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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十二章~時の流れ~
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13.裏切り者との邂逅

「ようやく見つけたぞ?」

「あ゛ぁ?」


 もう疲れたので帰ろうとしている今村を重低音の声が呼び止めた。不機嫌そうに今村がその方向を見るとそこには3メートル近い強固な黒い筋肉に身を包まれた男と、線の細い美男子、そして陰気そうな男児がそこにいた。


 その内、2名に今村は見覚えがありすぐさま呪刀を構える。


「よぉ、腐れ裏切り者共。よく復活できたなぁ?……お前らが大好きな屑の姿が見当たらないが、また裏切ったのか?」


 軽薄な笑みを浮かべつつ呪刀で線の細い美男子と陰気そうな子どもを指すと線の細い美男子が苦笑しつつ首を振り、男性にしては高い声を出した。


「いいえ、【魔神大帝】様。我らが王は目の前にいますよ?」

「……は?その筋肉のこと?」


 今村は変な物を見る目で線の細い男が指す3メートルの巨体を見て訝しげな顔をする。氣の質も体の作りもほとんど違うそれを過去【全】の戦いの直前で裏切った彼と同一人物とは思えなかったのだ。


「グハハハハハ!筋肉とは、何とも褒めちぎってくれるのう!」

「……いや、これ誰だよ。とりあえず俺が消し損ねたゴミ屑は少なくとももう少し賢かったと思うが……これ頭まで筋肉に犯された単なる脳筋じゃねぇか。」


 今村の冷たい視線に晒されてその男は満面の笑みを浮かべた。


「褒め殺しか!グハハハハハ!それだけ褒めても、俺は、お前を殺すぞ?」


 今村は哀れな物を見る目でそれを見た。


 【全】との戦いの前に一応味方をして、国に協力してやった国王であるドイスという若者は大柄ではあったが少なくとも2メートルは越していない太陽のような男だったはずだ。


 性格も、国を束ねるだけあってある程度は知的であり、国のことを重んじて愛する者のために戦った人格者だったはず。


(……いや、何があった?どっちにしても殺し直して消し飛ばすが……気になるんだが……)


 目の前でポージングを取っている彼はどう見ても馬鹿だ。


「あー取り敢えず、殺すが……お前、何があったの?魂が混じったとは思えない構成してるんだが……」

「フム?我が大胸筋が惚れ惚れすると?」

「ダメだこいつ。」

「ナイスポーズで~す!ハイッ!」


 今村がこいつダメだ。そう思って戦端を開こうとしたところで線の細い美男子が説明を入れてくれた。


「我が君は、あなたに殺された後、魂だけの存在と化していましたが、少し前に紫苑という人物によって仙人同士の、第3世界の仙帝音色ネロと、その番いの天海と言う人物の争いごとの最終兵器として呼び出されました。」

「……まぁ、天海なら俺がこの前生き返らせたが……」


 今村は先端を既に開いたが話を聞きながらの適当な戦いぶりを披露する。陰気そうな子どもが全てを諦めているかのような顔でそれに付き合いながら話が続いた。


「……そして、魂だけでも鍛え続けた我が君は思ったそうです。全ては、筋肉であると―――」

「意味が分からな過ぎる。どんな思考回路でそうなった?」


 今村は呆れながら距離をとった。正直疲れているので早く帰ってエールでも飲んだら寝たいのだが、状況がそれを許さない。


(……サンプル取っておくか?何か変質してるし。……いや、変質者みたいな奴から採りたくないなぁ……)


 ポージングを決める筋肉といろいろ仕掛けて来ているが今村にとっては意味のない事なのでほぼ放置している線の細い彼。そして指示がない限り動かない子ども。


(……何しに来たんだろうなこいつら……?)


 今村としては前世で一瞬で灰にしてしまったのでもっとしっかり後悔させて消したかったので都合がいいが、彼らは何をしに来たのだろうと気になる。

 そんな今村の下に転移陣が描かれ、そこから人々が出てきた。


「ぷはぁ……ひとくん!」

「お兄ちゃん!」

「……今取り込み中なんだけど?」


 現れたのはクロノ、アリス、祓、サラだった。彼女たちは来て早々今村に飛びつこうとして状況に気付いて臨戦態勢に入る。


「……っ!よく、おめおめと、顔を……」

「おやおや、アリスさん……そんな顔をなされてもお美しいですが……いつもの様な美貌は減ってしまいますよ?」

「アリスさん……アレは?」


 尋常じゃない程の怒りの状態になるアリスを見て女性陣が息をのみ、そして代表するかのように祓が尋ねた。

 すると、アリスは端的に答える。


「ドイス。……前世で、ひとくんを裏切った……最低の、存在よ……」

「……書類など押し付けてる場合じゃないですね……全員、呼んで来ます。」

「邪魔だから帰れよ。」


 殺された張本人よりも怒り狂っている様子の女性陣に今村が冷や水をかけた。いつもであればその冷徹な目に晒されて引くのだが、今回は彼女たちの方にも言い分があるようだ。


「酷く、疲れてませんか?その状態で3人を相手にするのは……」

「いいから帰れ。ディエスとかと戦ったらお前ら消滅するぞ?」

「ァぁあA阿アaああぁぁああぁぁあっ!アリスぅぅうううぅうぅっ!」


 そんな口論の間に筋肉が突如叫び始めてアリス目掛けて飛びついて来た。今村は冷めた目でそれを転ばせると呪刀を深く突き刺そうとしてサンプルをどうしようか考えて思い止まり結局曖昧に刺すことになる。


 すると、刀身が筋肉に阻まれた。


「いいいぃたくも!ない!」

「……結構痛がってると思うんだが?」

「うるさい!お前が、お前がいなければ!アリスは、俺の物に!」

「何その超理論。」


 そう言いつつも今村は攻撃が少ししか効いていないという状況を見て参戦を決意したと思われるアリスを少し見て言った。


「……まぁ、あり得なくはないかも知れんが……」

「ないよ!それこそ天と地がひっくり返ってもないよ!お姉ちゃんはひとくん一筋って何回も言ってるよね!」


 それを聞いて後で天地をひっくり返された世界に連れて行こうと思った今村に強烈だと思われる攻撃が入った。


「……クロノちゃん。祓ちゃんとサラちゃんと一緒にカムサ……あの、線の細い桃色の髪をした兎人の相手をお願いできる?私はディエス……あの黒烏族の子どもの相手をしてくるから……カムサの能力は強弱を操ることだから気を付けてね?」

「……いいのかな?お兄ちゃんが自分で殺したそうに見えるんだけど……」


 クロノの質問にはサラが答えた。


「それが、出来ればじゃろ。……仁の性格であれば裏切り者はそれこそ会ってすぐに酷い目に会わせるはずじゃ……特に機嫌がいいとも思えんこの事態で奴らがまだ生きているのが現状を物語っておるじゃろう?」

「……んー疲れてるとは思うけど……そこまで、でも……ん~でもなぁ……クロノ要るのかなぁ?」


 クロノが首を傾げているとアリスはクロノから興味をなくしたように視線を外した。


「じゃあいいわ。消えるのが怖いからって戦わないなら、いつもひとくんの味方じゃないってことよね?」

「ち、違うよ!クロノお兄ちゃんの為なら他の人とのえっちなこと以外何でもするもん!」

「じゃあ、任せたわよ?」



 アリスはそう言って一人、カムサの方へと飛んで行った。





 ここまでありがとうございました。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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