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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十二章~時の流れ~
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24.眠れるモノの覚醒

 初手はクロノではなく彼女の母親であるカオスだった。クロノは何も見えていないが感覚的にそれ・・を避け、そして人一人が丸ごと飲まれる大きさの空間が閉じ、その場が黒く塗り潰されるのを感じ取った。


「……生意気ね。何で避けるの?」

「痛いのは嫌だよ!」


 クロノが至極当然なことを言ってこちらからは【時】の力で同じようなことをやってのける。だが、こちらの技は当てることを重視しており小さい弾丸のようになっていた。


「……こういうことが出来るのに、何で例外者である自覚がないのかしら……」


 その呆れた声と共にクロノの攻撃は全てカオスが所有する空間の狭間に捻じ込まれて消える。


「っ!ほんっと、生意気なガキ!」


 だが、クロノにとってそんな攻撃など陽動に過ぎない。本命として急襲をかけるがそれは浅い傷をつけるだけに留まり、その傷を受けたことで更にカオスは怒りに顔の形相を歪めた。


「手伝おう。」


 そんな様子を見ていた男がカオスの後ろから様子見を止めて戦闘に介入してくることを宣言した。


(……お母……カオスより、弱そう……でも、一応警戒しておかないと……)


 クロノはその男を意識しながらカオスに目を向ける。カオスの傷口には薄黄緑の空間が張り付いて治療を行っていた。


「……傷自体は浅いけど、治るのにはかなりの時間がかかるわ……やってくれたわねクロノ……」

「帰ってよ!ずっと、ずぅっと一人にしておいたのに!今更来てクロノだけ連れてくなんて嫌だもん!」

「やっと迎えに来れたのに我儘言わないの!一回、手足別空間に放り込んで躾のし直しがいるわね、本っ当。」

「オイオイやめてくれよ。俺、今からこいつを抱くんだぞ?」


 クロノの思考が止まった。今、この悍ましい生き物は何と言ったのだろうか?その思考停止を見抜いたカオスが攻めて来るが今村の訓練を熟したクロノはほぼ反射でそれに応対する。

 攻撃を軽くいなされた上反撃を受けたカオスは少し距離をとってクロノを見て言った。


「……何?ショックを受けてるみたいな顔してるけど……近親相姦なんて神話の世界じゃごく自然のことじゃない。ウラノスだって、元々は私の子よ?」


 あまりにもあっけらかんとカオスに言われてクロノは顔を引き攣らせる。もしクロノと今村の間に子どもが生まれたとしたら……


(アレ?でも、クロノにとってお兄ちゃんがお兄ちゃんなのにクロノの旦那様?これって……でも、血は繋がってないから…………クロノがお兄ちゃんと子作りってできるのかな?)


 クロノは近親相姦についてよく分からなくなった。取り敢えず戦い終わってから考えることにして目の前の敵を見る。


「と、とにかくクロノはお兄ちゃん以外の男の人に触れたらダメなの!今はどこにいるのか分かんないけど……もし、見られてたら捨てられちゃう……」


 最後は自分で言っていて怖くなった。そんなクロノの様子を見てカオスは溜息をつく。


「そんな相手、碌な奴じゃないわね。すぐに手を引くべきよ。」

「い、いつもは優しいもん!それに、一緒に居られるだけで心が暖かいし、ご飯だって美味しいし、楽しいこといっぱいだもん!」


 クロノの【時】の力が込められた剣とカオスの【空間】の力が込められた鞭がぶつかり合う。その中で会話が繰り広げられる。


「……でも、今の戦いぶりを見てる限り、あなた相当鍛えられてるわよね?まだこんなに幼いのに……」

「これはクロノがしたいって言ったから!」

「それでも普通は止めるでしょ。」


 クロノはそこで違和感を感じ取った。だが、明確に何が違和感であるのかは分からない上、目の前には自分と同等の力を持つ敵がいるのでそれについては後で考えることにして真っ向からカオスを見返す。


「でも、今こうして役に立ってるよ!お兄ちゃんのこと知りもしないで悪く言わないで!」

「はぁ……洗脳されてるのね……仕方ないわ。目を覚まさせてあげる。」

「多少荒療治になるがなっ!」


 クロノは背後から迫って来ている奇妙な男への対処に一手遅れて対応し、カオスとまとめて相手をすることによって防戦一方になる。


 そして猛攻に対して隙を見出そうとしていたクロノが不意に違和感の正体に気付いた時には自分の周囲の空間が完全に変えられていた。


「『タイムバック』!」

「……っ!強力ね……」


 だが、それを周囲丸ごと全てひっくり返す大技を使って何もなかったことにする。そしてカオスが顔を歪め、隙が生まれた所に攻撃……


「甘いわね。」


 しようとしてカオスの表情の変化に気付いてクロノは飛び退いた。そのすぐ後にさっきまで自分がいた所に不可視の何かが通り過ぎる。それはクロノの右腕を掠めた。


「っ!はきゅっ……」

「……体が麻痺するでしょうけど安心しなさい。ただの媚薬よ。」


 クロノが変な声を上げたと同時にカオスが勝ち誇った笑みを、そして男は下卑た笑みを浮かべ、クロノの服を引き千切りにかかる。


「は、え?」


 その瞬間にその男の腕は切り落とされた。遅れてやってくる激痛。目の前の童女は妖しく笑っていた。


「……これぇ……あのお酒ぇ?クロノねぇ……お兄ちゃんに前に怒られたよぉ~?その前はね、結構一緒に飲んでたけどね、これ飲むとね、えっちなクロノがあらん限りの力で、死にかけるまで全力で~っ!どっかーん!」


 瞬間、世界が弾けた。男が顔を半分蒸発させるのを見てクロノは嗤う。


「クロノはね~いーっぱぁい甘えたかったよぉ!お酒飲んでたら甘えても良かったのにぃ!一回こうなったりゃもう駄目って言われたの!ずるぅい!」


 急に泣き始めたクロノと死にかけている男を苦い笑みでカオスは見て計画の修正を行うことにした。

















「……やっと着いたわ。」


 その頃、「幻夜の館」の面々の力を集めて移動していたアリスたちはやっとの思いで世界の果て、【ワールドエッジ】に着いていた。

 既にサラとヴァルゴは来る前に吐きそうになるほど溜めていたエネルギーを全て放出して昏睡状態になっている。


 アリスも過労状態だが、そんなのは関係ないとばかりに鍵を出す。すると何もなかったはずの目の前に忽然と檻が出現した。


「……開けないと…………その前に……」


 彼女はみゅうに持たされた堅固な結界と身代わりを一度限りで作り出す道具を使用してサラとヴァルゴ、そして自分を保護すると檻に込められた自分の力を解放する。


 【全】との最終決戦の時のあの場所で目の前の封印を形成した者たちには今、この機能について再び力を入れようとするものはいない。


 よって、封印は簡単に解けた。それと同時に爆発的な勢いで中の人物が飛び出ると哄笑を上げた。


「アハハハハハハハ!仁さん!今行きます!……何だろうこれ……仁さんの匂いがする……仁さんにこの雌豚たちは要らないよね?」


 その声がアリスたちの耳に入った時には彼女たちは既にバラバラにされ、人の形を取っていなかった。


「……仁さんは、あっち?気配が薄いですね……ですけど、愛の前にはそんなの関係ないですよね。」


 返り血1つ浴びていない艶やかな黒髪の絶世の美貌を持つ彼女。大人の女性としては若く、少女と言うにはあまりにも大人びた様子を見せる彼女はこの場には既に何の興味も示さずにそう言って飛んで行った。


 彼女が居なくなった後、しばらくして身代わりが消滅するとそこには気絶したアリスたちが無事に横たわっていたが、状況は楽観できそうな物ではなかった。





 ここまでお疲れ様でした。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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