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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十二章~時の流れ~
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7.お食事に行きましょう

「……どうだった?冷めた?」


 今村は幸が薄そうな相談者の元妻と元義父を別世界に運んだ後に【独身貴族連盟】の相談室に戻ってきて白崎とクロノの二人にそう尋ねた。


「全然?アレはアレでこれはこれでしょう?あの程度で冷めるようなそんな緩い覚悟じゃないわよ。」

「クロノねー。あのおばさんムカつくから八つ裂きにしたかったけどね、我慢してたよ!だから抱っこして!後、クロノはお兄ちゃん大好き!」


 今村の質問に二人は平然と答える。


 その際に白崎はクロノは結構我慢しきれていなかったのを自分が抑えたのに……と思ってジト目でクロノを見て、溜息をついて諦めると白崎はクロノを無視して何か考えている様子の今村に尋ねた。


「……それにしても、今村くんは何で最後に新しい人を紹介したの?それに、あなたが結婚したら幸せになれないと思ってるなら何で色んな人の恋路を応援するのか分からないんだけど……」

「面白いから。んでもって極々稀に冷めない恋愛があるからねぇ……ミカドとか!後ミカドとか!それにミカドとか!」


 今村はそう言って白崎に嗤いかける。ミカドという言葉を聞いた時に周囲の中にはぼそりとそれは例外だ……と呟く声が漏れる。


「クロノもね、それだよ~?最近大好きが溢れそうなの!」

「はいはい……じゃあどこかに捨てておいてください。」

「捨てないよ!」


 じゃれついて来るクロノを背負って今村はそこで固定し、動けないようにするとふと何か忘れている気がして白崎に尋ねた。


「……何か忘れてる気がするんだが……俺元々何しに来たっけ?」

「旅行よ?小旅行。私へのご褒美をくれるって言ってたから……」

「……そうだったな。じゃあ珍しいものでも見て回るか。」


 今村はそう言うと周囲の情報を「シルベル君」で確認し、序でに能力で危険性があるかないかを確認してから苦笑いした。


「どうしたの?」


 今村が急に笑うことはよくあるのだが、それを訊くと会話をしばらくしてくれると知っているクロノが今村にそう尋ねると今村は何でもないと答えた。


(……ガチムチ襲来中って……何か嫌だな。思考はほぼ筋肉だし……何か俺の事を姉貴絡みで恨んでるっぽいが……筋肉で読み辛い!何だこの筋肉!)


「焼肉を食べよう。」

「?いいけど。」

「面白いお店なの?」


 今村が急にそんなことを言いだしたので白崎は小首を傾げ、クロノは先程笑った流れなのかな?と推測して今村に尋ねた。


「面白くはないぞ?美味しいけど。」

「やった!美味しいのお兄ちゃんと一緒に食べれる!」


 クロノの言葉に今村は胡乱な目を向けて訊く。


「……あざといなお前……素?何か見てんの?」

「?みゅうちゃんがこういうの言った方がいいって。素直に色々言わないとお兄ちゃんにはわかんないって言っててね。分かんないからクロノと一緒にいてくれないのかな~?って思ったから言うようにしたの。」

「……そうか。どっちにしろ一人こそ至高だということには変わりないが……」


 クロノが反論しようとしたところで白崎がそれを止め、今村に次どうするか尋ねて話を進める。


「お、気が利くな。……まぁ何でクロノを黙らせるのに俺に引っ付く必要があるのか分からんが……まぁこっからはさっきも言った通り、俺は焼肉行くぞ。お前らもついて来る?」

「……背負ってるからよ。で、焼肉には行くに決まってるじゃない……何でこういう団体行動中に一人になろうと出来るのか分からないんだけど?」

「俺には始終群れていたい気分の方が分からん。疲れないの?俺は……まぁ別に疲れないけど面倒だから嫌だな。」


 今村は頷きつつ一行の下に大穴で「ワープホール」を形成した。


「え?」

「あ、飛ぶなよ。」

「ちょっ!」


 今村は機械の羽を広げて反射的に飛ぼうとした白崎をローブで掴んで一緒に底の見えない穴へと落ちて行った。














「いらっしゃいませ。今村様、本日は3名様で?」

「ん。結構食べる奴がいるからよろしく。」

「……な、何でそんなに普通に会話してるの……?」


 天井から抜けて個室に落ちて来た一行を待っていたのは白髪の年配の男性で、焼肉店というのに燕尾服を着ていた。

 彼は白崎が気付く前に腰を深く折って礼をしており、今村が地面についたと同時に声をかけて来てその後、すぐに消えて行った。


「さてクロノ。食事中は降りろ。」

「うん。マナー守るよ。」


 今村はクロノを降ろすと席に着き、クロノがその横に追随すると白崎は今村の対面の席に移動した。

 全員が席に着くと待っていたかのように先程の男性が皿を持って現れた。


「お待たせいたしました。名状しがたい肉です。」

「おう。」

「…………うん。」


 白崎は今村が受け取ったモノを見て普通に引いた。何だか見えるが、映像として理解できない不安になるような形も色もよくわからない、まさに名状しがたい肉のようなものが華の様に綺麗に皿に盛りつけられているのだ。


「……い、いただきます。」

「焼けよ。」

「そ、そだね。忘れてた!あ、あはは……」


 クロノの無理がある笑顔に白崎は同情する。あまりの衝撃の光景に色々忘れてしまったクロノを責めるのは彼女にはできなかった。


(……でも、何気に美食家の今村くんが美味しいって言っていて、食べ物だと言ってるんだから大丈夫よね……?)


 白崎はそういう視線で今村を見るが今村はしばらく肉とクロノと白崎を交互に見て思い出したかのように呟いた。


「……あ。……まぁ焼けば大丈夫だろ。」


 この一言で一気に不安が押し寄せる。


(焼けば大丈夫って……た、大抵の物は大丈夫かもしれないけど、これは……大丈夫なの?)


 目の前では意を決したクロノがトングで肉を鉄板に置くことで紫色の煙が漂い始めた。その色合いを見て白崎は色々あきらめの境地に立ち始める。


「お、いい感じに緑に焼けて来たな。」

「みっ?……そ、そうね。うん。」


 それは果たして大丈夫なのか。白崎は今村が見ている中でクロノがその肉を可愛らしい口で食べる様子をただ見ることしかできない。


(……私も、逝きましょう……今村くんが食べさせてくれているんだもの。この程度で挫けてられないわよね……)


「あ、白崎、それ焼き過ぎ。黄緑になって来てるって。」

「きっみ?あ、ご、ごめんなさい……これかしら?」

「それはまだ焦げ茶色だろ。もしかして見えてない?」


 白崎は頷いた。その横でクロノが名状しがたい肉の皿をひっくり返して全部焼き始める。


「おい……まぁいいけどよ。」

「美味しい!お家のご飯よりおいしいよ!びっくりした!クロノお兄ちゃんの料理と祓ちゃんとアリス姉ちゃんのハンバーグの次にここ好きかもしれない!見た目汚いのに!」

「汚いとか言うなや……」


 ついでに今村的にクロノの言い方では、祓とアリスが挽き肉にされてハンバーグになっているかのような印象を受けたので少し笑った。


「……それはさておき、白崎は見えてないんなら視覚情報のグロテスクカバーをなくして見ないとな。」

「……そんなにグロテスクなの?」

「まぁ、ある意味死体を細かく刻んだものだしな~……ってか早くしないと全部食われるぞ?」


 白崎はクロノの勢いを見て全部食べてもらっても構わないのだけど……と思いつつ今村の指示に従って操作を行いつつクロノが全部食べ切ろうとするのを見た今村に口の中に名状しがたい肉を突っ込まれる。


「……美味しかったわ。」

「そりゃよかった。」


(二つの意味で。)


 白崎はそれだけで満足気味になったが、気恥ずかしくて目を逸らしたところに再び先程の男性が現れて何かを出した。




 ここまでありがとうございました。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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