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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二章~最初の一年後半戦~
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1.復讐

2章開始です。

「…よし。タナトスをお仕置きするぐらいには『αモード』使えるかな。」


 今村は「幻夜げんやの館」の一室に自分で作った閉鎖空間から出て来るなりそう言った。

 人間を辞めて一か月と少し、今村は閉鎖空間の中などでずっと「αモード」に慣れる訓練をしていたのだ。そしていよいよ自分の爪を加工した挙句に「死神の大鎌」等と銘をつけた男にお仕置きをするレベルに達したのだ。


「さ~てと!まずは何から始めるかな~?やっぱり寧々とか言うタナトスの自称妻と一緒に『双呪の印』付けてやろうかな?」


 「双呪の印」は互いが離れると掛けた呪いによって苦しんだり場合によっては死んだりする呪いだ。因みに今村が面白がって昔作った。初めて「双呪の印」を使った時はタナトス達の思い人―――アリスの前で三人をくっつけて遊んだという。

 そんなことを思い出してタナトスを呼んでいると今村の下に祓が現れた。


「どーした?」

「あの…その…明日…学校ありますよね…?」

「あぁ。残念ながら。…お、来たかな?」


 もじもじしている祓に今村はかなり雑な扱いをして窓の外を見てそう言った。そして今村の勘に違わずタナトスが来た。


「…話って?」

「…突っ込みはなしで行った方がいいのか?」

「…出来れば。」


 来てすぐタナトスに抱き着く美女を見て今村は笑いながら訊く。タナトスは苦々しげにそう答えると話を促した。今村はニヤーっと笑うと笑いたいのを押さえつけて言った。


「明日、12月24日なんだ。」

「…知ってるが…?」


 話が見えないと首を傾げるタナトス。今村は続けた。


「そんな君たちにおじさんがクリスマスプレゼントを上げようと思ってね!『双呪の印』っ!」

「は?ってやめっ!」


 タナトスが状況を理解した時にはもう遅かった。タナトスの背と腹に呪印が刻まれ、寧々の手と胸にも同じしるしが刻まれた。


「仁ぃぃぃいぃぃっ!」

「あっはっはぁ!ざまぁみろ!『死神の大鎌』…さて、言い訳を聞こうか。」


 絶叫するタナトスにローブから出した「死神の大鎌」を突き付ける今村。それでタナトスはすべて理解した。そして逆切れする。


「悪いか!?俺だってお前に名前変えられたじゃん!」

「名付け親で師匠である俺にお前って言うのか?」


 今村の歪んだ笑みの前でタナトスの堪忍袋の緒が切れた。


「今すぐ俺の改名しろぉ!『武威神モード』!」

「うわっ!中二臭っ!…ってほう。一時的だけど『双呪の印』を無効化してるな。」

「昔の俺とは違うんだ!超えてやるっ!寧々離れてろ!」


 寧々を退かして空間から武器を大量に出したタナトスが今村に飛び掛かる。その前に今村は「αモード」に入っていた。


「げぇっ!」

「はっは百極年早い。『かぞごろし 一の型:一禍倒千いっかとうせん』」


 「αモード」に入ってイケメンになった今村を見て大薙刀で切り殺された兵士みたいな声を出すタナトス。そんな哀れな雑兵に向かって今村は一瞬目に六芒星を浮かべて正拳の構えから掌底を打ち込み、寧々の方に吹き飛ばす。寧々とタナトスはその一撃で壁に叩きつけられタナトスに至ってはモードを解いてしまう。


「タナトス様っ!この…よくもっ!」


 静観していた寧々が今村に対して敵意を振りまく。だがそれを今村は片手で制して言った。


「離れるな。死ぬぞ?」

「なっ…」


 壁で折り重なるようにしていた所から寧々が身を起こすとタナトスが苦しみ始めた。寧々は慌ててタナトスを抱き締める。その途端にタナトスは呼吸を楽にした。

 今村はその様子をニヤニヤしながら見ている。


「…役得だろ?」

「…でもっ!タナトス様に何て事を!」


 苦しむタナトスが楽になったのを見て寧々は否定しなかった。まだ納得していない寧々に今村はにこやかに謝りながらわざとらしい説明を加える。


「ごめんごめん。やりすぎたな。あ~これでタナトスは『双呪の印』に三日はレジスト出来ない。しかも神核を正確に打ち抜いて『キャレスタ』打ち込んだから力も出ない…つまりは12月25日まで嫁に無抵抗で抱き締められて守られないといけないってことになる…あぁ迷惑かけることになったなぁ!…そうだ!お詫びにリゾート地を模した閉鎖空間を三日貸そう!そこなら敵もいないし、温泉。常夏の海。なんでもあるよ!」

「…すみません。私あなたを誤解していたみたいですね。」

「ふざけんなぁっ!」


 敵意を一転させる寧々に対し抱き着かれながら猛抗議するタナトス。だが今村にはタナトスの声は聞こえていない。なので生き生きとして付け加える。


「撮影も任せろ!焼き増しして送るぞ!」

「まぁ!ありがとうございます!」

「増やした分アリスさんに見せる気だろ!?」


 その言葉に寧々の表情が固まった。今村はさも今自然に思い出したかのような白々しい台詞を口にする。


「あ、そう言えば俺の拷問室もあるから入ってすぐに『空位変化』って言わないようにね。そっちに入ると一時間は出れないから。」

「…ありがとうございます。」

「ちょっ!おいっ!マジで抵抗できないのに!やめっ…助けてくださいお願いします御大将!」


 タナトスの頼みはもちろん無視する今村。和やかムードを消し去って二人は今村の書いた札が作ったゲートを通って去って行った。そしてカメラの準備をしようと思って今村は祓がいなくなっていることに気付いた。


「…『αモード』解除。あ、もしかしてフェデラシオンに帰る報告だったのか?じゃあ明日ここ開かないって言いに来てたのか。」


 フェデラシオンではクリスマスはとても重要な日で決まって大事な人―――家族や恋人と過ごす習慣がある。ここアフトクラトリアではカップルでいちゃつく日として認識されているが…


「んーちょっと困る。明日は妬みを持つ人がいるだろうからそれを吸収する装置が欲しいところなんだが…家じゃ場所が足りんし異空間から採れるほど強力じゃないんだよなぁ…」


 今村は少し考えることになったがまずはカメラがいると思い出して準備に取り掛かった。







 一方その頃外では。


「…祓君。君はフェデラシオンに…」

「…邪魔しないでもらえます?私はここに残ります。」


 理事長と祓が言い争っていた。


「大公からのお言葉が届いているんですよ。この日は帰って来ても大丈夫だと。」

「…帰って来いと言ってるわけじゃないんですよね?」

「それは…直接は言ってませんが…」

「なら私はここに残ります。」


 祓の拒絶に理事長は切り札とも言える言葉を出す。


「…今村君がどうなってもいいのですね?恋人とクリスマスに過ごせないとなったら許嫁の彼がどういう事をするか…」


 その言葉は途中までしか言えなかった。


「今、タナトス様を一瞬で倒してました。…そんな先生に誰も勝てるわけないですよね。ですから何と言われても大丈夫ですよ?」

「くっ…」


 自信ありげにそう言われてしまっては理事長は言い返せない。実際タナトスの「氣」は感じたし、それを上回る恐ろしい「氣」も理事長は感知していた。その上祓と理事長では元々地力が違う上、身分も違い過ぎるのだ。


「…とにかく。私は先生と一緒にいます。ではさようなら。…来ないでくださいね。」


 祓はそう言って館に戻って行った。理事長は仕方なく体調不良ということにしてフェデラシオンの国家主席―――大公。祓の父親に連絡を入れることになる。






 ここまでありがとうございます!


 この世界のクリスマス等のイベント日はこっちの世界より大分大きい意味を持ってます。土地に依りますけど。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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