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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十一章〜気分転換で〜
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22.人化しました

「お帰りなさい。」

「……あ、白崎や。俺、所用の為に今から人間になるから。」

「?……意味がよく分からないけど分かったわ……?」


 戦争を終えた後今村がゲネシス・ムンドゥスに帰って来た際にはまだ白崎以外は「幻夜の館」に帰って来ていなかった。


「んじゃ。後よろしく。」


 そう言って今村が部屋から出て行こうとすると白崎が首を傾げて尋ねて来た。


「……またどこか行くの?」

「別荘に行く。襲われると困るからどの別荘かは教えない。あぁ、序でに頼み事だが……俺がいない間の仕事と、奴らが戻って来た時の誤魔化しを頼んだ。」

「……わかったわ……」


 白崎は言いたいこともあったが、負い目があるため何も言わずに今村の言葉をそのまま受け入れた。それを受けて今村は軽く笑う。


「悪いな。今度礼に右腕にドリル付けてやるよ。」

「要らないわ。……それ右手がどうなるのよ?」


 白崎は呆れた顔で今村の提案を拒否した。今村はニヤニヤしている。


「メッチャ回る。オロスアスマンダイド……っつっても分かんないか。まぁこの世界の岩盤位ならクッキーを割るより簡単になるよ。便利だと思うが?」

「日常生活的に不便極まりないでしょ……あなたに貰ったサイコキネシスにも慣れてないんだから……」

「アタッチメントにするか。まぁ付けてみてから感想を聞こう。」

「……付けるのは決定事項なのね……はぁ。分かったわよオーナー様。その代り取り外し可能な物にしてよね……」


 白崎が諦めたのとほぼ同時に彼女の右手が高速で回転し始めた。


「……何、これ?」

「ドリル。まぁ想像してたものと違うかもしれんな。尖ってないし。人の手がそのまま回ってるし。」

「……いや……普通に見てて気持ち悪いわ。何なのコレ。早く元に戻してくれないかしら?」

「まぁ幻術なんだけどね。」


 今村はすぐに白崎の目を覚ましてやって、そして何が何だかよく分かっていない白崎に何の説明もせずにその場を後にした。


「……何がしたかったのかしら?……まぁ考えるだけ無駄よね……言われたことを始めましょうか。」


 白崎はドリル化していなかった自分の手を見て安心して仕事に取り掛かった。












「……さて、術式展開っと。これで一応人間になった後に体に『Ωモード』が馴染むな。そしたらテンションが無くてもまぁ戦いにはなる。」


 今村はそう言って一つ頷いた後に術式を起動して自らの体を何の異能力も持たない人間に変えた。そして、その直後に部屋の中に文様が浮かび上がった。


「あ?一回起動したのに止めにゃあならんか?」


 すぐさま敵かどうかを確認して人間化している状態を解除するかどうか考えたが、出てきた相手達を見て溜息をついた。


「……?あれ?『幻夜の館』じゃないですね……先生ここはどこですか?」

「お兄ちゃんダーイブ!」

「げ、先生今人間ですよね。クロノちゃん止まって!」

「ひとくん危ないっ!」


 文様陣から現れたのは祓、クロノ、マキア、そしてアリスだった。取り敢えず今村はクロノの突撃を辛うじて避けて反撃まで入れたが溜息が深くなる。


「い、痛い……」

「こっちは死ぬとこだアホ。はぁ……俺、今忙しいんだが?何しに来た?」


 今村は流石に人間状態で彼女たちを直視すれば『魅了チャーム』にやられかねないので顔の方を見ながらも全体を見ないようにしながら彼女たちにそう尋ねた。


「クロノはね。お兄ちゃんからご褒美貰いに来たの!ちゃんといい子でお留守番してたし、色々頑張ったんだよ!」

「俺が帰って来た時には居なかったが……」

「あ、う……そ、それはね……変なのがクロノ達を変な所に連れてったの。で、でもクロノお留守番……」

「まぁ頑張ったんだな?じゃ、飴やるよ。」

「え……飴……」


 クロノは今村から渡された飴を見て悲しげな顔をした。今村はそれから無理矢理視線を逸らしてこの場にいる他の面々を見た。


「で?お前らは?」

「先生の無事な姿を見に来ました。」

「先生がご機嫌だったらいいなぁって思って来ました!」

「会いたかったから来たよ!」


 今村は輝く彼女たちを見て目が潰れそうになった。


「……?どうしたんですか?大丈夫ですか……?」


 今村がすぐさま顔を逸らしたのを見て祓は心配そうに今村の顔を覗き込んでその所為で今村の顔は薄くだが朱に染まって、そしてすぐに戻った。


「あー死にたくなって来た。真面目に劣等感が煽られるなこれは。取り敢えず至近距離に来るな。」

「え、あ……すみません……」


 祓が悲しそうに下がるのを見て今村は本日何度目とも知れない溜息をつく。そんなやり取りを見てアリスが質問した。


「で、ひとくんは何で人になってるの?」

「……まぁ、色々あって。」

「そう……お姉ちゃんに何かできることある?頑張るよ?」


 アリスの申し出に今村は黙った。そして何か言おうとして目の前の彼女を見て言葉を飲んで言おうと思っていた言葉とは違う言葉を言うことになった。


「あー……『第3世界の果て(ワールドエッジ)』に行って、【アレ】の様子を確認して来て。」

「わかった!行ってきます!」


 アリスは今村の言葉に二つ返事で頷くと今村の頬に軽くキスをしてこの場から出て行った。その様子を見送った祓が質問する。


「……アレって、何ですか?」

「……イヴって奴だが……あー俺、やっぱ駄目だなぁ……美人に甘いし。」


 今村の発言に今村の目的を探っていたマキアが手を止めてクロノを見、そして祓を見た後にアリスとのやり取りを考えて言った。


「これで、甘い……?先生……人に甘くするって知ってます?アリスさんを……そうですね、軽く見積もって5日くらいの体の良い厄介払いして、ご褒美を期待してたクロノちゃんには黙って飴舐めてろと言って、更には祓先輩には近付くなとか言っておいて……これで美人に甘い。と?」

「甘いな。甘すぎる。姉貴にゃ出る幕無いから引っ込んでくれるのが一番助かると言って、クロノは撫でるで済ませて。祓は強制転移くらいして俺的に普通になる。」

「それならクロノ撫でられたい!」


 マキアが軽く引いた笑いをしているとクロノが黙って飴を舐めて軽く凹んでいた状態から復活して今村の脚の間にへばりついた。


「おぉ……何か卑猥ですね。」


 クロノのくっつき方にマキアが先程の感想など放り捨ててそう言うと今村はイラッと来たので睨んでおいた。


「黙れマキア。撫でる?別にいいが……」

「えへへ……」

「わ、私もいいですか?」

「別にいいが……」

「じゃあ先生!私も!」

「マキア、てめーはダメだ。」


 今村はこの後5分位祓とクロノの頭を撫でることになった。その後拗ねたマキアが面倒だった。





 ここまでありがとうございました。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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