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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十二章~時の流れ~
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3.小旅行

「お~……よく頑張ったと思うよ?流石にこれは……うん。」

「……しばらく書類は見たくないわ……」

「この短期間でミーシャより早くなったのは凄いと思う。そうだな。何かご褒美的なのいる?」


 今村がほぼ缶詰め状態で仕事を頑張らせていた白崎にそう訊くとベーシックな黒を基調としているメイド服を着ていた白崎はその大きな目を瞬かせた。


「……いいの?」

「要らないならいいけど。」

「いや、欲しいわ。」

「何?」


 今村の問いに白崎は即答した。


「……異世界に、行ってみたい。」

「どんなの?この世界に似た奴とか魔術が発達してる世界もあるし魔法世界もあれば科学が発達してるのもある。法氣ってのを操る所もあれば霊による世界もあるし……」

「今村くんが、お勧めする所で安全なところがいいわ。」


 白崎の返答に今村は少し考えた。


(……安全、ねぇ……何を以て安全とすればいいんだ?訊くか。)


「その安全の基準はお前が一人で行動できるレベルの安全?それとも俺がお前を守り切れるレベルの安全?」

「今村くんと一緒にいるから後者でお願い。」

「ん~あ、ついでだし一回時間停止して行ってみるか……『レジェンドクエスターズ』本町に。」


 今村はそう決めて少しだけ笑うと白崎の手を取った。白崎の頬がほんのり朱に染まるが今村は無視して、背中に衝撃が走った。


「クロノも~っ!何か良く分かんないけど!」


 今村が後ろを見るとフードと胸と腰の辺りに大きなリボンを付け、赤を基調としたワンピースに白いエプロンドレスを付けたクロノがにこにこしていた。今村はそれを見て考察する。


「……成程。本家には時間停止も全く効果なし。やりようはあるがまぁいいか今から異世界に行くけど来んの?」

「うん!」


 クロノの元気な返事に白崎が微妙な顔をしたが、今村の視線に気付いて表情を戻して頷いた。


「まぁいっか。行くぞ。」

「おー!」

「『ワープホール』」


 今村とクロノと白崎はゲネシス・ムンドゥスから飛んだ。














 「レジェンドクエスターズ」本町。そこでは多くの人々が賑わっており様々なモノが売り買いされていた。


 それは良いのだが、今村は顔を引き攣らせていた。対照的にクロノは顔を輝かせ、白崎はもの凄く曖昧な顔をしている。


「……何だこれ……」

「異世界って、変わってるのね。あぁ、ゲネシス・ムンドゥスの『レジェンドクエスターズ』にもそう言うのあったわね……アイドル?みたいな人。」

「お兄ちゃんの写真だー!ねぇねぇこれどうやって買うの?」


 少し歩いていたのだが、ある露店に前世の今村の写真やグッズ、キャラクター化されたものなど様々なモノが並んでいたのだ。自由に動こうとするクロノを捕まえ、クロノの発言にまさかといった表情をしてこっちを見て来る白崎から目を逸らして今村は時間の流れを始めた。


 瞬間、目の前にあったモノが嘘の様に消え去って目の前の店は香辛料を小売りする店になって、買おうとしていた客もいなくなっている。


 そして今気付きましたよとばかりに少女は可愛らしく笑いかけて手を振ってきた。


「【魔神大帝】様!」

「ねーさっきの写真欲しい!売って~」

「ハハハハハハハ。お嬢ちゃん何言ってるんだい?ウチの写真なんて撮ってもいいけどいくらにもならないよ?」


 笑顔で会話する香辛料を売る娘とクロノ。白崎は目が疲れていたのかと目の間をしきりに揉んでいるが、それを無視して今村が香辛料を売っている娘の頭を掴んで宙吊りにし、屋台の時を戻した。


「……これは、何だ?」

「ぅひっ!な、何でしょうかね~?」

「……【時】を操作する能力を手にした。言い逃れは出来んぞ?」


 今村は頭部が炸裂するくらいの力を込めてそう言った。すると少女は観念したのか笑い出した。


「バレたのなら仕方ないですね……偶像崇拝禁止に基づいて私は出頭してきます。ですが、アンリ死すとも「うっせぇさっさと投獄されろ。」」


 今村は陣を生成して目の前の少女を牢獄送りにし、屋台は焼き討ちした。燃え盛る自身の写真やグッズを見て今村は口の端を歪めて笑う。


「……まぁ、霊魂が一部でも入ってたら殺してたが……この程度ならいいか。気持ち悪いが。俺の顔なんざ見たくもない……」


 自分の顔がまだ残っている縁だけ燃えた写真を踏み躙り、すぐに燃やす。一瞬にも満たないその様子を見てクロノが声を上げた。


「あ~勿体ない!燃やすならクロノにちょうだいよ~!」

「キショイ。こんなもん欲しがるな。」


 今村はそう言って灰すら残さないように全ての物を燃やした。クロノは手に入れ損なってむくれる。


「む~いいもん。自分で作るもん。」


 クロノの呟きに今村はクロノの再現であれば自分とは分からないから別にいいかと思っていると白崎が今村に尋ねた。


「あんな顔だったの?……まぁ私は別にどっちでもいいけど。今村くんの重要な部分は中身よね。」

「財布の中身だろうが。……まぁいい。それで買い方についてだが……」


 金銭目的と断じられて白崎は憮然とするがそういった好意の押し出しの件に関してあまり強く出過ぎないように「幻夜の館」の面々に言われているので仕方なく小声だけで反論して流し、今村の話を聞く。


「この世界じゃ金とか結構な奴らが創れるからあんまり価値がない。だから通貨は説明しても分からんだろうから簡単に言うとデータ的な物になってる。通貨単位は【ログ】。まぁその他にも決まりとかは色々あるが……一先ず買い物するくらいならそれだけで十分だ。お前らには取り敢えず100万ログ渡しとく。」


 今村の説明を聞いた白崎が今村に尋ねる。


「……これでどれくらいの価値なの?」

「露店を一つ買い占めれる位。」


 今村はそう言いながら青白い光を放つ小さな長方形の何かをクロノと白崎の腕の中に入れた。


「支払いを言われた時に手を翳せ。そしたら勝手に払われる。」

「ねーお兄ちゃんの写真って高いね。10万ログしてたよね?」


 先程の屋台のことを目ざとく見ていたクロノがそう言うと今村は無言になり、クロノの頭をわしゃわしゃにしてそれだけでは足りなかったのかローブで掴んで空高く投げた。


「黙れ。」


 落ちて来たクロノを逆さ吊りにキャッチしてそう告げる。クロノは下着が見えないようにワンピースとエプロンドレスを重力に逆らわせながら目を回しつつ頷いた。


「はい。」

「……んじゃ、行くか。」


 今村が歩き出した後、クロノは今度今村に連れられてではなくみゅうと一緒にここに来て写真を買おうと決めた。




 ここまでありがとうございます。


 因みにどうでもいいかもしれませんが今回摘発されたアンリエッタさんは空間能力を持つある世界の女神様ですが取扱い部門においては末端です。今頃本部では奴は取扱店最弱とか言われてるかもしれません。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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