12.冒涜的な彼女
グロテスク注意?と言う感じのモノがあります。「その姿はまさに冒涜的」~『……何か、進化してね?』までは描写を流した方がいいかもしれません。
「……い、いや……冗談じゃん?な?」
「大丈夫だ。」
今村の本気モードを目の当たりにした男が逃げようとして失敗した後今村は彼を捕まえて逃げられないように強制的に戦いのフィールドを作っていた。
「あ、そ、そうだよな?冗談って……」
「さっきのお前の言葉はしっかり【言霊】で確保してある。さぁ、俺も正直言ってどっかの馬鹿の所為でちょっと疲れ気味なんだ。……早めに決めるぞ?」
「ま、」
瞬間、今村は男の腹部を貫いていた。
今村は彼の死骸をうち捨てるとにこやかに笑って保存していた【言霊】を引き吊り出して「契制約書」にサインをした後に彼を「白魔法」で蘇生させる。
「さて、フーラーよ。生きとし生ける者に対して冒涜的な存在、……彼女を、呼びたまえ。」
「ぜ、全盛期越してないかお前……」
「無駄話は良い。それとも、俺が呼ぼうか?」
目の前の男ことフーラーが引き攣った顔で今村に別の話題を提供しようとしたが今村はにべもなくそれを取り下げて要求を告げる。
「……クッ…………お前が呼んだら、それこそ……」
「ハリーハリー!俺はここに残って話を聞かないといけないから……アレに当てられると惨事だし、【可憐なる者】?」
「んっ……呼んでくれたのかい?」
今村はプラスマイナスを中和するためにミニアンを呼んで自分のすぐ傍にいさせることにしてフーラーを見た。彼は血涙を流しながら自棄になって叫ぶ。
「っ!マリアンさん!好きだーっ!」
「言いやがった!ひぁゃっはぁ~!」
今村は彼がそう言い終わる直前に今村とミニアンを包むようにローブで球体を作り、その中に二人を突っ込んだ。
「む、……フフ。仁が、近いね……」
「うるさい。それより、来たぞ来たぞ……うわぁ……流石マリアンさん……見るだけで常人であれば死に至ると言うだけあるわ……」
未だ彼女の姿は現れていないがその前兆は起こっている。この空間全域に吐き気を催す邪悪な雰囲気と生きることに絶望しかねない瘴気が充満し始めたのだ。
「……強くなってね?……もしかして、愛の力?愛って偉大だなぁ……」
揶揄するようにニヤニヤしながら外の様子を窺う今村。ミニアンは嬉しそうに今村に体をスリスリしている。
そして、彼女は現れた。
「うっ……と、やべぇな……久々に見たが、マジでヤバい。アレは、マジで……あれ?おれなにいってるんだろ?わけが、わからなくなってきたよ……」
その姿はまさに冒涜的。名状しがたい物質だ。敢えて無理矢理例えて言うのであれば、
蠅のような目をザリガニの様に前方に出し、ゴキブリの如き触覚が周囲を探索している。
また、毛虫をベースとした体を持ち、その内側はダンゴ虫のように複数の足が蠢き、その側面はムカデのような足が飛び出てうねっている。口は蟹の様に忙しなく動いている上、中央には蚊の口の様な物が鎮座して毒々しい泡を吹き、前方にある目以外にも、顔に大きさも色も不揃いな目が焦点を合わせずに幾つもぎょろぎょろしている。
そんな物質が足代わりにミミズのような触手を蠢かせて直立して彼、フーラーの方へとゆらゆら進んでいるのだ。
「……何か、進化してね?」
取り敢えず、正気に返った今村の感想はそれだった。因みに混乱している間にミニアンからキスを受けている。それで治った。
「よ、よう、マリアン。元気だったか?」
「gじbちおあえhrふぃおにおぉぉおぉぉぉおぉぉっ!」
自発的に鼓膜を突き破りたくなるような大きな不協和音の数十倍は最悪な音が辺りを席巻した。序でにマリアンから何か得体のしれないものが粘膜を伴って噴出し、今村は少し休憩を入れることにする。
「いや、アレを直視とか、マジで無理。やっぱフーラーはマリアンさんの対として存在してるだけあるな。よくあれと結構普通にしていられる。」
「……君がそんなことを言うのは珍しいね?ボクもちょっと見てみようかな?ボクを持ち上げてくれないかい?」
「別にいいが……」
今村はミニアンの脇の下を持って子どもを高い高いするかのようなポーズで彼女を持ち上げた。
「あ、そこは……!?」
少し色っぽい声を出してミニアンが今村と少し戯れようとした瞬間、ミニアンの視界にマリアンさんの姿が入って絶句した。その様子を見て今村は頷く。
「あれがアカシックレコードに唯一、存在を完全に認知されているのに掲載をしないと決めさせたお方の御尊顔だ。」
「……あれ、なに?ぼくわかんない。あーひとしだ~だーいすき~」
世界を司る原神であるミニアンが壊れてしまったので今村は子供をあやすようにミニアンを扱って慰めてあげる。
「……もう正気だろうが。いつまで甘えてやがるんだ?」
「もうちょっといいじゃないか……ボクだって、甘えたいんだ。」
「まぁいいけど。」
本当に弱っているなぁ……と思いつつ今村は目の前のフーラーとマリアンの出来事の成り行きを見守る。
もしかしたら、もしかしたらだが、今村の中ではマリアンさんとフーラーが正しく結ばれることで何らかの奇跡が起こってマリアンさんが超絶美女になるかもしれないと思っているのだ。
「いや、ないかもしれないが!」
「……どうしたんだい?」
「ちょっと、あ。」
今村は目の前の光景に声を漏らすことしかできなかった。フーラーが何かへらへら笑いながら言っているとマリアンさんがキレて体の中から管の様な物を出して撃ち、フーラーを昏倒させると糸を吐いて獲物を捕食する蜘蛛の様にぐるぐる巻きにしてそれを運び、どこかに消えたのだ。
「……これは流石に……」
今村は流石に不味いなと感じたのでこの場所に先程一方的にボコボコにした際に得ていた情報を入力して、何らかの危険が起きた際には強制転移するように設定してからテンションを切らした。
「あー……どっと疲れた。ミニアン。帰りな。捕まるぞ。」
「……うん。名残惜しいけど、バイバイ。またね?」
今村はミニアンが消えるのを見て、この世界にこれ以上いるとフーラーが戻って来た時に面倒なことになると早々に退散して行った。
ここまでありがとうございました。




