3.鈍感の呪い
「死ね壊れろくたばれ消えろ去ね死ね死ね死んで死んで死んで壊れろ殺されろ破壊されろ死ね死ね死ね死ね死ね死ね壊れろ壊れろ壊れ続けろお前に救いは訪れない壊れろ壊れろくたばれ呪われろ呪われろ殺されろ殺されろ死ね死ね死ね死ね…呪われし災厄の申し子が…貴様14番目の忌み子が…汝に破滅あれ!」
「あっはっは!テメェらがやったことより良心的なことしかしてないんだけどな~」
崩壊した都市の中で血と呪詛の言葉を吐く男。その前にいるのは黒目黒髪、その上に黒狐の耳をたてて歪んだ笑みを浮かべている絶世の美男子だ。最後に大声を上げこと切れた男にその男はしゃがんで声をかける。
「まぁでもね。君に言われなくてももうすぐ自殺に近いことする気だから安心しな。待ってろよ~『全』」
暗い笑みを浮かべて崩壊した都市の中で未だ形を保っている城。それを睨みつけた所で今村は目を覚ました。そして雲の欠片から上半身を起こして伸びをする。
「…あー何か楽しい夢見てたな~…でもあの後テンション下がることが…」
ふと横を見て今村は絶句した。
「…防御力ゼロかこいつ…何でお前がここに…?」
寝ている雪の化身と見間違う白髪の美少女―――祓に声をかける今村。だが彼女は起きない。起こしても面倒なことにしかなりそうになかったので今村は仕方なく自分だけ起きて時刻を確認する。そして嘆息した。
「…うたた寝ですぐに起きる気だったのに外は夜か…」
―――死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね―――
「む…?」
時計を確認してすぐに突如響く低い唸るような声。それは断続的に続く。
―――死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね―――
「あ、そう言えば俺この体じゃ夢見ないんだった。ってことはあれは夢じゃないなぁ多分今俺呪われてるな~」
重要なことを思い出した結果、頭に響く言葉に心当たりがあったので今村は祓を置いてすぐに呪いを吸引する装置の方に向かった。
「…順調だ。後…俺に呪いが来てる問題は世界が敵に回ったってことかな~?さっすが俺だね世界規模の嫌われ者!まぁ俺じゃなくても何の理由もなく負の力を集めまくったらそうなるのか?」
呪いは順調に集まって今村の力になっていた装置にも異常はない。心当たりは外れかと思ったがそこで別の考察を得る。
呪いの素になったのは人の負の感情…恨み、妬み、羨望、怒り、憎しみ、忌避感、破壊願望…そのようなものだ。そんな世界に対しての敵意を一身に集めている今村は世界にとって敵と認定されつつあるのかもしれないと。
「う~ん…まぁいっか。敵認定にゃ慣れてるし。」
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
世界の敵になることをあっさりとスルーすることにした今村だったが声の方はあっさりとしてくれない。辺りの物が振動で震え、軋み始めた。今村の頭の中だけに流れていた声が実際に現世に聞こえ始め、影響を与え始めたようだ。
「あ、これは困る。実験道具高いんだよ。」
「…そう言う問題じゃなくね?仁兄ぃ…」
これには困ったと今村が見えない何かとの戦闘を開始しようとする。そこに突如金髪碧眼の小学生ぐらいの癖っ毛をした可愛らしい美少年が現れた。それと同時に音は止んでしまった。今村は少年の方を見ると片手を挙げ気軽に挨拶した。
「おぉ、ようアーラム。」
「うん。元気そうだね兄ぃ。…じゃなくて、僕の所に危険信号が来たと思ったら何してんの…」
あまりにも普通すぎる今村に呆れる少年。今村は端的に美少年―――アーラムに答えた。
「実験。」
「…ごめん。訊いた僕が馬鹿だったね…で、世界のシステムは直しといたけど…今折角この世界は争いとかないんだからさ、のんびりしときなよ。」
「無理。」
「…もう!じゃあ何?戦争起こした方がいいの!?」
頬を膨らませるアーラムに今村は真顔で返す。
「いや?必要物質揃えたら異世界行くからいいよ。」
「…え?」
「『バルバロス』と『極楽鳥』、あとは『クラーケンキング』か。こいつらが持ってるアレが手に入れば異世界に行くぐらいはできるしね。」
「ぼ…僕が創った世界じゃ駄目だった?兄ぃが寛げる世界にしたつもりだったんだけど…新しく作り直した方がいい?」
アーラムは慌ててこの世の人間が恐れ戦くことを言ってのける。その提案は幸いにも今村が却下した。
「いや。まだ気になる本とかゲームとかがあるからこれはこのままで。」
今村は冷静に、アーラムは薄っすら涙目で無茶苦茶な話が続けられる。
「…帰って来るよね?来なかったらアリス姉ぇに言いつけるから…」
「…めんどくさいなぁ二億年に一回でいい?」
「怒るよ?」
「…じゃあ一億年に一回。」
「少なくとも二十年に一回!これ以上はまけられないよ!」
「え~…嫌だな~だるいし…」
「…姉ぇにこの場所バラすよ?」
渋る今村にアーラムは暗い目線を向けて言ってきた。今村は不承不承といった態で頷く。
「しゃあねぇなぁ…全く。じゃあ異世界行ってから二十年後だな?」
「うん。あ、兄ぃが上に来てね。僕あんまり下界できないんだから。」
「まぁいいよ。じゃ」
「うん。」
アーラムは帰って行った。今村はその姿が消えたのを確認して呪いを吸収する装置に目をやった。
(…一年分は溜まったな~あ~誰か俺を召喚しねーかなー)
「…先生!」
今村が装置に着いたメモリを見ながら片道分なら異世界に転移できるのに…そんなことを思っていると起きたらしい祓が勢いよく部屋に入ってきた。今村は敵襲かと思い祓の方を見て不意打ちに備える。
「…どうした?何か用か?」
「急にいなくならないでください!心配しました!」
「…心配される歳じゃねぇんだが。まぁいいけど。…そう言えば誕生日プレゼントもやってないし、クリスマスプレゼントもあげれてないな。何か要る?」
余りにも予想外の答えを返されて襲撃かと思った今村はバツが悪くなり、露骨に話を逸らした。そんな今村の思いなどつゆ知らず。祓はしばし考え込んで消え入るような音量で言った。
「…先生に…ずっと…傍にいて欲しいです。」
「あ?いいよ。あ、でも今は無理かな~ちょっと待てよ?」
あっけらかんと了承する今村。そんな今村の答えが予想外過ぎて祓は顔を真っ赤にして一にも二にもなく部屋を出て行った。
(ほ…本当に?え…いいの…?そんなに簡単に手に入っていいものなの…?じょ…冗談かな…?)
祓の喜びと驚きは鰻登りで祓は冷静さを失っていた。だから気付かなかった。今村の耳に不自然な呪いの力が送られていたことに…
「フム。新しい先生が欲しいか。まぁ俺だしな。…で、う~ん最近理事長も俺んとこ来ないぐらい忙しいみたいだし…まぁもうすぐ受験シーズンだもんな。向こう任せじゃ駄目かなぁ…俺が嫌われて責務果たせないんだからまぁ補填として俺の方で候補者は探しとくか。」
呪いの力で全く違う。祓が望まないことを聞き取ってしまっていた今村は装置の前でそう呟いた。
ここまでありがとうございました!
アーラムは全力戦闘してアリスから逃げました。頑張りました。
あと言っておくとしたら今村の体の構造は人間じゃなくなったので超長生きです。…というより不老になりました。




