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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十二章~時の流れ~
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31.何か面倒

「初めまして!【五柱神】の間にようこそだね!」


 今村が飛んできたのは【全】が今村の手によって滅ぼされた後にその教訓を生かして作られた第3世界のトップ団体、【五柱神】たちが揃う間だった。

 雲が固まってできたような地盤に、金の刺繍で縁が装飾されたワインレッドの絨毯がメインロードを形作り、その先に神殿が創られている構造になっているこの場所に何の感想も持たずに今村はいきなり声をかけて来た美少年に対して尋ねる。


「あ~……水恋神すいれんしんでいいんですかね?」

「敬語不要!あの、フィト様の旦那様候補に気を遣わせたとかなると俺マジ殺されるから!」


 彼が知る中でもかなり上位層に入る可愛らしい男の子といった容貌の少年にそう言われたので今村はどっちつかずの言葉遣いをやめた。


「金帝神さんがどこか教えてもらえるかい?」


 今村の言葉に水恋神はいたずらっ子の浮かべるような笑みを浮かべて答えた。


「勿論だよ。そのために俺が直々に来たんだから!」

「……何か良く分からんけど、案内してもらえるならまぁよろしく。」


 今村は罠の可能性を考えつつも現在の力であれば逃げることは可能だと判断して水恋神について行く。


「ねぇ。ちょっと訊きたいことあるんだけどいい?」


 道中、水恋神が今村に尋ねてきた。思ったよりも遠い神殿までの距離の間は本を読みながら移動しようかと考えていた今村は話があるならと本を閉じて先を促す。


「何?」

「……君の所にいる天明 祓、って子について……ここだけの話どうなの?どう思ってる?」


 今村は水恋神から祓の名前が出たことに今村が少し驚いていると水恋神は説明を入れて来た。


「いや、あの子俺の妹の……一部って言うかな?そんな感じのモノを吸収してるからさぁ、気になるんだよね。恋愛の神の一柱としても、妹にあの子のことを託された兄としても出来れば成就して欲しいし……で、どうなの?」


 今村は反射的に何にない、普通と答えようとして少し止まって逡巡してから口を開いた。


「まぁ、良い奴ではあるな。うん。俺の個人的水準で言えばかなり良い奴だと思う。」

「おぉっ!ホントに?じゃあ……」

「うん。まぁ出来る限り本気で相手を探してやりたい。今まで見たいな面白半分じゃ駄目だよなぁ……」


 期待した水恋神は続く今村の言葉で歩くペースを乱してしまい、思考と動作に差が生まれこけそうになってしまった。


「こ、この俺に古典的なことを……うん。まぁ……流石【魔神大帝】様と言うかなんというか……ズレてる。本っ当に。え?君、自分で選ぶとかない?」

「……俺に訊くのか?この、世界の敵に?」


 今村の訊き返しに水恋神は唸った。


「……確かに、色々問題はあるんだよなぁ……でも本人たちはそっちの方が断然いいとしか言わないだろうし……あ~もう少し彼女も……彼女たち全員が周りを見られるようになれば…………君はこれ幸いと動き出すのか……」


 色々考えては今村の行動で台無しになると水恋神は溜息をつく。


「……ホンット、君の助ける基準がなぁ……追い詰められた子だけを集めてるから周囲とのズレに気付けないし……でも、君が無暗に動いたらもっと大変なことになるか……」

「集めるって……別に恩を返してもらおうとして助けたわけじゃないし自由にどこか行ってもらっても構わんのだが……」


 別にコレクションしているわけではないので今村はそう言い返すが、水恋神は更に深い溜息をついて返すだけだ。


「……君は確実に返すでしょ……恩は2倍に仇は5倍にだっけ?……まぁまず君は恩自体を作らないようにしてるけど……個人主義だからねぇ…………君は個人主義なのにねぇ?何で集まるんだろうねぇ?まぁ、見てれば分かるけど。」

「何で?」

「……依存だよ。君が助けるのはその時、その瞬間において君しか助けられない者

だけだし……そう言う人は孤立してる。世界に見捨てられた者、存在意義が分からなくなった者、そんな弱ってる状態でしか助けないんだから……依存する。」


 今村は何かしたり顔で言って来る水恋神にイラッと来たのでローブで殴り飛ばそうと思ってローブがないことに気付いた。


「……そう言えば、封印して来てたんだった。あー……その他たくさん置いてきたんだった。後で取りに行かないと。」

「ねぇ、今何しようとしたの?ちょっと何十億年ぶりにか背筋が寒くなったんだけど?」

「……お、アレ?」

「ねぇ、今何しようとしたんだよ?」


 露骨に話題を逸らされたことに不安を覚えた水恋神。今村は話をずらしたことで今度は攻勢に出ることにした。


「で、俺とかそんなどうでもいい話は置いておいて。水恋神。君……」

「っ!も、もう着くから!ね?御前だから、畏まって。」


 嫌な予感がしたらしい水恋神は歩調を早めて今村を誘導しようとし始めるが、すぐにその足は止まった。


「……え?金帝神様の御簾が上がって……?」


 神殿内の様子がいつもと違ったのだ。それにより水恋神の纏う空気が緊張した物へと変わる。


「……成程、君……これで金帝神様を落とすんだね……ついてるのか、いや、憑いてるんだろうね……」

「落とさねぇよ。お前ら頑張れよ……何最初から俺の力当てにしようとしてんの?君らこの世界のトップだろうに……」


 今村は自分の良く使う武器類を全ておいて来ているのでやる気なさそうに水恋神の言葉にそう応じて周囲を見渡す。


 【五柱神】の内、木は今地上で眠っているが、目の前にいる水、そして御簾の中にいると思われる金。その他に火と土がいるはずだ。


「火竜神さんと、土仙神さんは?」

「……?わかんないけど、御前にいつも通り控えてる……え?何が起きてるんだろうか……」


 お前が知らないのに俺が知るかよ……そう思いつつ今村はフィトの話をしに来たのに何だか面倒事に巻き込まれそうだから今の内に手紙だけ書いて御前に着いて面倒なことを言われたら手紙だけおいて変えることに決めた。


「お?……何か知った顔がいる。」

「【魔神大帝】さんや……儂は一応、仕事中じゃ。あと、言っておったんじゃが儂が【土仙神】じゃよ……?」


 御簾が上がっている壇上の左に控えている白髪に長い髭を蓄えた老人が今村を見て会話をしてきた。 

 そして次に壇の右に控えつつこちらを睨んできている壮年の赤銅色の剛毛に筋肉の鎧を身に纏っている男に声をかけようとして御簾の奥から人の気配がしたので今村は警戒態勢に入った。


「……ま、まさか……」

「水恋君よ。おそらく、主が考えている通りじゃ……」

「……苦々しいが、これが、我らが王が定めたこと……」


 今村だけが展開に取り残されたので何かもう怠くなったという理由で、今村は手紙を宙に舞わせて【神・行方不知】を使って地上に帰ることにした。




 ここまでお疲れ様です。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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