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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十三章~休息の時~
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1.歓迎

「……ふむ。」

「ど~したの~?」


 今村は呪具が勝手に暴れまわった事後処理や、自分の能力の解放や改造などでしばらく忙しく動き回った後に落ち着いて周囲を見てから、フィトとシェンを呼んでいた。

 一応周りには歓迎の食事を振る舞うと言う名目で二人を呼んでいたが今村の様子を見て二人は何かあると勘付いた。そして質問し、今村の答えを待つ。


「…………いや、ちょっと前に消滅寸前まで行った奴らに対する礼をまだしてないから早めに何かしようと思ってな。」

「あ、あの、酷いこと、じゃないですよ、ね?」


 シェンが今村にそう尋ねると今村は心外だと言わんばかりの顔をした。


「確かに、あれの発端は基本的に余計なことした所為だが……それでもあいつらはあいつらなりに考えて俺の為にやったことなんだし、そんな酷いことをするわけがないだろ。」


 その言葉にシェンは胸を撫で下ろす。ここに来てまだ少ししか時間が経っていないが今村に慣らされたこの「幻夜の館」の住民はシェンにもきちんとした接し方でいてくれるのでシェンは彼女たちのことも好きになったのだ。


「んじゃ……まずは、アイツらの好みを独自に調べないとな……人工物を夫にするのに抵抗ある奴とかもいるだろうし……」

「ちょ、ちょっと、ま、待ってください!な、何を、するんですか?」


 慎ましやかな胸を撫で下ろしてすぐの今村の発言にシェンが慌てる。今村は何を言っているのだろうか?と言う顔をしてシェンの質問に答えた。


「ん?あいつらに理想の彼氏を創ろうと思ってな。機械仕掛け、ホムンクルス、ゴーレム、幻想種、人造人間とか人外の一部は俺でも創れるし、楽にできるんだが……被造物に抵抗がある奴もいるだろうからな……探すこともする。」


 今村が全力で間違っている方向に進んでいると気付いたシェンは今村を止めようと色々考えるが言葉には上手くできない。なのでフィトに助けを求めるような視線を向けるがフィトは呑気に寝ていた。

 シェンはそんな場合じゃないとフィトを起こす。


「なに~?歓迎会は~?」

「……おぉ、するぞ。今から。」


 全く空気を読めていないフィトの発言だが、今村の興味が移ったのでシェン的にはフィトを褒めたくなる。ただ、興味が移っただけなので問題の根本的な解決には至っていない。


「え、えっと、その、多分、あの子たちは……ひ、仁さんが、好きで……ほ、他の人とか……その、嫌だと……」

「理想をそのまま作り上げるからそっちの方がいいと思うが?」


 今村は料理に取り掛かりつつシェンが何か言っているので反論しておく。シェンは上手く言えないもどかしさを感じつつ隣で寝ているフィトを見て自分だけでも頑張らねばと気合を入れた。


「あ「パパの方がいいに決まってる!」」


 その決意も虚しく、調理場に野菜と一緒に白銀色の長い髪をツインテールにした美幼女のみゅうが出てきた。今村は皮むきの中にみゅうを突っ込みそうになったが何とか止める。


「……?何言ってんだお前?」

「何言ってるのか訊きたいのはこっちの方だよ!パパはアードノロイアの世界で世界一美味しい水を運よく選択出来て常飲してるのに明日から得体の知れない液体しか飲めなくなるってなったらどう思う?」


 今村は味付けを済ませたお湯の中にパスタを入れながらアードノロイアの世界を思い出す。あそこは少ないリソースの為、生活に関するあらゆるものをランダム制で一種につき一つだけ選ばされてずっとそれの配給のみで生活続けさせられるという世界だった。


「ん~取り敢えず飲む。不味かったら改造する。……つーか液体であれば別に自由に操れるしなぁ……」

「……パパはそうできるけど……みゅうは嫌だから世界を滅ぼす。」


 何言ってんだこの幼女と今村は思い、こんな育て方をした奴の顔が見てみたいわと感じて、自分だと瞬時に思い直して顔も見たくないと自己完結させた。


「……例えが、上手くできない……とにかく嫌!」

「……あっそ。んじゃ何がいい?」


 パスタを湯切りして特製の香味油で麺同士がくっつかないようにしてから今村は具の中にぶち込む。みゅうは拍子抜けするほど簡単に思い留まらせることが出来たのでポカンとしつつもほぼ反射的に許されそうなラインで答えた。


「え?一緒に、同じベッドで寝たい。」

「……褒賞として少なすぎないかそれ……まぁ本人がいいならそれでいいが……」

「えっ?いいの?同じベッドで、ちゃんとくっ付いて寝るんだよ?みゅうがもっと小っちゃい頃に寝かせてくれた時みたいな感じだよ?」

「それがしたいならいいよ。」

「みゅあっ!それでお願いします!」


 みゅうもみゅうで大概簡単な思考をしていた。今からクロノに教えてあげようと今村に接近し、嫌がられなかったので頬にキスをするとすぐにこの場所から出て行く。


「ありがとー!行って来るよ!」

「……どこにだよ。」

「クロノちゃんのところ!」


 みゅうは今村の機嫌がいい間にクロノにも伝えるために元気いっぱいに笑いながら出て行った。それをガン無視して料理に没頭する今村の代わりにシェンが手を振って見送る。


「……じょ、冗談、だったんですか?あ、あの理想の彼氏計画……なら、よかったですけど……」

「ん?普通にやるけど。それとこれとは別問題だろ。後今から集中するから声をかけるな。声をかけたら……そうだな、この世のものとは思えない料理……悪意を盛り込んだ料理を食わせてやる。具体的には食べたら体が爆散する。」


 それは料理ではないのではないかとシェンは思ったが取り敢えず料理が終わるまで待つことにした。すでにかなり良い香りがこの場に充満して来ている。


「もうすぐ~?」

「しっ……怒られるよ……」


 フィトも匂いに釣られて起きたが先程まで寝ていたので今村が言ったことを聞いておらず呑気に声をかける。それが今村の耳に届くまでにシェンはその振動を全て消し飛ばした。


「……よし。まずまず……レベル8って所だな……ふふ。流石全盛期……片手間でもこのクオリティ……ふふ……」


 能力が帰ってきたことでご満悦らしい今村は料理を自画自賛して直後に気持ち悪いと自己嫌悪に陥る。だが、すぐに立てなおし料理をローブなどで運んで二人の前に持って行く。


 その光景を見て二人は絶句した。およそ彼女たちの想像する食べられる物の色をしていなかったのだ。


 光を反射させているのではなく自らが発光する謎のメタリックワインレッドの粉末や、近くに置かれただけで気温がかなり下がった謎の江戸紫色の粉末。時間経過とともに様々な色に変わる謎の液体。


 そして中央に鎮座しているのはとても美味しそうなローストビーフのようなモノ。これだけで美味しそうなのだがそれにかかっているのは名状しがたい謎の物質。


 それらを見て二人の可愛らしい少女たちは顔を僅かに引き攣らせた。そんな状態を見て今村も勘付く。


「……あれ?お前らもしかして……食事に興味なかったタイプか?」

「う、うん~……私~木だから~……それに~自分で~大丈夫だから~」

「あ、あの、私、金属を司っているので……」


 事実として彼女たちはずっと食事をしていない。フィトは寝ていたから。そしてシェンは特に興味がなかったからだ。

 だが、今はこの料理を何とか今村の気分を害しないように食べなくて済む道を模索するためにその理由を強化させようとする。


「ふむ。じゃあついて来い。」


 そんな願いが通じたのかどうかは分からないが今村は料理を仕舞うと二人にどこかに付いて来るように言った。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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