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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十二章~時の流れ~
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8.慰労旅行終了

「美味しかったね!」

「まぁ。」


 今村たちは焼き肉店から出て行った。あの店は今村が所有している物であり、この世界自体今村の物なので別に破産することもないのだがそれでもクロノ達が食べた量は異常で今村は微妙な顔をしていた。


「あ、あの……ごめんなさい。」


 会計を見ていた白崎が申し訳なさそうな顔で今村に謝罪する。元王女である彼女が見ても少し前に今村から教えてもらったこの世界の金銭感覚を鑑みて会計額を見ると顔を青くするものだったのだ。


「何気にしてんの?」

「金額よ……だって、あんなの……」

「あー?まぁ気にするな。付いて来るか訊いたのは俺なんだし、頑張ったご褒美とでも思えばいい。それより次に行こうか。」


 そこまで頑張った気はしていない白崎が微妙な顔をしていると今村はクロノを白崎の目の前に持って来た。


「……言いたいことは分かったわ。」

「お前は頑張ってるから。うん。」

「んにゃ?なになに?クロノだけわかんない。」


 クロノが後ろに回った今村を見ようと首を回してその視線から今村は逃れることを繰り返し、クロノが左右に首を振る中で飽きた今村はクロノを降ろして移動を開始する。


「ね~何だったの?」

「何でもない。」


(実際の所、こいつの専売特許である時の力の源泉を観察して俺用に写し取らせてもらったんだからあの金額でも別に問題ないんだが……まぁ白崎はこうしないと納得しないからな……)


 表面上、いつも遊んでいるクロノだが一応勉強なども頑張っている。だが基本的に決まった場所で勉強しているので白崎が見る時は今村の所に遊びに来ているということになる。

 従って、白崎はクロノをいつも遊んでいる童女だと思っているため、いつも遊んでいるクロノが普通に自分の何倍も食べたのを見て今村は暗に気にしないように言ったと思わせたのだ。


(まぁそんなことはいいとして、どこに行こうか。ある程度実用的で、デザインのいい【魔具】でも買いに行くか。)


 ということで歩きながら今村は進行方向を「シルベル君」に検索させた。


「……その前に、一応行先訊くが行きたいところあるか?ないなら魔具買いに行くが……」

「なにがあるの?」

「……食い物、アクセサリー露店、水族館、賭博場、娼館、薬物、映画、植物園、動物園、人間観察場、バー、処刑台、武器屋、防具屋、職業ギルド、魔導使用場、研究所、スポーツセンター、つーかお前らがパッと思いつく物であれば大体何でもあると思うよ。」

「お兄ちゃん記念写真館は?」


 クロノの問いに今村はにこやかに頭を鷲掴みにするとそのまま無造作に空高く放り投げて吐き捨てるように言った。


「んなもんあるかボケが。」


 白崎は非公認でありそうだと思ったが黙っておく。大体、この世界を創造した神である存在が目の前にいて、数々の偉業も多数の存在の前で行っているのに無関心でいられるわけがない。


「……今村くんは何でそんなに写真とか嫌うの?」


 そんなことを思ったので白崎は今村に率直に尋ねてみることにした。すると地上に落ちてきたクロノの頭に拳を叩きこんで今村は白崎の方を振り返って端的に答えた。


「キモいから。俺の顔とか見たくもない。俺が許可しない限り鏡とかあらゆる物に映らないようにしたいんだが……まぁ諸事情で無理だった。」


 諸事情は原神様のことだ。彼女たちがもっともらしい理由を付けて全原神の承諾を得、全世界の理に明確にそのような存在はあり得ないと規定したので今の今村程度ではどうしようもないのだ。


「……それはよかったわ。」

「キモくないもん!世界一格好いいもん!」


 今村は再びクロノを宙に舞わせて足首をローブで掴み、急降下させる。


「さて、その辺はどうでもいいとして行こうか。」


(……それでもちゃんと怪我をしないようにしている辺り、色々考えてるんだと感じるわよね……)


 無傷で少し気持ち悪そうにしていること以外は問題なさそうに歩くクロノを見て白崎はそう思う。

 いつかは忘れたが、今村が白崎と同じ中学を出て、人間を辞めてから会った際に一度今村が誰も気にせずに歩いていたのを見た時は走るより速くて引いた覚えがあるが、こういう時は普通に人に合わせて歩いてくれる。


(クロノちゃんの手も引いてるし、多分こっちを見て何かしようとしてる人には予め手を出さない様にさせてるみたいだし……)


「何ボンヤリしてんだ?逸れたいならいいが……」

「あ、ごめんなさい。」


 できれば自分もクロノのように手を引いて欲しいななどと思いながら白崎は今村の後を追った。











「いらっしゃ……いませ!」

「いらっしゃいませ!」

「あーあーそのまま仕事してろよ。こっちを気にしないで良い。」


 しゃがんで作業をしながら入店の挨拶をしていた店員たちが今村のローブを見てすぐに立ち上がり綺麗なお辞儀をして接待を始めようとするのを今村は押し留めてクロノと白崎にショーケースを示した。


「好きなの1つ選んでいいよ。他の奴には内緒で買ってやるが……他の奴には言うなよ?面倒だから。」


 今村の言葉を受けてクロノと白崎は対照的な表情を浮かべた。


「わーい!ねぇねぇ?どれがいいと思う?」

「……ダメよ。こんなの悪いわ……」


 白崎が見た値段はゲネシス・ムンドゥス換算すればそれだけで別荘付きの小さな島を買うことができる値段を付けられているネックレスだった。その他も同じような値段がつけられているのを見て気が引けている。


「悪くないから。気に入らんなら別に強制しないけど、俺的にはこれとか似合うと思うぞ?」


 今村が指したものを見て白崎は顔をいきなり赤くさせた。彼女が一番最初に目が行って、そして欲しいなと思い値段で断念したネックレスだったのだ。

 ただ同じものを選んだだけでも乙女フィルターがかかっている白崎にはかなり嬉しく感じている。


「……急に顔を赤くして……熱処理に失敗したか?帰ったらメンテだな……」

「ち、違うわよ!この鈍感……」

「あ?何キレてんだ?熱暴走か?今すぐ開こうか?」


 どこからともなく出した工具の先端を白崎に向けながら今村が尋ねると白崎は黙った。代わりに真剣に色々選んでいたクロノが声を上げる。


「クロノこの黒いおっきいのにする!」

「……ほう。白崎の解剖は後でにして、クロノ。これを選んだのは中々のセンスだと思う。偉いぞ?」

「えへへ~」


 後で解剖されるんだ……と思いつつ白崎は褒められて撫でられているクロノを見てもやっとした物を胸に抱く。


(……ダメよね。私だけを見てもらおうなんて考えたら……今村くんは独占禁止じゃないと不平等だし……)


 白崎は「幻夜の館」で今村の独身主義を何とかしようとしている面々の生い立ちを聞いて自分がかなり恵まれた環境で出会ったことを知り、彼女はある程度譲歩して彼を中心とした輪に入ることに決めたのだ。


「っ?」


 そんなことを考えていると白崎の方に何かが乗った。それに驚いて振り返ると何だか訳知り顔の女性店員が頷きながらこう言った。


「青春よね……【魔神大帝】様はかなり競争率高いから、頑張って。」

「え、えぇと……はい?」


 何だかよく分からなかったが白崎は頷いて、その後に今村と一致したネックレスを買ってもらい慰労旅行を終えてゲネシス・ムンドゥスへと帰った。


 なお後日、白崎は買って貰った物を思い出し笑いなどしながら見ているのを祓に見られて今村に買ってもらったことはすぐにバレた。




 ここまでありがとうございました。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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