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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十一章〜気分転換で〜
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20.逆進攻

 【ダズルマニアン】。略奪世界と呼ばれるその世界は自世界よりも弱いと見做される世界の中で優秀な世界を侵略することで奴隷を増やし、自らはそれを管理するだけという生活を送る世界だ。


 そんな中で、侵略口と言われる場所に最も近い村がある。そこは侵略軍へ支援を送る代わりに奴隷をいち早く買付できるという場所だ。そこで恰幅のいい商人たちが談笑していた。


「は~あぁ……早く奴隷たちが来ないと俺らも働く羽目になっちまうよ。」

「今度の世界はしぶといらしいな。何でも、大昔の神の使いとか言われてる奴らが戦ってるらしいぞ。」

「はっ!歴史があっても所詮第3世界だろ?問題ねぇ問題ねぇ。それより軍が帰って来る時間にどっちが近いかで賭けをし……お、チッ。ゲートが開いたな。賭けは出来そうに……お、おい……何だアレは……」


 侵略口が開き、時間までの賭けをしようと思っていたのが不成立になったと思った彼の目に入ったのは漆黒の色に染められた何らかの塊の集団。見たことのないそれに驚きの声を上げる彼らの耳にその集団の中で最も大きなものから大音声が聞えてきた。


『ズドゥラーストヴィーチェ!諸君!これまで肥え太ってきた分良い声で鳴いてくれたまえ!それが君らの贖罪だ!』


 そして、これが彼らの最期に聞いた音となった。












「さて、ああ言ったものの時間をかけている暇はないし、悲鳴を上げる暇も与えられんな。」

「どうなさるでありますか?」

「合体する。」

「は?」


 今村の端的な答えに驚きのあまり変な声を漏らすシャルル。だが、その意味はすぐに分かることになった。戦車と思われていた何かたちはこの今村たちの乗っている巨大な戦車に向かって集まって来たのだ。


「え、えぇと……」

「フハハハハ!合体!」


 酔っぱらいはご機嫌に笑って戦車を合体させて巨大な脚が8対の棘々した物に全身が覆われている名状しがたいロボットにした。


「ど、何がどうなっているのかさっぱりであります!」

「知らんでいい。これのモチーフは見たら死ぬだ。あそれ。」


 今村は先程より狭くなっているコックピットの中で密着しているシャルルのことなどお構いなしにボタンを押す。


「ふぁんっ!」

「何だ変態。五月蠅い。」

「し、失礼しましたであります!」

「全く……まぁいい。俺の邪魔にならんようにこう、しがみ付け。」

「し、失礼します……こ、こうでありますか?」


 シャルルは目の前の惨状などお構いなしにドキドキしながら指示通りに今村の膝の上に対面するように座って今村の体に手を回した。


「よし、外に放り出そうかとも思ったがまぁいい……今外に出たら死ぬしな。コマンド入力完了。皆殺し。」


 今村は眼前の惨状もシャルルのことも全部無視してロボットのモニターに何か書き終えると満足気に深く腰掛けた。


「な、何が起きるのでありますか?」

「皆殺し。……まぁ成功するかどうかは分からんが。」


 少し動けばキスしかねない程の至近距離での会話の直後に8対の脚を持つ名状しがたいロボットの棘々部分から黒い何かが噴出し始める。


「……これは何でありますか?」

「うるさいな。」

「むぐ……」


 酔いどれ今村はテキーラを口に含むとシャルルを引き寄せて口で口を塞ぎ無理矢理黙らせて酒を流し込んだ。


「ぷは……っう。」

「黙る?黙らない?」


 口と口を結んでいる銀糸を引きながら反射的に顔を引き戻したシャルルに今村はテキーラの瓶を振りながらそう質問するとシャルルは顔から首まで真っ赤にして首を振った。


「せ、まだ戦場ですので、遠慮するであります。」

「よし、一生遠慮しろ。つまり、俺の前では静かにしろ。」

「む……乙女心の分からない方でありますね……まぁ提督閣下でありますから仕方ないでありますか……」

「はっは。乙女ってお前幾つだよ。」

「そういうところであります!」


 拗ねるシャルルをあしらいながら今村は外の様子を見て頷く。


「うん。よく死んでる。そろそろ神のお出ましかな~?」

「聞いているでありますか!?」

「知らん。出てきた出てきた。あらよっと。」


『非道な方!なぜこのような酷いことをされるのですか!キャッ!』


 この後に何かあるかなと待っていたところに目の前に美しい女神様が現れて今村の行いを糾弾して来たので凶弾を放ってみた。


『……分かりました。言葉も解さないような野蛮な相手では慈悲の与えようもありませんね。死を以て許しと致しましょう。』


 そう言うと女神様は巨大な卍型のオブジェクトを召喚して手に持ち、名状しがたい8対の脚を持つロボットに襲い掛かって来た。


「持ち辛そうな武器だなぁ……」

「……提督閣下もアレと同じような武器をお持ちではありませんでしたか?」

「俺のは持つ物じゃないし。あ、折れた。」


『な、え……?この、【勇敢なる者】様の右腕であられる【代理者】様から祝福されたカールオジーが……?』


 折れた武器を見て呆然としている女神を見ながら今村は武器の名前にさんを付けられていたら負けていたかもしれないと適当なことを考えながら女神に聞こえるように通告を流す。


『あー【代理者】ならさっき殺したよ。ごしゅーしょー様ー。あ、逃げても無駄だよ。殺しは……するけどまぁまだ生かしてあげるから。大人しくしてろ。』

『ひっ!う、うそ……何で……第3世界の野蛮な愚者たちに第1世界の方が負けるはず……』

『まぁ死ぬまでずっとそう思ってればいいよ。』


 そう言って今村は逃亡不可の呪いをかけた後に目の前の彼女用の術式を練り上げる。その間の沈黙に己の身に災厄が降って来ると遅れながら理解した彼女は助命嘆願に必死になり始めた。


『お、あなた、声からして男神ですよね?わ、私何でもしますわ!だからお願いします。助けてください!』

『何でもするなら諦めて術式受け入れな~因みに今から掛けるやつは【遡及禍罰】と【悪夢の祭典】の合わせ技な~効果は俺的に考えるお前の罪を過去に遡って全て追及してその罪の映像を延々と……被害者の視点で見てもらう。『それに提督閣下が万一にも劣情を催された場合には私が相手をするのでありま痛っ!』黙ってろ馬鹿。コントやってる暇はねぇんだよ。』


 女神は中に女性がいるということ、そしてその女性の声の気配は彼女では比較にならない高位の存在であることを悟った。


『あ……あぁ……そ、そうです。あなたが望む物全て差し上げましょう。極上の食事。』

『自分で滅茶苦茶美味いと思えるレベルまでなら自分で作れる。』

『最高の美酒。』

『それも作ってる。各種、蔵単位で持ってる。』

『め、名声……』

『要らんなぁ……『提督閣下の異名は既に全世界に轟いているであります!』もう一回言う。要らんな。』

『と、富を、抱えきれないほどの黄金を……』

『作れるなぁ……もっと希少な金属でもサンプルがあれば創れなくはないし、俺が創れないものって言ったら第2世界の……しかもこの程度じゃ多分存在しないんだよなぁ……試しに訊くけど――――――――――って創れる?』


 今村の言葉は相手に聞こえないようだった。つまり、その情報を知る情報統制のレベルに達していないということだ。


『じゃ、じゃあ、古今東西、ありとあらゆる美女たちを……』

『それをやったら取り返しがつかないことになる。唯でさえ最近は……まぁいい。術式が完成した。さらばだ!』


 今村は術式を起動させてこの世界から出て行った。




 ここまでの読了ありがとうございました。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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