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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十三章~休息の時~
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2.した

 今村、フィト、シェンの三人がやって来たのは薄暗い研究室のような場所だった。周囲を見渡しながらフィトは今村に尋ねる。


「ここ~どこ~?」

「……俺が2歳の時に作った研究室だ。カオスとか言う阿呆のせいで第2世界と第3世界が何回も繰り返させられる事件が起きてな……それで俺の精神はプロテクトがかかってたが肉体は人間だったからずれが起きて一時的に目覚めて造った。詳しくはシェンにでも訊け。」


 そして、この場所は今村が力をせっせと作って貯蔵するための機械を作っていたところでもあった。色々考えつつもここに来た用件の物を造るために材料を集めているとシェンに話を聞いていたフィトが今村のローブの袖を引いた。


「ね~シェンちゃんがね~何言ってるのかね~分かんない~」


 シェンは一生懸命フィトに説明していたようだがフィトは意味が分からないと一刀両断して早々に今村に尋ねることにしたようだ。シェンは落ち込み多少涙目になるが何も言わない。

 今村は作業の手を止めずにフィトに簡単に説明することにした。


「……要するに、カオスって奴は子どもを創ったんだが……失敗作とか言う理由で毎回やり直ししてた。それで巻き戻しに巻き込まれてマジ迷惑ってことでぶちのめして封印したわけ。」

「へぇ~その子どもは~?」

「……まぁ、この前封印破ってどっか行ってたカオスを探し出してぶちのめし直したんだが……その時に判明した。クロノだって。」


 その時は少し驚いた。休みを失った最初の歯車のズレであるカオスに八つ当たりしに行ったのだが、クロノにぼこぼこにされて「幻夜の館」で敵対勢力と判断され、処刑するには力が足りていないとの理由で封縛して幽閉された状態で既に虫の息だったのだ。


 その驚き具合は言わば冬場の静電気位だ。


「……ぜ、全然驚いてなかったじゃないですか……」

「まぁ、無きにしも非ずって思ってた。おっと、あった。」


 全ての材料と器具が揃ったところで今村は二人に尋ねる。


「味蕾みたいなやつを造るんだが……味のオプションはいっぱいあるから辛味とかを感じるためにはちょっと痛覚を造らないといけないんだが……痛いの嫌だったら止めとくから言って。」

「あ、あの、あんまり痛いのは……」


 今村の言葉にシェンが泣きそうになりながらそう言ってきた。すでに痛みを覚えるということで痛みを感じて泣きそうになっているのだ。今村はメンタルが弱すぎるだろこいつ……と思いつつあることを思い出す。


(……そう言えばこいつ第3世界全体を司る概念だったな……こいつが悲しむと世界全体とってマイナスの出来事が起きるんだ。甘やかされて当然……まぁ俺には関係ないがな!)


 とは思いつつもそんなことをする予定もないので普通に一定以上の痛みを感じると自動で痛覚が消失することを説明した。


「ね~味蕾ってなんだっけ~?」

「舌の上にある味を感じるセンサーみたいなものだ。……食べるって機能を持ってない奴の人化だとないことが多い。……舌を出してみたら?」


 フィトは言われるがままに舌を出した。少し実験室内の水道が破裂するが今村は気にしないことにして写真を撮り、拡大してフィトに説明する。


「表面がつるつるです。未蕾があるとざらざらになります。ザックリこんな感じだな。」

「え~?ちょっと~あなたのを~見せて~?」


 今村は少し逡巡したが舌を出して水洗いして渡し、フィトに念話する。


『すぐに返せよ?』

「……そ、そういう……いえ、あ!」


 シェンがドン引きしているとフィトは今村の舌を自分の舌にくっつけて遊び始めた。


「ざらざら~」

「ちょ、ちょっと、あの、止めた方が……ひ、仁さんが変な目で見てるよ?引いてるよ?」

「でも~たのし~」

『……楽しいとか、そういう問題じゃないだろ……それ俺の本物の舌だからな?お前が返した後、俺付け直すんだぞ?』

「ちょっと待って~もうちょっとで~写せるから~」


 自分の舌を完全にフィトの口の中に入れられたので今村は噛まれたらおそらく麻痺するので大丈夫だがもし呑み込まれたら非常に困るので飲もうとした時点で首を切断しようと決めた。


 だが、そんな事態には陥らずにフィトは自分の口の中から今村の舌を出して返してきた。何だか非常に良い匂いがするのが凄い不気味で今村はもの凄い勢いで洗う。


「傷つくよ~?」

『うるさい……』


 綺麗に洗った後は自分の舌の根本に付ける。


「……見て見て~こんな感じでしょ~?」

「へぇ。写すってそういうことか……だが既に作ろうとしているこれはどうすればいいんだ?」

「いた~いよ~」


 やり場のない怒りを向けてみる今村。フィトは叩かれたところを抑えるがこの様なやりとりすら楽しんでいる。


「…………仁さんってやっぱり凄いなぁ……」


 そんな光景を見て思わず呟くシェン。過去、色々と助けられたり教わったりした彼女はそれ以上にフィトが起きていられることに驚いていた。


 何せ、彼女が起きていられる時間は年々短くなり、今村が生まれる前は数十年に1分が限界だった。

 それが少し前、1日の間に連続して1秒以上起きていられたことで今村の下へと飛んでから1日に総合して2時間も起きていられるようになっているのだ。


 尤も、今村に言わせてみれば自分を害せる敵がいることによる危機感の問題ではないかとのことだが、それではあった当初の時点からフィトが目を覚ませたことには繋がらないとフィトとシェンは思っている。


「……シェンは作ってもいいか?」

「あっ、は、はい!」


 色々考えていると今村がフィトのことを諦めてシェンに味蕾の製造について尋ねる。シェンはほぼ反射的に合意して、今度はきちんとした手順で今村が味蕾を造り、シェンに舌を出させる。


 すると奥の方で器具を温めているオレンジ色の炎が風もない空間で急に揺らめき、今村が視線を向けるとその動きを止めた。


「……はぁ。第3世界最高神たちが揃って覗きかよ……あ~……世も末だ。」


 水の中に意識があると思われる水恋神と火竜神に聞こえるようにそう言いつつ今村はシェンの舌の形を見てシールを切り、渡した。


「え、あの……」

「貼れ。」

「ず、ずれたり……む、無理です……は、貼って、下さい……」

「嫌だ。」


 そこまでする義理はないとばかりに今村は器具たちの片付けに入る。ついでにオレンジ色の炎を消しておく。

 シェンは仕方がないので自分で貼ろうとして思いっきりミスをした。それを見て今村は諦める。


「……舌、出せ。」

「うぅ……ご、ごめんなはい……」

「あ~、い~な~私も~そ~すればよかった~」


 恥ずかしさで顔を真っ赤にするシェンと指先にじんわりとした温かさを感じつつシールを貼る今村。その光景をフィトは羨ましそうに見た。


「……これでよし。さぁ、地上でランチパーティだ。」


 手を洗いながら今村が言った言葉で顔を朱に染めて嬉し恥ずかしと言った状態だったシェンは固まり、フィトは恣意的に眠りに着いた。




 何かごめんなさい。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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