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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十一章〜気分転換で〜
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4.乳幼児成長中

(……いや、頭おかしいだろこの馬鹿。これ即行独立パターンだな。何で赤子の食事を一日四食で良いと思ってんだ?働かないと金が無くなるからダメなのはわかるが助産師から貰った金でしばらくはやりくりしろや。)


「……一般のお店で働くなんて、大丈夫かしら~……?……そんなこと言ってられないわよね……頑張らなきゃ……」


 生後3日、今村は取り敢えず母乳を拒絶して哺乳瓶のミルク的な物を摂取しながら色々と意気込んでいる母親の言葉を聞いて溜息をついていた。


「ママ頑張るね。行ってきます。」


 妹様と今村にキスをして出て行く母親。これが虫歯の原因なんだが妹様は大丈夫かね?と思いながら今村は周辺の魔力で浮遊し、ついでに妹様も浮遊させる。


(いくら成長、発達が早い世界でも流石にこの乳幼児期は幽門が未発達だからミルク飲ませた後水平とかにしたらちょっとしたことで吐くっての。はいじゃーひとまず妹様はげっぷしましょうね~)


 魔力体でソフィと呼ばれていた妹の背中をある程度の強さでしばらくぽすぽす叩くとけふっと言う音がしたので魔力を止める。自分の場合は体内に魔力を浸透させている為そのようなことを省略できるので問題ない。


(……さて、次。おむつ代わりの吸収及び常洗浄術がかかってる下着だが……漏れがないように意識し過ぎて締め付けがキツイな。これで湿疹が出来たら怠い。これは水と風の属性分離術を隙間に使って緩めても大丈夫にしておいて……)


 下のことの心配が要らない優れものだが、それに頼りきりだと締め付けなどに問題が出る。自分は見られる趣味もないので保護膜掛けて誤魔化しておいたがソフィは普通に赤子なので素直に締められている。

 見てて可哀想なのでソフィのものに適当なサイズになるように術をかけて疲れたので寝ようとする。


 すると妹様が泣き始めた。


(……この子は早いな。普通泣くのが酷くなるのは生後2週間以降でここだと5日程度のはずだが……半分くらいしか経ってない……まぁ考察より先に原因を探るか。多分不安なんだろうけど。)


 今村は人間の心音に近い周波数を流し安心させることに決めて、ふと最近手にしてみた地球のとある音楽の冒頭部分がそれに近しい物だったなぁ……と思い出してどうせならとそれにすることにした。


 適当に出したスピーカーから音楽が流れ始める。


『…………蝋人形にしてやろうか……』


 周辺住民に聞かれるとおそらくまず間違いなく事件性を疑われると思うので遮音結界は張っておく。

 部屋の中では同じフレーズが何度も繰り返されどう聞いても安心できるような言葉ではないが妹様は泣き止み、そろそろいいかな?と思った今村によってベッドに横たえられると健やかな寝息をたて始めた。


(……マジ働き過ぎだろ俺。別に子ども看るのは過去十回以上やってきたことだからいいんだが……いや、自分も乳幼児状態は初めてだな。心理的に疲れる。)


 日が昇り、今掛けられている毛布では自分は「黒魔の卵膜」を張っているので良いが妹のソフィにはおそらく少し暑いなと、体温調節がしやすいように術を備えておく。


(……後なんかあるかな?まぁ2時間ごとに起きて面倒看てやるか。この世界は他の世界に比べて時間が結構短いから慣れるまでズレが出そうだが……まぁいっか。それより周囲の魔力を合成して栄養価がきちんとしたミルクを作っておかねば俺が死ぬ。)


 自分は飲んでいないが母親の魔素、氣の状態を見るに食費も倹約しているらしいが母乳に直接影響が出るのでやめろやといいたい。まぁそんなことはしないがあの母親がいない間くらいは妹様にも栄養価の高いミルクを与えようと決めてある程度頑張ってから寝た。










(…………ん……?おーおー泣くな~世の中を憂いて我が身を儚み嘆き悲しむのは分かるがこの歳で人生に絶望していたら身がもたんぞ~?)


 今村はソフィの泣き声で目が覚めてまず寝起きに適当なことを言うと自分の空腹状態を見てそんな時間か……と思いながら哺乳瓶に魔合成したミルク粉末を入れて自らの体温を測ってミルクの温度を決定し、37.2℃にすると粉末を溶かして飲み始める。

 勿論妹様にも同様に与え、零したりもされたが食後にげっぷを出させることも含めて済ませておいた。


(……さて、この妹さんは成長が早いっぽいが……明後日にでもなれば首が座るんかね?そしたら寝返りとかに警戒しないといけないんだが……超怠い。)


 健やかにお眠りになられる妹様。しかし、この世界は幼少期の成長が著しいのでここから地獄が待ち受けている。


 この3ヶ月は成長痛、それに加えて髪、歯など様々な物が生え揃って来るのだ。流石にかぐや姫程ではないが3日会わざれば括目して見るレベルではある。


(1ヶ月でゲネシス・ムンドゥスでいうところの1歳時だっけ?そっから緩やか傾向になるが……要するに1ヶ月で身長が1,5倍で体重が3倍近くだもんなぁ……キッツいよな全く……軽く死にたくなるよ。)


 痛みはそれほどでもないらしい。だが疲れる。虚脱感が半端ない。もう遣る瀬無い気分でいっぱいだ。


(……っと。急いで帰って来たな。多分自分の間違いに気付いたな……んじゃ元に戻しておきますか。)


『坊主!お前を蝋人……』


 音楽を切って今村は締め付けも元のレベルに戻しておく。温度管理もやめて母親が出かける前の状況に戻すとソフィがぐずり、泣き始めた。


 それと時をほぼ同じくして母親と知らない人が乱入して来た。その音に驚いて妹様が泣き叫び始める。


(……俺のことは気にせず頑張れ……)


「ごめんね……ごめんね……ママ失格よね……」


 目じりに涙を浮かべながら母親は魔術を使って身体強化して今村とソフィをあやす。胸を吐出するが今村は嫌がるし妹様は既に今村謹製の魔合成ミルクを頂いているのでそうではないとじたばたする。


 それを見て知らない人の方がギョッとしていた。


「は、早いわね……もう動き始めてるの……?うちの子も十分早かったけど流石に15日はかかったわよ……?もしかしたら【加護持ち】かもしれないわ……」

「ヒトシはずっとおっぱい飲んでくれないのだけど……」

「……そういう子もいるわ。」


(……眠いんだがそんなに揺られると吐き気を催す。俺がさっきミルク飲んでたって知らないからって……あ、妹様吐いた。)


 抱える角度が横過ぎたのでソフィは吐いた。知らない人と母親はすぐさまその処理に追われることになるが知らない人の方は首を傾げる。


「ティア、ソフィちゃんにおっぱい飲ませてあげたのって出掛ける前よね?」

「え、えぇ……」

「……まぁ消化が遅い子もいるからそういうこともあるのかしら……?」


 母親さんに対して知らない人はテキパキ行動してすぐに後片付けを済ませて気分悪そうにしている今村の方も引き取って斜めに向ける。


(……眠いから降ろして欲しいんだが。寝たふりでもすればいいか?)


 今村が寝た振りをすると知らない人は今村をベッドに寝かせてソフィを抱え、母親にお話をする。母親が項垂れる中、今村は知らん顔をして結界を張り、眠りについた。




 ここまでありがとうございます!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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