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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十三章~休息の時~
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3.この次って何?

 地上に戻って来たフィトとシェンを待っていたのは地下研究所に行く前に振る舞われんとしていた光を反射させているのではなく自らが発光する謎のメタリックワインレッドの粉末や、近くにあるだけで周囲の気温がかなり下がる江戸紫色の粉末。時間経過とともに様々な色に変わる液体。


 と言った各種香辛料とまた何か増えている闇そのものを具現化したかのような何かしらの物体。


 そして中央にメインとして鎮座しているとても美味しそうなローストビーフのようなモノ、それの上にかかっている名状しがたい謎の物質は前に見た時より色艶を失っているように見えた。


「さぁ、どうぞ?」


 今村の声に二人は震えながら箸、もしくはフォークを取った。それでも中々食指が動いていないのを見て今村は首を傾げた。


「もしかして、箸とか使えない……?」

「え、あ、そ、その……」


 シェンが何とか上手く質問を返そうと口籠りながら答えを返そうとするが今村はそれを聞いて誤魔化そうとしていると判断し、溜息をつく。


「はぁ……手掴みではないからなこの料理……仕方ない。ほら、口出せ。」

「!」


 今村は食事の手を止めて両手に箸を一膳ずつ持ち、ローストビーフのようなモノと名状しがたい謎の物質をまとめて取り、江戸紫色の粉末を付けて二人の眼前に運ぶ。


 その状態はいわゆる恋人同士の仲睦まじい行為である「あーん」と言われる状態。尤も、来ているのはローブだが……


 そしてそう言ったことを今村は滅多にしないと「幻夜の館」から聞いたシェンとそのシェンから更に又聞きしたフィトは覚悟を決めた。


「あむっ!」

「……!おにしぃ~!」

「そりゃよかった。……ってか、使えてんじゃねぇか……」


 そこから先は言葉は不要だった。二人は今村を前にしてはしたないと思われない程度に全力で食べ進め、皿の上を空にする。


 食事が終わった後、シェンがお礼と感想を言い、フィトは今村に尋ねる。


「ね~これ~何の~お肉なの~?」

「魔牛。レベルは……そうだな、14くらいのランクにしたかな?」

「へ~あれか~……もっと食べたいから~取って来るね~?」


 瞬間、フィトは姿を消した。シェンがそれを見送って呟く。


「ふぃ、フィトちゃん……仁さんの近くに、いないと、起きられない……のに……だ、大丈夫、ですかね?」

「デッドボットチリペッパーの粉末食ってたしまぁ、大丈夫だろ。」


 自らが妖しく発光するワインレッドの粉末を指しつつ今村は食後のカクテルを少しだけ飲む。


「ふぅ~疲れたよ~」


 一息ついたところでフィトが血塗れになって帰って来た。その脇には血塗れの肉塊が転がされている。


「……後で掃除しろよ?っ!違う!フィト!お前これ危ない奴だろうが!」

「え~?」

「あぁもう!部屋が破裂する!『自世界開界』!」


 食後の一息から一瞬で立ち上がると今村は肉塊、及び飛んでいる血全てを集めてあまり行きたくないが自世界のある土地へと飛んで行った。



















「さて、」


 今村の目の前には先程までの部屋の空間がそのままフィトとシェンを除いてすべてある。そして、フィトが持って来ていた肉塊、血が蠢き始めていた。


「……魔牛の特性だもんなぁ……これを知らないと大変なことになる。」


 フィトが持って来たのは間違いなく魔牛だ。ただ、魔牛は再生能力を持っているので狩りを行う際に細心の注意が必要のだ。


 ただ乱雑に狩ると細かい肉や血が各自でその大きさに応じたランクの魔牛に再生し、全ての能力が下がるので肉質がどんどん悪くなり今村が名づけるレベルが下がって行く。


「さて……見たことないレベルの大きさの肉塊だが……これは何だろう?」


 その中で、今村が見たことのないレベルの大きさの肉塊が目の前にある。これは何だろうと思っていると肉塊の再生が始まった。周囲には巨大な牛や普通の牛が生まれ、暴れているがそちらは後回しの対応にして目の前の物に注意を払う。


「あ~る~じ~さ~まぁあぁぁああ~!」


 何か聞こえたけど無視する。今は忙しいのだ。突撃してきた何かをそのまま受け流して暴れている魔牛の中に突っ込ませると今村は目の前を注視する。


「お肉!うまうま!食べるぞぉぉぉおおぉおぉっ!」


 後ろが五月蠅いが気にしない。無視する。そうしていると目の前の肉塊は虚ろな目をしている全裸の少女になった。


「……何だ、これ?」

「ぁー……うー……」


 言語も理解できていない様子なので取り敢えず彼女の状態を読み解く。すると彼女はどうやら魔牛本体のようだ。


「……なるほど。極上の美食を求めて殺され続けた、【有の神】の末路か……」


 今村は納得した。【有の神】は端的に言えば何かを生み出す能力。そして目の前の少女はそのトップらしいが、美味いと分かられてから狩られ続けて逃げに逃げて第3世界に流れて来たがここでも見つかれば殺され、傷つけられ、精神体が壊れてしまったらしい。


「さて、ん~俺あんまり人型の肉食べないしな~虫の肉とよりかは好きだけどそれでもあんまり好きじゃないし。そもそも食うに困ってるわけでもない。」


 今村は目の前の少女を見てどうするか考える。取り敢えず全裸というのと体が何か色んな汁で汚くなっているのを改善すると途中で少女がこちらを見て口を開いた。


「…………変態め……」

「……まぁ、変態ではあるな。うん。」


 そこは否定しない。事実、裸の彼女を洗っているし、個人的には少し……ほんの少しだけズレている普通の神のつもりだが周囲から変神扱いされているのでもう諦めた。


「…………胸、切って、私の前で…………食べるんだ……」

「んなことはしない。」

「食べる……のは、我慢、して……やる…………犯すのは……許さない……」

「はいはい、そんなことはしません。」


 適当にあしらいつつ「ウェアーアップフレーム」を通して小奇麗にした。すると向こう側からさっき受け流したのが戻って来た。


「あ~る~じ~さ~ま~っ!会いたかった!会いたかったよ!久し振り!」

「そこに首から下全部埋まって30数えたら話してやる。」

「やったぁ!久し振りのあるじ様とのお喋りだ!わーい!」


 近くにやって来たのは明るい赤髪の快活な少女。例によって非常に可愛らしい顔立ちだ。その少女は返り血でまみれた状態で土を掘り、そこの中に入って数を数え始めた。

 その光景を見て魔牛本体の少女が引くついた笑いを浮かべた。


「なに…………これ……」

「ゴーレム。過去、全力で性能特化したら知力が……まぁそれはいい。」


 魔牛の少女はそういう話ではないと思いつつも今村の説明を聞こうとして土に埋もれている少女に会話を斬られた。


「あるじ様~3の次なぁに?」

「3の次は何か、か……実に哲学的だな。頑張れ。」

「うん!え?あれ?教えて……でもるぅねがんばるよ!」


 肉塊の少女は全ての感情をほぼ欠落させていたと思っていたのだが、この少女は見てて何か不憫になって来たのでこんなことで感情の発露するとは……と微妙な感じに思いながら口を開いた。


「あ!思い「よん……あ、」出した?あれ?しーじゃなかった?よん?あれ?るぅねそれも聞いたことある……どっち?あるじ様~どっち~?」


 余計なことをしてしまったと後悔する魔牛の本体。るぅねと名乗る少女は4のことを「し」か「よん」かで非常に悩み始めた。見かねた今村はにっこり笑って少女に言った。


「fourかもしれない、quatreかもしれない、quattro、vier、cuatroもあり得るし、quatro、четыреかもしれない。スー、τεδδερα……「やめ、たげて…………?」」


 この人イジワルだな……そんなことを思いつつ混乱して目を白黒させている少女のために魔牛の本体は頭を下げた。




 ここまでありがとうございました。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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