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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十章~回収~
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17.パントマイム?

「……ん~色々おかしいなぁ……プログラムにアレのオーナーに対する反撃可能水準は防御システムの8割が壊れてからって設定したんだが…」


 今村は壊されていくフェデラシオンの国境の砦の様子をDQ-Ⅲのモニターを通して見ながら呟いた。相討ちになるタイミングとして損壊度80%からの反撃と決定していたのだが現実には70%以前で反撃に出ている。


「……これじゃ自己治癒してしまうな。ん~どうしよっかな~一応自爆用のボタンは付けてみたが、アレはフェデラシオンを道連れにする用だから大概色んなところ影響が出るし……あのまま北上すればいい物を何故か帰って来てるから使い辛いよなぁ……」

「……私はどうすればいいの?」

「戦ってみて生き残った方がこの後も生きるとかどう?何か予定より大分面白くないからやる気なくした。」


 今村は椅子の背もたれに体重をかけ、天井を仰いだ。


「あー面白くない。テンション下がる~もっと『何で!?どうして!?』って顔が見たかったのに何か取り返しのつく範囲で『あっ!命令間違えた!』みたいな軽い顔してんだもん。笑ってたし。」

「……質問、いいかしら?」

「手短にどうぞー」


 完全にやる気なし状態のだれた感じで返事をする今村に白崎は魔法陣を掻きながら考えていたことを訊いてみる。


「あの体って、私のよね?……アレに私の記憶ってあるのかしら?」

「あるよ。若干認識阻害掛けたけど。」

「……じゃあ、アレと私の違いは何?」

「感情。霊体であるお前はある出来事に対しての感情を基に構成されてるが抜け殻のお前さんは記憶は記録として残されてるだけ。強い思念位は嗜好としてプログラムに残ってるかもしれんが……まぁ見た感じ大まかにそこが違うかね。」


 そこで白崎はふと思った。


「……私と、アレは、混ざれないの?」

「混ざりたいの?出来ないことはないけど2分の1の確率で今のお前は死ぬよ?いいならいいけど。」

「……相手に依るわね。因みに、リスクは……」

「お前が今まで頑張って描いてた魔法陣が無駄になるくらいだ。」


 眠そうになって来ている今村。しかし、そろそろあの機械が来る頃になっていると思われるので天井を開けてやる。


「……あ、そのついでにフェデラシオン包囲部隊に出しておいた待機命令を解除しておくか……」


 そんな今村の呟きが掻き消されるかのように空から白崎の姿をした機械が静かにとは言い難い音を立てながら降り立った。


「オーナー。DQ-Ⅲただ今帰還致しました。命令の違反、厳罰に処される覚悟は出来ております。」

「……んじゃ、お前の目の前にいるもう一人のお前と闘って。負けたらお前と言う存在は死ぬ。勝ったら……どうなるんだ?何か前に似たようなもの創った気がするが……あ、そうだ。魔禁機人マジーンにでもなるのか?」


 今村の呟きにDQ-Ⅲが首を傾げて反応する。


「申し訳ありません。マジーンはデータベースに御座いません。マジーンとは何かお教えください。」

「……そうだなぁ…簡単に端折って言うと一定水準の魔術師を禁術で色々して体の一部を機械化するって感じかね。まぁ、禁術でも初歩の初歩だからやろうと思えば人間でもできる。それなのに人間にとっては理不尽な真似が出来る奴だな。」

「そうで……っ!?私!?」


 今村の説明を聞いている間に一枚の紙切れが光ったかと思うとそこにDQ-Ⅲと全く同じ―――とは一定部分に非常な差があるため言えないが殆ど同じ格好をし、同じ顔をした女性が現れた。


「オーナー。これは……?」

「さっき言ったもう一人のお前だ。但し、機械化されたお前と違ってこいつは魔人化してる。」

「……今村くん。勝手に私の手の内を明かさないでくれるかしら?……借り物だとは分かってるけど、一応私の方にも考えってあるのよ?」

「そりゃ悪うござんした。」


 今村が欠伸交じりにそう答えると機械化している方の白崎がムッとした。


「これは、私ではありません。私は留学が終わってからオーナーと、今では恐れ多いですが結婚しようと考えて色々な呼び方を試してみましたが、今村くんは最下位だと決定したのです。一番手は旦那様。二番手はダー」

「行くわよ!」


 これ以上彼女の乙女な部分を暴露されてはたまらないとばかりに魔人化した方の胸が薄…慎ましい白崎が仕掛ける。その動作を見て今村はそう言えばと思い出していた。


「……そう言えばこいつ何か異様に強かったな。蜂須賀もそれで苦労してたっけ?駅のホームで投げられて……」

「「アレは、あの人が悪かったわよ(です)。」」


 今村が一人頷いていると戦っている両者が2人揃って同じことを言った。それはともかくと今村は中学時に白崎のことを好いていた蜂須賀のことを色々思い出したのでちょっとこの状況をうまく利用できないかと画策してみる。


 が、すぐに諦めた。何となく両者揃って相手にしない未来か、戦いの余波に巻き込まれて死ぬ未来しか見えなかったのだ。


「にしても、まぁ結構コントみたいで面白いと言えば面白いな。」


 機材が壊れないように張っておいた結界の中でどちらかが右手を出そうとすれば相手も同じ動作をしており、それを止めるために左手を出して相手も同じ動作をしている。


 双子が綿密に打ち合わせたパントマイムか、初めて見た鏡とずっと戯れているように見えるのだ。


「ん~感情がなくてもそれまでのデータの蓄積が在れば感情がある者と同じような動作を取るのな。前にデータ取ったことあったっけ?」


 今村が過去に行った実験の中で似たようなものはなかったかと記憶に検索をかけていると不意に目の前の動きが止まって何か話し合いが始まったようだ。


(……ん?いや、どちらかの要求を通すのは難しいと思うぞ?何てったって同一の存在なんだし。)


 そんな今村の思考を裏切るかのように目の前の二人は苦笑して、そのすぐ後に少し悪戯っぽい笑みを浮かべたかと思うと手を取って光り輝きだした。


「……?まとまったのか。んじゃ双方の合意だな。半々の意識の共有化でまとめでもしたのかな。」


 それじゃ目の前の人物に関する戸籍、住所録、その他諸々の書類でも作るかと思い書類を出していると光が収束し、魔人の姿の白崎が現れた。


「それじゃ、私のオーナー様。これからよろしくお願いします。」

「おー。じゃ、多分帰ってきた奴らに袋叩きにされるだろうから頑張れ。死なないと良いな?……ん?」


 今村は話を適当にしか聞いていなかったので彼女の言葉の一部に違和感を覚えたがどうでもいいことだと割り切ることにして書類に目を落とした。


 この後、今村の想像通り、白崎は何度か殺されたのでその度に今村の白魔法に助けられる羽目になる。




 ここまでお疲れ様でした。ありがとうございます。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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