかっただけだろ?安い安い。」

「重すぎるのよ……でも、そうよね……罪は、償わないと……」


 白崎は自分であれば、いや自分でなくともここの館の住人は今村の為に世界を破壊し尽くすことを選ぶであろうことを容易く思い浮かべながら頷いた。


「甘えてばかりでごめんなさい。罪を償うために働くわ。」

「んじゃ、これよろしく。」


 今村は非常に軽い声で今村の椅子と白崎のベッドの間の床に両者が見えなくなり天井に着きそうなほどの高く、横にも広がっている書類の山を並べた。


 壁の向こうで軽く絶句している白崎の様子を感じながら今村はさっさと部屋から退散して行った。




 ここまでありがとうございました。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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