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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十二章~時の流れ~
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32.夢

「ま、待って……」


 今村が有無を言わさずに撤退をしようとしたところに不思議な力が働いて今村は逃走に失敗した。


(む……かなり強いな……まともに戦えば瞬殺される……)


 一瞬で破られたので今村はそう思ったが、今回は最初から最後まで徹頭徹尾まともに戦う気などないので怠そうに声の主の方を見る……その途中で周囲の間抜け顔を見て首を傾げた。


「何だこれ?」

「あ、あの……わ、たし……シェンって、言います……ひとちさん。…………」


 今村はおそらく俺の名前を噛んだんだろうな……と微妙な感じになり、相手もそれきり黙った。

 気まずい時間がしばし流れた後、御簾が降りた。


「……何だ?帰……」

「ま、待って!……ください……」


 あまり待ちたくない。関わりたくない、面倒臭い、そういった雰囲気を全面に押し出しつつ今村は既に帰る準備を整えた。


「あの、待って……」

「……何か言いたいことがあるならはっきりどーぞ?大抵の罵詈雑言には慣れてるから。」


 軽く息を吐きながら御簾の向こう側にそう声をかけると焦ったような声で勢いよく返答が帰って来た。


「け、結婚しましょう!」


 今村は思わず吹き出して笑った。今度は何を言い間違えたのかわからないがこれはないだろう。


「わ、笑わないでください……」

「いや、笑うだろ……」

「……いや、笑っちゃ、ダメだよ……」


 シェンと名乗る声の主に今村が若干まだ笑い混じりに返答すると横から忘我の境地で今村に水恋神が口を挟んで来た。


「……本気、だし……何コレ?あれ?これが夢ってやつなのかな?俺、初めて見たよ。夢なら何してもいいよね?……例えばフィトさん来い!」


 ここは夢であるという説が急に舞い起こり、何だかそれに頷いた火竜神が何かを念じ、それらを見た土仙神が呆れたように溜息をついた。


 だが、念じたことは叶ったらしい。フィトはここに来たし、御簾が上がって中から誰かが出てきた。


「おぉ……流石、夢……」

「むぅ……夢とは、侮れんものだな……」


 念じていた側は感心する声を上げるが今村は苦笑しかできない。土仙神も同じようだった。


「急に~どっかに~行かないでよ~」

「フィトさん!ちょっと俺と付き合ってよ。」

「無理~」


 今村の近くで抗議して来たフィトに水恋神が交際の申し出をするが見事瞬殺された。だが、水恋神は夢だと思っているから食い下がる。


「お試し!まずはデートからどう?」

「ムリ~旦那様に~勘違いされるから~消えて~」


 水恋神は次の瞬間にはどこかに消え去ってしまった。今村は黙ってそのやり取りを見ていたが後でその二人の縁は繋げておこうと決め、ついでに火竜神と金帝神も何だか面白いことになっているのでそちらを見たらそちらも火竜神がどこかに飛ばされていた。


「う、浮気じゃ、ない、です……!」


 しっかりと訴えて来る金帝神。フィトと負けず劣らずの可愛らしさを誇るまさに金糸を束ねたかのような髪を持つその少女を見て今村は激しい頭痛を感じて頭を抱え、蹲った。


「!だ、大丈夫ですか?」

「あなた~キスして~大体~治せるから~」


 二人が駆け寄る中、飛ばされなかった土仙神は魔視で今村を見る。そして哄笑した。


「面白い。これだから、この方は……クハハハハハ!」

「あー……俺、何やってんだろ……シェン、か……思い出した。」


 哄笑の最中、今村は目つきを少し悪くして立ち上がった。そしてシェンを見て苦笑する。


「……あ、お、思い、出してくれました……?」

「……2歳の時、俺がまだ人間だった時の出来事だろ……つーか、そこから全ての歯車が狂ったのか……カオスめぇぇえええっ!見つけ次第八つ裂きにして俺式拷問スペシャルバージョンにかけてやる!」


 今村は急に興奮し出したが、その次の瞬間には落ち着いた。


「ふぅ。それはそれとして……回収に行かねば……あー3歳から地獄のような家庭環境だったのは俺の所為か……人生ハードモードにして能力値の向上を図るとか常人の生活が出来ないわけだ……まぁ今叩き壊したが……」


 今村は色々な謎が解けた爽快感と自分の所為でこんなに苦労していたのかという疲労感を多量に感じながら次にすることを決める。


「……ふぅ。取り敢えずまぁ落ち着くとして、【呪具招来】っと……で、【一点特化異化探知】…………あぁ……これか上手い隠蔽術だよホンットに流石俺と自画自賛したくなるね……この所為で苦労してたんだがなぁっ!」


 フィトとシェンはさっきまで体調を悪くしていたのに怒ったり急に落ち着いたりコロコロ機嫌を変える今村を見てオロオロしていた。

 それらを見て土仙神は更なる哄笑を上げるが今村はそれら全てをガン無視して己の作業に没頭する。


 そして、何かが完成した。その瞬間、土仙神の哄笑が掻き消されるほどの大音量で今村が高笑いを上げる。


「フハハハハハハハ!アーッハハハハハハハ!これが、これこそが!俺の、全盛期だ!さぁ、始めようか!【呪言発剄】【敵対勢力、全部死ね】。」


 今村のテンションの上がりようを見た土仙神は少し考える素振りを見せた後一つ頷くとこっそりフィトとシェンに今村に聞こえないように今がチャンスと伝えておく。

 その言葉でおろおろしているだけでは話が進まないとフィトとシェンは我に返り今村に尋ねる。


「えと、ひ、仁さん。わ、私、いっしょ、いいですか?」

「いいよ!いや~楽しいねぇ……これが、これこそが魔法だ……クックック……」


 シェンがかなり決心を固めて尋ねたのに対して今村は超安請け合いした。


「私も~いい~?」

「いいよいいよ。何でもいいよ?楽しくなって来たぁ~っ!この状態なら消滅の術式も行使可能だな……夢が広がるね!キャアッハァ!夢が、広がるよ~!というわけで、はるばるいらしてくれるユーシアくんたちにプレゼントだ。【大夢幻鎖錠界】!良い夢見ろよ!」


 巨大な氣の解放と過剰なほどの能力行使によって今村の居場所を突き止めた原神とその一派が0,001秒後に来ることを確率視で予期すると今村は罠を仕掛けて土仙神に言った。


「セヘル!今からここ大変なことになるから逃げてた方がいいよ。」

「の、ようですな。それでは後でご祝儀を送らせてもらいます。」

「おう。」


 神速で会話を終えると今村はフィトとシェンをローブで抱え上げて少しだけ挙動を止め、ユーシアの顔が一瞬だけ見えた瞬間に挑発するように笑ってから逃げた。




 ここまでありがとうございました!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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