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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十二章~時の流れ~
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23.モナルカの邂逅

「しっ!……ふむ。微妙……」


 今村はここは無法地帯らしく、何をやっても問題ないと分かった時点でここにある銃火器の扱いを覚えた後、何となく島に落とし穴を結構作ってから体に暗器の使い方を思い出させようとして首を傾げていた。


「……出すのは良いんだけどなぁ……」


 袖口が一度上を向くような動作をした後に素早く振り、棒苦無やナイフを袖口から出して掴む。その動作はいいのだがそこから投げる動作が微妙だ。


「何か手首を頼り過ぎな……ん~大人になってからの癖になってるな……別の奴にしよう。」


 だが、しばらく同じような動作をしていたので今村はこの訓練にも飽きてきていた。


「あんまり同じことやって本格的に飽きるともうしばらくはしなくなっちまうからなぁ……次何しようか?発剄でもしようかな?ついでにウォーターバックほしいなぁ……この辺の木硬いし……殴るのに向いてない。水分が多いバナナの木とかなら人の体に近いんだが……」


 今村は基本的に同じような気候で年中涼しいとされるこの島の気候を考えて首を振った。


「ここ多分亜寒帯に近い所だしなぁ……無理だな。それはともかく、堅い木であれば発剄の通りが分かりやすいし、今からはしばらく発剄にしようか。」


 そんな感じで今度は木に手を当てて腕の力で押すと同時に手首で腕を引く感覚でまずは衝撃だけを残すところから開始して今村はふと思った。


(……にしても、俺は一体何をしてるんだろう?)


 不意にこんなことを思うがまぁいいやで済ませて今村は何かしらの訓練を行って戦闘能力を上げて行っていた。











「…………いないよぉ……」


 その頃クロノはあり得ないような所まで今村を探して泣いていた。クロノを見ると色々な人が何かをくれたりどこかに行こうかと誘ったりするがそれら全部をにクロノは的を得ない話をするだけで終わってしまう。


「えぇと、そこのお嬢ちゃん、どうかしたのかい?迷子?」


 また、誰かが話しかけてきた。今度はどうやら警官のようだがどことなく興奮しているように見える。普段のクロノであれば言葉を交わすことはなかっただろうが、今はそれに応じた。


「お兄ちゃんが、いないの……」

「そうなんだ……交番に来てみる?相談に乗って、色々話せばお迎えを呼べるかも知れない……」


 その時、不意に彼女の名前を呼ぶ声がした。


「クロノ。」

「お兄ちゃん!?……え……?」


 クロノは反射的に今村かとそちらの方に駆けて行く。


「え、あ……行っちゃったか……どうするかな……?」


 警官は肩を竦めてクロノを見送った。


 クロノは警官からしばらく離れた所まで走って移動していた。だが、その間に近付くにつれてその声が女性の物であるということは気付いた。だが、驚きはそこで終わるようなものではない。


 彼女の耳に聞こえたのはどこか聞き覚えのある声、そして目にしたのは写真の中にだけしかいないはずの、彼女の母親だった。


「……え?お、かあ……さん?」

「そうよ。」


 クロノがほぼ覚えていない存在である彼女に直感的にそう答えると女性はにこやかに頷いた。クロノはすぐさま幻術の類かと疑うが、その能力を目の当たりにしてその疑念は打ち消された。


「な……んで……?」

「あなたを迎えに来たのよ。帰りましょう?こんな歪な世界じゃない、私たちの世界に……」


 クロノは母親の優しげな言葉に一瞬目を輝かせたがすぐに考え直して遠慮がち顔を伏せながら言った。


「え、えっとね……クロノね、この世界に大好きな人が居てね……それで……」

「それがどうかしたの?」

「お兄ちゃんを置いて行くのは……クロノには無理だからね……一緒に……」


 クロノはそこまで言ってから母親の方をちらりと見た。彼女の表情は笑顔だがまるで能面のようだった。


「……クロノ?あなた、私と同じモナルカの……例外者としての自覚、持ってないのかしら?」

「何それ?」


 クロノは普通に首を傾げた。クロノが今の自我を手にした時点で彼女の母親と思われる神物は死んでいたと思っていたのだから知る由もない。


「はぁ……ダメな子ね……いいから付いてきなさい。」


 だがそんなことは知らないと言わんばかりに彼女の母親は冷たくそう言い放った。そこに優しげな表情は既にない。クロノはその豹変ぶりに僅かながら後退りした。


「え……?」

「何度も言わせないでちょうだい。来なさい。私の子の癖に、何て物わかりが悪いのかしら……」

「ま、待って!お兄ちゃんが……」


 クロノが反論すると彼女は今度は睨みつけて来た。そしてクロノに近付くと手を掴んだ。


「いいから来なさい!」

「やっ!放して!」

「オイオイ、穏やかじゃないな。」


 クロノが抵抗していると低めの男の声が聞こえ、それと同時にクロノの拘束が緩んだ。


「あら、あなた……」

「どうかしたのか?カオス。」


 クロノが顔をあげるとそこに居たのは悍ましい何か。一見すると生前の父親に見えるのだが、それは自分を牢に閉じ込めた人物にも見える。


 だが、そんな変な人物にクロノの母親、カオスは愛しい人を見る目で声を返した。


「クロノが……言うことを聞かないのよ。」

「なら殴って聞かせればいい。子どもの躾は親の役目だ。そら。」

「っ!」


 クロノは二人が異常であることに今更ながら気付いた。


(こんなの、おかしい……お兄ちゃんに教えてもらった子どもの扱い方と全然違うし、この人たち自身がまるでおっきな子どもみたい……)


 言うことを聞かなければ力で聞かせる。確かに単純でクロノもその理論はある面においては正しいものだと認識している。

 だが、それを親の義務だの変な理屈付けをするのはおかしく思えた。


「……『クロノスブレード』」


 クロノは力で来るならこちらからも力で迎え撃つことを決めて刀身が透明な刀を生み出した。それを見て目の前の二人は更に冷徹な目でクロノを見る。


「……ほんっと、馬鹿な子ね……」


 クロノの戦闘態勢を見てカオスも臨戦態勢に入った。ついでに奇妙な男の方も武器を構える。クロノは一応二人を待ってから言った。


「もう、あなたはお母さんじゃない……敵だから、殺すね?」

「調子に乗らないのよ?」

「ハッハ。何か勘違いをしているらしいからな……その思いあがった根性叩き直してやろう!」


 街角の一角の空間、そして時が止まり強力な力のぶつかり合いによる大規模戦闘が開始された。





 ここまでありがとうございました。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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