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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十一章〜気分転換で〜
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15.学校見学(仕事の邪魔)

 ぐっすり寝ていたソフィが寝起きに目の前を見ると今村の顔があった。それを見て嬉しくなり笑顔になって強めに彼を抱き締めると彼はすぐに起きた。


「……おはよう。」

「うん!おにぃお早う!」

「本当に早いんだよ……じゃ、俺はまだ寝てから学校に行くから。」


 今村が何らかの透明なよく分からないものを表示させてぼやいた後、ソフィとは反対方向を向いて再び寝ようとするのを見ながらソフィは恥じらいと欲求の間で悩む。

 離れたくないのでこの場で着替えるか、それともやっぱり恥ずかしいので帰って着替えるか。ベッドの上に座って考える彼女が邪魔だと思う今村は何をしているのか気になって振り向く。


「……何してんだ?」

「ん、んとね……ここに服を召喚して……そうだ!」


 ソフィは思い立ったが吉日とばかりにベッドから降りると体中に魔術陣を幾つも創り出し、そしてその上にもう一つ魔方陣を創り出す。


「……転送と転移か……非効率だなぁ……くぁ……」

「!やっぱり出て行かなくてよかった!」


 おそらく着替えのために術式を構築しているのだろうが、今村的に空間の書き換えの方が早いし安全だなと欠伸交じりに思うがソフィはそんな今村の欠伸顔を見て喜んでいる。


「……ま、いいけど。座標間違えたら体に組み込まれるから気を付けろよ~」

「うん!」


 ソフィの言葉を背に今村は毛布に包まりごろごろしてセルフで簀巻きになると室温を低めに設定してある室内でソフィが座っていたせいで冷えた空気が流れ込んだ布団内を早く温めながら眠りに誘われる。


「……おにぃに、ぺたー……」

「おい、重い。邪魔い。さっさと学校に行け。」


 そんな今村を見て上に乗らざるを得ないなと思ったソフィが上に乗って更に不機嫌になる今村。ソフィは楽しいのだが今村の顔を見てすぐにやめることにして飛び降りる。


「じゃ、じゃあ行ってきます。」

「おう。じゃあな。あ、サラスティアさん方には何してるか黙っといて。色々面倒だから。」

「……でも、ママもとっても悲しんでるよ……?……!あ、う、ご……ご、ごめんなさい。絶対言いません……内緒にします……」


 他人行儀に共通の母親の名を呼ばれて心が痛んだソフィは彼女の母親に伝えたいと思っていたのだが、敏感に今村の表情を呼んですぐに撤回した。


「そ。まぁそれならいいけど……」

「……うん。あ、あの、でも、おにぃが元気にしてるくらいは、言ってもいいですか?」

「ダメ。」


 ソフィが項垂れるが今村はきっぱり拒否した。ソフィが言いたいことも考えとして分からなくはないが、どちらにしろもうすぐこの世界での寿命は尽きるため生存報告などぬか喜びにしかならない。


「な、なんで?……なんでなのか、訊いても、いいですか?ママたちとっても悲しんでるし、今でも時々泣いてるのに……」

「まぁその報告はぬか喜びにしかならないからだ。……お。」


 今村はいい案を思い付いた。それに従ってで即興で適当な話を創り上げて今回の家出事件など色々と結びつけることに成功して何か訊かれたらこの話を軸にいこうと決めた。


「な、何かあるの?まだ、なにかあるの?何で?」

「定めだ。ってか、お前いい加減仕事行けよ。そろそろ緑の時間になるぞ?」

「定めって…………あぁうぅ……い、行って来ますぅ……」


 もの凄い後ろ髪を引かれるような顔をしていたがソフィは時間が迫っており仕方がないので転移される。それを見送った今村は今度は深めの眠りについた。












「ガダルナンド先生。今日は校内のことを覚えられたかのテストを兼ねて学校案内をしてもらいたいと思います。」

「……?私に任せても大丈夫なんですか?」

「……言いたいことは分かります……確かに赴任して間もない先生に頼むのはおかしいかと思いますが……先方からのご要望でして……」


 その日の昼、ソフィは指導教員から妙な業務命令を受けていた。


「……わかりました。」

「では、お願いします。」


 訝しげな内容だったが、特に反対する理由もないことなので引き受けることにしてソフィは言われた場所に行って案内する一行を待つ。すると彼女にとって見覚えのある集団がやって来た。


「……え?皆?」

「あ!いた!……ソフィねぇ、昨日どこ行ってたの?家にも帰って来てないし誰かの家に行ったわけでもない。学校にも連絡したんだよ?」


 ソフィが相手を認識したとほぼ同時にその一行もソフィのことを認識して開口一番に昨夜のソフィの動向について訊いて来た。皆、特に男性陣が険しい顔をしている。


「え、お兄様の家に行ってましたけど……あの、私今教師として雇われてるからそう言う私的なことは後でにしないと……」

「それどころじゃないよ!」


 ソフィがやんわり窘めて業務を全うしようとするのを彼女の弟であるエリックが大声で拒絶した。それに応じるかのように男性陣たちも頷く。

 ソフィはそれを見て昨日のおにぃにソフィもそれどころじゃないって言ってたけどおにぃ的には「それ」で済ませられることだったのかなぁなどと場違いなことを考えながら声を落とすように注意する。


「あ、あぁ、ごめん……でもソフィ…アねぇが悪いよ?家族に黙ってどこか行くって。父さんも母さんも心配してたんだから。」

「うん。心配かけたのはごめん……でも、そんなに心配しなくても私強いから大丈夫だよ?」

「はぁ……そういうことじゃないって。ソフィアねぇ美人なんだからもっと自分を大事にしないと襲われるぜ?その兄って奴が誰だか知らないけど、男の家で油断してるとヤバいから。」


 エリックの言葉を聞きながらソフィは今日の今村の言葉を思い出して心配に対してもこんな返しをしてしまうんだなぁ……やっぱり兄妹だから似てるのかな?などと思いつつ仕事は仕事とはっきり言って道案内を始めた。


「……ソフィ、何か嬉しそうだな?何かあったのか?」

「ん?うぅん。何もないよ?それより、ここがアリーナです。ここでは武道とか体育など色々するところで、魔導術式が張り巡らされてるから避難場所にも使われています。」


 道案内をしながらいつもより上機嫌の彼女を見ながら一行は怪しみを深めながらソフィの様子を探り、兄と呼ばれる人物のことをどんどん知ろうとしてくる。それに対してソフィは知られたら怒られる……くらいであればまだいいのだが絶交されると本当に嫌なので何とかぼかす。


 だが、ソフィは身内に対する隠し事があまりうまくなかった。結果、多少相手にはバレることになってしまう。


 すなわち、この前来ていたエルフォードという名前のあの男に対してソフィが恋心を持っているということ、そしてそれがまだ今の段階では通じていないことが分かった。


「……どうする?」

「多少強引な手を使って……」

「相手は魔王と側近を一人で相手取れるソフィ様ですよ?」

「じゃあ気持ちで……」

「あにぃはダメ。だからいい加減私を見る。」

「何でだよ!」

「そうそう。トールは帰れ。」

「だな。」

「……ねぇ、皆……学校見学に来てるんだよね……?私の仕事の邪魔しに来てるんじゃないよね?」


 ソフィの静かな怒りによってこの場は解散となったが、次、学校に召集される日は編入生全員が集められるのでその時にそのエルフォードに釘をさすことに男性陣全員が合意した。




 ここまでお疲れ様でした。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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