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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十二章~時の流れ~
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16.割と最悪の事態

「ん?これは怠いな。【逆位相】」


 ディエスが放った【消滅】の力。それは今村の方まで波及して来ていたが今村はそれを見てただの一言で消し去った。


「……ん~勿体ないしちょっと食べとくか。『ドレインキューブ』……もしかしたら後で使えるかもしんないし。ねぇ?」

「ぐ、あ……」


 自分の方に来る物は消し飛ばしておいたが敵の分まで消すようなことは勿論していないので今村の攻撃の対処すら追いついていなかったドイスは【消滅】の力の攻撃に晒され、半死半生になっていた。


「まぁ、うん。……ん?」


 今村は前世でいきなり裏切って自分を刺した者が今度は彼自身が連れて来た者の攻撃で死にかかっているのを見て嘲ろうとしたがドイスの様子がおかしいのを見てそれを止めた。


「……崩壊現象が広がってるな……?消滅が、侵食してる?フム……何だこれ?」

「グググ……む、無念……」

「あ、ちょっと待って?消滅前にサンプルは貰っとくから。」


 今村は崩壊していく彼の体を無理矢理術式で回復させる。ドイスは体が消えていく感覚と復活していく現状がせめぎ合い、発狂し始めた。今村はうるさいのでそれを「自聴他黙」で聞こえないようにしながら必要だと思うサンプルを摂り、異変に気付く。


「チッ……意気込んでた癖に……あぁ怠い。あいつら、勝てないなら最初っから引っ込んでろよ……意気だけは買ってやるが……」


 もう少しドイスを虐めたかったが、「幻夜の館」の面々が消滅に巻き込まれて崩壊現象に晒されているのに気付いて今村はドイスをすぐに消し飛ばして現場に急行する。


「……っ!あぁもう!最悪だ!アポーツ!」


 取り敢えず手近なアリスとカムサの戦いの場に移動するがその途中で、今村は最悪の事態に気付いて盛大に舌打ちをして、八つ当たり気味にすでに死にかかっているカムサを消し炭にして消滅の危機に晒されている面々を集めた。


「ご、ごめんね……」

「先に戻ってろ。この状態ならまだ何とかできるが、治療方法は俺しか出来ないから欠損回復を致死量以上にぶち込んでおけ。間違ってもお前らの能力で何かするなよ?【ワープホール】。」


 今村は謝罪の言葉も全て無視して一方的にそう告げると彼女たち全員をゲネシス・ムンドゥスへと強制転移させて「αモード」から「Ωモード」に移行して最悪の事態を待った。


 それはすぐに起こった。空間が裂けるとそこから原神直属軍が姿を現し、そして先程までは見たかったものの、今となっては最悪としか言えない存在が目の前に現れる。


「……【冥魔邪神】。お前の悪運もここまでだな?」

「ハローだ。ユーシア様よ。いや……参ったねぇ?」


 今村が困ったような笑みで【勇敢なる者】、ユーシアにそう言うと直に名前を呼んだことにより信者たちが激昂する。


「不遜な!」

「よい。」


 だが、激昂した信者たちは信仰の対象本人によって止められた。そう言われると信者たちはどうしようもないので大人しく引き下がり、今村を射殺さんばかりの視線で睨むだけになる。


「【冥魔邪神】、いや仁か……大人しく【可憐なる者】の居場所を教えれば楽に、その上、すぐに殺してやる。しかもだ、お前が関わったモノの抹殺を止めてやろうではないか。」

「おや、これは出血大サービスどうもありがとうございます。」


 今村は【勇敢なる者】の能力に抗いながら軽口を叩く。実際、今の一瞬で出合い頭に殺されていれば為す術はなかったのだが、この間の一件が尾を引いているらしく彼は最初交渉から持ち掛けてきた。


「えーと、取り敢えず二人の痴話喧嘩に巻き込まれて俺超災難なんだけど……少し待ってね?あいつら、移動式の世界に住んでるから……」

「フン。探すのか……特色を教えれば俺が探すモノを……」

「まぁそっちがサービスしてくれてるからこっちもサービスってことで。」


 今村は実際に探してみた。先ほど言ったことは本音だし、探して場所を教えるだけであれば条約に掛からないので問題なく処理できると思ってのことだ。


 が、


「グッハァアアァァアッ!あ、危ねぇ……危なかった……あ~ヤバかった。マリアンさんマジパネェ。いや、マジ助かった。サンキュー……な?アレ?何か踏んでる。おーい。」

「……お前が踏んだの、【勇敢なる者】様だから。」

「うぇバッチィ!」


 突如として降って来た冒涜的な彼女を持つ負の原神が一柱、フーラーがこの場に乱入してきたことによって今村の探索網が途切れた上、交渉が滅茶苦茶になったことが明らかに分かった。


「あ~ちょっと、不味いかも?……まぁそんなことより聞いて!マリアンさんマジキチなんだけど!意識がもうろうとしてる間に産卵管を体にぶっ刺されて苗床にさせられかけた!強制転移が無かったら俺マジヤバかった!」

「……そんなことで片付けんなよなぁ……確かに悍ましさ半端ねぇけど。」

「貴様らぁぁああぁぁぁっ!」


 今村とフーラーが和やかに談笑していると我に返った【勇敢なる者】がブチ切れて復活した。瞬間的にフーラーの姿が掻き消え、【勇敢なる者】とクレイモアで鎬を削っていた。


「何するんだいきなり。」

「いきなりではないけどな。お前が先に踏んだんだし。」


 今村はフーラーに補助呪文をかけまくりながら溜息をつく。彼が戦う気であれば彼の特性のお蔭で【勇敢なる者】との戦いはほぼ五分五分になるだろう。


 だが、彼には信者たちがいる。それを相手にしながらだと勝ち目はない……そう思っていると不意に背後から誰かが突出して来た。


 あまりの存在感の薄さと、自分への害意がないことで見過ごしていたがそれはまさしく先程までドイスと一緒にいたディエスだった。彼は虚ろな目で信者たちに襲い掛かったのだ。


「お~やるなあのショタっ子。【消滅】か。アレどうやって使うのか未だに不明なんだけど。」

「……お前の特性上アレは使えん。物理の【神殺し】特化だし。ん~でも何してんだろうな?」


 【勇敢なる者】と対峙しながら今村たちは信者を消し飛ばしているディエスを見る。【勇敢なる者】はそんな彼の姿を見て忌々しい物を見る目で今村を見た。


「我ら原神が定めた世界の法を軽々と破りおって……禁呪の素質があることだけでも違法だが、使っているとは全く以て御し難い。」

「勝手に法を決めないでくださーい!先生に言いつけてやるんだから!」

「お前煽んなよ……」


 怒る原神をフーラーは煽る。正直疲れている今村は溜息をつきながら目と回避に集中しつつフーラーのサポートに入り、時々来る信者を露払いしながら長くなりそうな戦いに身を投じた。




 ここまでありがとうございました。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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