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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十一章〜気分転換で〜
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1.毒日

 その日は珍しく今村が仕事に出てくる時間になっても部屋から出て来なかった。睡眠時間中に侵入されると今村は機嫌が悪くなるのだが心配になった「幻夜の館」の面々は様子を見に行くことにする。


「ですけど……全員というのは邪魔だと思うのですが……何もなくてただお疲れで眠っておられるのでしたらこのまま休んでいただきたいですし……」

「ですね。取り敢えずマキアさんは寝起きにはちょっと向いてないので辞退していただいて……」

「ちょっとどういうことですかミーシャさん?」


 そして色々話し合って今村の部屋に入ることが可能そうな力を持っており、仕事がないクロノが行くことになった。


 それが決まると今村の分の仕事まで行うためにクロノ以外が仕事道具を持って彼女たちの集まる部屋へと移動し、クロノだけ今村の部屋に向かった。


「……あれ?」


 そしてクロノが今村の進入禁止という張り紙が貼ってある部屋の前に行くとクロノは結界がもの凄い適当に張られているのを見て首を傾げた。


「……ん~?……でも、見た目大丈夫だし……?何だろ?」


 遠目に見ればいつもと変わらないのだが変な気がする。クロノは何かあるのかもしれないと少しドキドキしながら今村の部屋の扉を静かに開いた。


「何?」

「ふぁっ!お、起きてたの?だいじょぶ?」


 開けた瞬間にベッドから声がしてクロノは声を上げる。しかしそのすぐ後にクロノは今村の声が変だということに気付き、扉を閉めると結界の状態を昨日に戻してベッドの方まで寄った。


「だ、ふぇ?」


 「大丈夫?」ともう一度聞き直そうとしたクロノを突如襲った浮遊感。クロノが我に返るとクロノはベッドの中で今村に抱き締められていた。


「ふぁ……っ!お、お、お兄ちゃ……クロノ今日まだ朝お風呂入ってない…昨日の夜しか……」

「洗濯板とは……人生か……なるほど、深いな……」

「?」


 今村の良く分からない言葉にクロノは手を回されている首を僅かに傾げて至近距離にある今村の顔を見た。今村の目は瞑っている。


「寝てるの…?」

「いや……やっぱ違う。うん。そう。チューリップは魔王なんだよ。」

「……チューリップ?何で?魔王?」


 今村の言っている言葉の意味は分からないがクロノは至近距離に今村がいることだけで心が温まり心の底から安心していつの間にか眠くなってきたのでそのまま寝た。










「……クロノちゃんも帰って来ませんね…どうしたんでしょうか?やっぱり先生の部屋を一度見に行った方がいいですかね……周期的に眠りの時期なので邪魔するのはあんまり……」

「……?祓さんちょっと詳しくお願いしてもいいですか?」

「え?何がですか?クロノちゃんが行ってから2時間27分1……」

「違います。今村さんの周期の話です。何ですかそれ。」


 ミーシャが祓の発言にもう少し詳しく話して欲しいと言うと、この場の面々が祓の発言に集中し、祓は首を傾げる。


「?2月に一度位のペースで先生って眠そうにするじゃないですか。あの時って先生本当に寝てるらしいんです。あんまり規則的じゃないんですけど何となくわかりますよね?」


 祓の同意を求める声は全員の首を傾げる動作により否定された。


「……え?気付いてなかったんですか?」

「眠そう……あの仁が、か?それも人前で?」

「眠そうにするとは少し違いますけど……いつもとほんの少しだけ違う感じになるといいますか…」

「おわっったぁあぁぁあ~!パパ起きてないんだよね!みゅう行って来る!添い寝する!」


 割り振られていた仕事を終えたみゅうが書類を転送し終えると椅子から飛んで今村の部屋へと向かった。その音が結構うるさかったので祓やアリスも仕事を中断してみゅうを追いかける。


「静かにしましょう?」

「ちょっと五月蠅いわよ?」


 みゅうは一瞬二人を邪魔だから吹き飛ばしてやろうかと考えるがここで五月蠅くすると今村が起きるかもしれないということで止めて今村の部屋の前に行く。


「みゅ?……昨日と一緒…?」


 この扉は第2世界中級以上であればギリギリ分かる程度に毎日少しだけ術式が変わっているのだが今日は変化が見られなかった。つまり、今村は今日まだ起きていないということらしい。


「ちゃんす!」


 みゅうは声を震わせないでそう言い、慎重に扉を開いた。その後に続いて祓とアリスも気配を消して今村の部屋の中に入る。


「……何?」

「あ、起きてたの?……パパ?声が枯れてるけどお水…みゃっ!」


 まずみゅうがローブで絡め取られ、それに続いて祓とアリスもローブで逆さ吊りに遭う。


「んぁっ!な、ぅ…ひゃぅぅうっ!せ、んせ……そこはぁっ!はぅぅっ!」

「ふぁぁんっ!りゃ、ひとくんりゃめぇっ!」

「ぁんっ!く、くすぐったいよぉ……」


 体の隅々までローブで弄られ、艶めかしい声を漏らす彼女たち。ローブはしばらく何か調べていたようだがペイッと全員床に捨てられた。そしてローブは今村の下へと帰って行く。


「はぁ……はぁ…な、何だったの?って……っ!」

「クロノちゃんだけ……ズルい!みゅうも!みゅうもぉっ!」


 アリスが今村とベッドの中で絡んでいるクロノを発見するとその視線を追ったみゅうが騒ぎ出した。それにより今村は目を開け上体を起こした。


「……?人参?何?」

「人参じゃないよ?みゅうだよ?一緒に寝よ?」

「枕は足りてるぞ?」


 今村は睡眼で寝ているクロノをローブで吊るした。クロノは寝たまま起きない。

取り敢えず祓は重要な用件だけ尋ねることにする。


「え、と、お体に不調とかはないですか?」

「体か……まぁ、今日は毒日だし、死ぬかも。あはは。」

「笑い事じゃないよ?毒日って何?」


 添い寝をしようとしていたみゅうの顔が真面目な物に変わる。今村は眠そうに適当に答えた。


「毒日は、俺の体液が超猛毒になる日。これ、俺もヤバい。自分の毒にやられるとかウケる。怠い、寝る。」

「わ、私に何かできます?」


 少しでも力になりたいと祓が申し出ると今村は横に戻って祓に言った。


「何か予想外の行動に出て。そしたら喜ぶ。」

「え、えぇと……!はい!」


 いきなりの無茶振りに対して祓は色々考えて窓から飛び降りた。が、今村はその時点ですでに眠っていた。


「白滝は……デスクワークで、ふらふら……心太と喧嘩。」

「……?白滝とトコロテンを準備すればいいの?そしたら具合よくなる?」

「…………白崎?白崎は、ちょっと、予定がある俺の代わり……そう、俺の仕事の肩代わりを死ぬほどさせてる……うん。半年は、頑張れ……超、ガンバ……あははは。」


 今村はそう言いながら水を出して飲むとその唾液を猛毒化させて強制的に全員を眠りにつかせた。


「安心……薬の、峰打ち……」


 


 ここまでありがとうございます。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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