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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十二章~時の流れ~
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17.狂気とは

 【勇敢なる者】との戦闘開始からこの空間内における時間で52時間が経過していた。フーラーと今村のタッグと【勇敢なる者】の戦闘は完全に硬直状態になっており、周囲の信者はかなり数を減らしている。


「……飽きたんだけど。な~【勇敢なる者】様よぉ、帰らねーの?暇なの?馬鹿なの?死ぬの?」


 そして今村はこの戦いに飽きていた。気を抜けば死ぬどころでは済まないが、今村は信者と戦っているディエスにも付与を行いつつ自分も戦いながら飽きの姿勢をこれでもかと言うくらいにアピールする。


「待て!今帰られたらマリアンさん押し付け計画が頓挫する!仁!まだこいつを帰らせるには早すぎる!」


 フーラーも真剣に戦っているが、今村の言葉に反応する余裕があった。尤もその一瞬を突かれて殺されたので、今村が【白魔法】で再生させた。


「マリアンさんなぁ……あのお方はお前にぞっこんで盲目なまでに一途だから無理だと思うが……まぁ試すのは自由だ。おっと死にかけた。ハハ。」


 【復讐法ハンムラビ】の防御陣が破られて危うく死にかけた今村は笑いながら【勇敢なる者】を見る。


「……ありゃ。こりゃ人の話を聞かないモードですね。最も確実で傷を負わない勝利を得る可能性のある戦闘システム状態だ。」


 それを見て今村は嗤った。非常に懐かしい物を見たのだ。その笑いを察知した【勇敢なる者】はすぐさまその状態を解く。


「チッ……面白くねぇ。」

「……狂神の相手は、これではダメだったな。」


 今村は吐き捨てながら歪んだ笑みで【勇敢なる者】と喋るが、【勇敢なる者】は今村をより忌々しい物を見る目で睨みつける。


 それはそれとして心内に直接流れてくるイメージによる会話を受けて今村はふと思ったことがあったので言ってみた。


「ところでユーシアくんよ。俺、神じゃないんだけど?」

「ほざけ。」

「お前まだ言ってんの?」


 今村は【勇敢なる者】に言ったのだが、フーラーにも反論を受けたのでまた死んだフーラーの回復をちょっとだけ痛くして続けてみた。


「……概念的に、神じゃないんだけど?分類的にも。」

「それがどうした。貴様は我が宿敵だ。狂神、【冥魔邪神】よ。」

「……宿敵って、あんさんの宿敵は俺が生まれる前から【災厄の悪魔神】に決まってるのに。あ、呼んでみよう。」


 今村は帰りたいので【災厄の悪魔神】を呼んでみることにした。


「……え、呼べんの?」

「呼ぶには呼べるけど、言うことは聞いてくんない。でもまぁ、さっきの失言を聞かせたらまっしぐらに【勇敢なる者】くんと戦うだろ。やったね!」

「んじゃ、その瞬間にさ、離脱するだろ?それに俺も入れて。俺もちょっと準備する。」


 切り刻まれたら切り刻まれた分だけ小さいフーラーが出現し始めた。今村は一応再生を行うが、両方召喚術を行使している。


「あ、馬鹿お前はやったら……」

「塵も残さず抹消されろ!【0の静寂(ニヒルセレンティウム)】」


 今村がフーラーに何か言うよりも早く、フーラーは【勇敢なる者】に消し飛ばされた。


 今村は本気で溜息をつき、次の一手でもし自分に攻撃が入ったら瞬間的に【白礼刀法・零の型】が発動するようにして召喚を行う。


「長かったな宿敵。これで終われ。」


 神速の一撃が繰り出され、今村が捨て身技を行使するその刹那の時間に今村と【勇敢なる者】の間に子どもが割り込んできた。


「ディエス?」

「ま、魔神……大帝、様……」


 今村が割り込んできた子どもを見て訝しげな顔をするとその子どもはこの空間で今村の前に立って初めて表情を変え、半身を消し飛ばされつつも今村の方を見て涙を湛えて何かを口にしようとする。


「何だこれは……つまらん。消えろ。」

「申し訳…………」


 だがそれは最期まで言うことが出来なかった。ディエスの半身は塵も残らない様に分解され、そして今度こそ今村の元に勝利の笑みを浮かべた【勇敢なる者】の剣が振り下ろされる。


 またしてもその時だった。


 まるで誰かが運命の時を操っているかのように、都合のいいタイミングでそれは現れた。


 彼女は冒涜的な、いや、名状しがたい形に成り果てた、フーラーの対の存在。その悪臭はあらゆる毒耐性を得たと思っていた今村ですら吐き気を催すものだ。


 まるでこの世の悪意と腐敗と醜悪と毒気と汚物を煮詰めて濃縮し、それを酸敗して饐えた生ごみの数千倍汚らしい何かに塗りたくったかのような風貌をしたもはや何だか分からない見ただけで発狂しそうなものがここに現れたのだ。


「な、あ?」

「お、オェ……ま、マリアンさん……いや、魔痢闇さん……」


 負の原神が一柱、マリアン。彼女は怒り狂っていた。愛しの夫(予定)を殺されたのだ。無理もない。今村は助けてもらっておきながらなんだが、割り込むのではなくて【勇敢なる者】の後ろから出て来て欲しかったと心底思った。


「……ワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセワタシノオットカエセ」


 頭が狂いそうだった。


 ガラスを引っ掻いた音と黒板を引っ掻いた音、それに生理的に受け付けない何らかの声、それと甲高い声ともう何だか分からない声、そして低い音、知覚できない範囲であるのにもかかわらず無理矢理に聞けるように頭の中をグチャグチャに掻き混ぜられる感覚になりつつも、今村はこの状況になった際の当初の目的を成し遂げた。


 【災厄の悪魔神】の召喚を、成功させたのだ。


「あ、さ、【災厄の悪魔神】さん…………ご愁傷様です。マジすんません。こんな鬼畜な状況に呼び出して……」


 そんな世界最強のクラスに位置している【災厄の悪魔神】は今村に召喚されたと同時に間にいたマリアンさんのナニカに触れて吐いた。今村は本気で悪いことしたなと思って謝罪する。


「……えぇと、取り敢えず……マリアンさんの何か分からん音の所為で聞こえていないか……言霊だけ渡して行こう……」


 向こうで【勇敢なる者】があらゆる願いを叶える力をフルに活用して何とか敵である負の原神を消滅から救えないかと頑張っているのを尻目に見ながら今村は大分遅れてしまい、助けられる可能性が少なくなりつつあるここに来た面々の救出のために速やかに、かつ後を付けられない様に「神・行方不知」で攪乱してゲネシス・ムンドゥスへと戻って行った。




 ここまで申し訳ありませんでした……

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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