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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十二章~時の流れ~
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22.歪んだ心

 気が付いたら無人島に居た。ログハウスのベッドで寝ていた俺は起きてすぐに部屋の状態がおかしいことに気付いて、それは兎も角目の前にあった携帯の音楽を止める。


 そして、ここに来た経緯を思い出して苦笑して目の前にいた可愛い黒猫をもふもふした。もふもふしまくった。嫌がってたけど、逃げも抵抗もしないので合意の上としてもふった。


「……さて、しかし自分から応募しておいて壮大な実験だなこれ。人は本当に一人では生きていけないのかって。」


 思い出した実験結果を比較的大きな声で呟く。ここには誰もいないのだから周囲を気にすることなどない。俺は自由だ。ふと視界に先程もふった黒猫が毛繕いをしている姿が入る。可愛い。


「……クロは可愛いな~」

「…………にゃ……」


 毛並みが荒れたのが気に入らないらしい黒猫は丹念に毛繕いをしつつ俺の視線に気付いて言葉を交わすかのように短く鳴くとすぐに毛繕いに没頭した。


 超可愛い。


「さて、クロのために食事を作りますか。」


 取り敢えず起きてすぐに毛布は乾燥機の中に突っ込む。家の中とはいえここは外にほど近い。ダニが繁殖すればムカつくので高温で殺しまくるのだ。それを終えてから食事を作る。


 クロがいるので朝食のおかずは基本、魚。時々鶏肉も食べるが基本は魚で過ごしている。実験の協力のため、食費は無料。


 因みに実験内容だが、日に一度こちらから安否確認やトラブルがないかの連絡を送り、週に一度食料が届き、月に1度嗜好品類や大量の本が送られてくるのでそれを楽しみに30年生きればいいらしい。


 そして、島の南の海岸に巨大な百葉箱のような場所があるのでそこで全てのやり取りを行い、夕方に来ているらしい人に会わなければ何をしてもいいらしい。

 ただ、会えばその時点で失格。声をかけても失格。見れば失格。そんなところだ。


「30年とか……短すぎだろ……あ~この島マジ天国。猫いるし、通信設備あるし水道光熱費すべてタダ。娯楽は何でも取り寄せられる。」


 今村は暇な時間で島の一部を気分で開墾してみた。ただ、思いのほか時間がかかる上、2時間で飽きたので種は撒いていない。


 だが身体能力の向上については少し疑念を持った。尤も、すぐにそんなものかと斬り捨てたが。


「……つーか。知り合いとの会話は禁止だが匿名での掲示板やらゲーム内での会話とかなら良いって……ルールが適当過ぎるし。」


 今村は独り言を喋る。喋らないと声帯の能力が落ちるらしいのでこの辺は実験終了時に困ることが起きるのは本意ではないのでやっておこうと思った。


「今日は何しよっかなぁ……海に乾電池投げてこの辺に居るらしいサメが来るかどうか実験してみるか。来たら撃ち殺して今日はフカヒレにでもするか……」


 何か置いてあった銃火器を見て先に練習が必要か。そう思いつつ今村は呑気な日常を過ごしていた。












「……で、き……た……」


 一方、「幻夜の館」では不眠不休で頑張っている女性たちが陣を作り上げるのを成し遂げた。その美しい顔に疲れを滲ませている彼女たちの中で一際輝いて見える絶世の美少女はふらつきながら陣の中に入る。


「サラ……ヴァルゴ……行くわよ……」

「う……ぁ……わかっておる……」


 意識とは裏腹に足下がおぼつかないサラ。声すら出せない位に顔色を悪くしているヴァルゴ。両者はこの場にいる面々と違う理由で顔色を悪くし、ふらついていた。


「……早く。」

「こ、こんなに、エネルギーを持って……動くのは、初めてなのじゃ……」

「……まぁ仮に先生と≪自主規制≫することになったらそんなもんじゃないエネルギーが体の中に入るんですけどね。」


 ふらつきながら陣の中にいるアリスの方へと近づいて行くサラに一番疲れ切っているマキアが真顔でそう言う。


「……まぁ、目指すのはそこなんじゃが……もっと、のう?言い方やそこに至るまでの色々な……」

「じゃあしなくていいんですか?私……この世界における『性交の女神』の前で誓います?」

「いや、それは妾もしたいに決まっておるが……」

「いいから早く来い!」


 アリスはマキアを一発殴って地面に埋めるとサラの頭を叩いて陣の中に強制的に引き摺り込んだ。


「こっちは、本気で急いでるの、わかる?」

「妾じゃとて……」

「見た目私より年上なのにそんな顔されてもイラッとくるわよ。あなたがどこを目指してるのかはどうでもいいから行くわよ。」


 アリスは陣を起動させる要であるマキアを見る。彼女は祓と「幻夜の館」が誇る治療部隊「癒しの手」によって既に完治していた。


「それじゃ、世界の果て『ワールドエッジ』まで……行って来るわよ。いい?私たちが行ったら速やかに防御態勢を整えるのよ?」

「そりゃしますよ。イヴさんに殺されたくないですし。」


 アリスの言葉にイヴのことを知るマキアが真面目に頷く。周囲はあまりよく分かっていない風だが、みゅうが小さな手を叩いたことを合図として陣の起動が行われた。


「……みゅうが病み上がりじゃなければすぐに行けるのに……」

「みゅう様は私たちがイヴさんの下に行く間にクロノちゃんを探しておいてください。殺されたら……色々と困るので。」


 陣からまばゆい光が放たれ始め、もうすぐ起動と言うところで行われた会話。その内容を聞いて周囲が今村を探し出すために呼ぶというイヴという存在についてもう少し考えようとしたところでアリス、サラ、ヴァルゴの3人は消えた。


「じゃ、みゅうたちはクロノを探すよ?」


 それを見届けた所でみゅうは周囲にそう宣言した。そんな彼女に祓がイヴについて尋ねる。


「あの……」

「何?……あれ?イヴの馬鹿について何か聞きたいことがあるのかな?」


 みゅうの先回りの質問に祓は素直に頷く。みゅうは言ってなかったかな?と前置きして答えた。


「あの馬鹿、とっても心を病んでて……ん~パパが読んでた本でピッタリな言葉があったね。ヤンデレだよ。みゅうたちみたいにパパを高度知的生命体たちへの不信感を和らげるなんてことを考えずに、自分が一番パパを愛してて、二人だけが居れば他に何もいらないって考えてる。」


 過去、自分にもそんな時期があったと自覚している祓は少し顔を顰めた。そんな様子を見てみゅうは首を振る。


「何か、自分と重ねてるみたいだけどそんなに甘いものじゃないよ?あの人変態だもん。それに……アレは自分以外のパパに近付く女は全員敵で殺さないといけない使命を帯びてるって本気で思ってるから。」

「……それって……」

「当然、殺しに来るだろうね。でもまずはパパの安否の方が大事だから今の時点じゃそんなのどうでもいいよ。……安否確認が終わった後が問題だから。皆で自衛するの。だからクロノ探すよー!」


 みゅうが詳しいことは後で話すと言って非常に簡単に説明を終えると、「幻夜の館」の面々は疲れた体などを気にも留めずに動き出した。





 ここまでどうもありがとうございます。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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