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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十二章~時の流れ~
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9.冥界で食事会

「あれ?」


 今村は冥界のある場所で首を傾げてそんな声を出した。彼は一度この場所の詳細を確認して首を傾げる。


「……フィトの場所だよな?ないぞ?」


 この場所の確認を終えても目的の木がある場所であることは間違いなかったので今村は更に首を傾げる。


「どうしたんだ?」

「チャーンドか。」


 そうこうしていると同行していた冥界の主であるチャーンドが今村のすぐ傍に現れる。彼は彼女と見間違うかのような美貌で今村の近くにいるが、それを祓がそれとなく逸らした。


「……わざわざ何故、ここに入る?」

「……何となくですが?」


 静かに火花を散らす二人。二人の仲は以前の冥界での一件で良好とは言い難いのだ。今村はそんなこと関係なしに色々考えていたが面倒になって来たので諦めることにした。


「じゃ、ついでだしチャーンドの所で飯でも食うか。」

「作りますね?」

「用意させよう。」


 今村の一言にほぼ同時に言った言葉によって無言の勝負が始まった。そんな二人の様子を見て今村は笑う。


「なんだ、仲良しだな?」

「いえ、全然です。嫌いです。この人が女装してるから私は先生にあの時の自分を殺したくなるようなことをしてしまったんですから……」

「誰が女装をしているだと?」

「あなたですよ。そんなに女性と間違えられるのが嫌なら髪切ったらいかがですか?」

「あ?」


 チャーンドの目が据わって祓を射殺すように見る。だが、祓はあくまで冷静に返した。


「何ですか?正論過ぎて言い返せないからと言って睨まないでほしいのですが?先生が変なことをしかねないので。」

「そんなに愛しの先生の視線が気になるか?」

「当たり前じゃないですか。私にとって全てなんですから。」


 また睨み合うので今村は二人を置いてさっさとチャーンドの居城に転移した。










「ん~目的の木の実の採取が出来なかったからなぁ……どうするか。」


 今村は昼食にフィトの実を実験として一つ使ってみようと思っていたのだが補給が出来ないとなれば使うのは止めざるを得ないとその案を棄却する。


「お待たせしました。何にしますか?」


 色々と考えていると祓が笑顔でこの場所に現れた。今村はこの場所であると指定したわけではないんだがなぁ……と思いつつも時々信じられないくらいにエンカウントする姉妹なので別のことについて言及する。


「……血の匂いがするんだが?」

「?申し訳ありません。……綺麗に流したはずなのですが……」


 祓からはチャーンドの血の香がしたのだ。だからと言ってチャーンドのことを心配するわけでもない今村は取り敢えず適当に何か作ってくれるように頼んで椅子に凭れ掛かった。


 祓がすぐに準備に取り掛かると勢いよくこの部屋の扉が開いてチャーンドが現れた。その髪は以前より大分短くなっている。


「……切られたのか。」

「あの女ぁぁあぁああぁっ!殺してやる!」

「……多分、返り討ちになるぞ。」


 今村は冷静に二人の戦力分析を行いつつ本人はあまり好きではないのだが術でいれた紅茶を飲む。その膝の上には羽の生えた黒猫が陣取っていた。その猫を見てチャーンドは一気に冷静さを取り戻して跪く。


「っ!大猫神様!」

「……にゃあ。」

「ご、お声かけ、この身には余る光栄です!」

「にゃ……」

「失礼いたしました!ごゆっくりお過ごしください!」


 そしてチャーンドはすぐさま出て行った。今村は羽の生えた黒猫を撫でながら紅茶を飲む。


「情けないねぇ……昔はもっと強かった気がするが……まぁ大分時も流れてるし仕方ないのかもしれんが……」

「にゃふぅ……」

「……俺も変わってるよ。あーもふもふ可愛い。」


 今村が羽の生えた黒猫を持ち上げてその腹部に顔を埋めると黒猫は撫でられている気持ち良さそうな顔を一転させ、嫌そうな顔をしてどこか虚空を見つめる。


「……あ~可愛かった。んじゃね。」

「にゃ。」

「え?ご褒美ねぇ……あ、死魔鰹とかどうかね?俺が醸成しておいた節の。」


 羽の生えた黒猫はそれに重々しい感じで頷くと姿を消した。その一件が終わってから祓が豚汁らしいものと色とりどりの野菜と何かを揚げてある物を炒めてあんかけにした物を持って来た。


「すみません。お待たせしました。」

「いんや、待ってないよ。」


 今村は手にしようとしていた本を特殊空間の中に入れて次々と並んで行く料理を見る。


「……ふむ。いつもより多いな。」

「今日は野外での活動が多めでしたので、こうしてみましたが……お嫌でしたら残してください。」

「いや食うけど。んじゃ、いただきましょう。」

「お願いします。」


 そう言って今村は祓が作った料理を食べ始めた。いつもの様にそれを見てほんのり表情にはあまり出ていないが嬉しそうにしている祓に今村は尋ねる。


「チャーンドの髪切ったのお前?」

「はい。これでもう大丈夫です。……尤も、先生以外の男性に近付きたくないのでそう言う術を取得してますから分かるんですけどね……大事にしてるみたいでしたので切りました。」


 人が嫌がることをするなんて……俺に似てきたのかなぁ……?などと思いながら今村は会話を続ける。


「俺以外の男性ってなぁ……んじゃ、同性に走るのか?」

「何でそう言う発想をするのか分かりませんが、私には先生だけ、です。」

「既にお前の周りには人がいるから俺は良いと思うんだが……」

「嫌です。先生がいないなんて炭水化物を抜いたパンみたいなものです。」


 それは果たしてパンなのか?と思ったがまぁこういうことは何度言っても無駄みたいなので時間に解決させるとして別の話題に入る。


「そういや、お前そろそろ誕生日だったよな?……まぁもう神に近い存在だしあってないようなもんだが。」

「はい。」

「お前と会って最初の年にここに来る前にお前の誕生日祝おうとか言ってた気がする。……んで、殺しに来られたな。」

「…………はい……」


 祓は自害しかねないほどの暗い表情になる。


「まぁ何だかんだ死ななかったけど。……あん時死んどけばよかったか?」

「死なないでください!お願いします……嫌ですよ……」

「いや、どうせ死なないといけなかったし……一回で済ませとくべきだった気がしないでもないんだが……ん~、でもなんか足りない気がするんだよなぁ……2回に分かれたせいかなやっぱ。」


 祓は今村が死のうと思っているわけではないとわかって息をつくが少しだけジト目で今村を見た。


「……本当に心配するんですから、そんなことは冗談でも、冗談じゃなくても言わないでください。」

「俺の言論の自由をお前にどうこう言われる筋合いはない。まぁ、本気で死にたい時には言わんがな。」

「…………それは、それで困るんですけど……」


 そんな苦しい状態にあるのであれば言ってほしいな。そう思う祓だったが今村は状況と言動が一致した状態で言うと原神に連れて行かれるので言う気はないがその事も説明する気はないので別の話題に入った。


 この後は比較的に和やかな話になって二人はチャーンドのことを忘れて普通に現世へと帰って行った。




 ここまでありがとうございました。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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