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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十章~回収~
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16.機械さんの自己分析

「……さて、白崎。生き返るにあたって幾つかの方法があるんだがいいか?」

「方法……?えぇ、取り敢えず言ってみてくれるかしら?」

「まず一つ目。ぱっとやってざっと済ませる。雑だが早い。次、結構真面目に術式を描く。俺が怠いけどまぁ結構いい感じ。最後真面目に頑張る。」

「……訊く必要あると思うのかしら?生き返らせてもらう立場で偉そうなこと言えるとは思ってないけど訊かれたなら真面目にやってとしか言わないわよ。」

「じゃ、頑張れよ。」


 今村はそう言って塗料と1メートル四方の紙と一枚の術式が描かれた紙を白崎に手渡した。


「……え?私が……」

「やっぱ本人が描いた方が馴染むの早いしな。俺の能力で正当な手続きを略してもいいんだがまぁ、頑張れ。なに、たったの4947337843の線と曲線、それに点の集合体なんだ。軽い軽い。書き順ミスったら最初からだがな。」

「……全然軽くないわよ。」


 白崎が描く前に疲れたような声を出すのを聞きながら今村は機械の体につけたカメラの映像をモニターに映し、白崎のボヤキに応じた。


「たったの。だ。生き物が死んでてそれを生き返らせる代償なんだぞ?俺のオリジナルの式だから供物もなしで魔力で代用してるし、時間経過もその過程もものともせずに復活できるんだぞ?ごちゃごちゃ五月蠅いなら完全に死ぬか?」

「……そうね。…何でいかにも死神っぽい鎌を出したのかしら?描くわよ?」

「なんだ。死ぬのに同意したのかと思った。」


 何の気負いもなく殺されそうな気配を感じた白崎は彼女なりに慌てて魔法陣を描く作業に入った。今村はそれを見届けてモニターに目を戻す。


「さて、心を持った赤子の機械ちゃんは何を思って行動してくれるかな?まぁ赤子といってもある程度成熟してないと見ても面白くないから体に合わせた思考は準備したが……」


(……それって、もしかして……)


 今村の呟きを聞いて白崎は自分の体に合わせたのであればあの機械の行動は彼女が考えうるものになるのではないのかと気付き、そしてどう動くのか考えた所で今村が自分の手元を見ているのに気付いてすぐに作業に戻った。












「あの人は何だったんだろう……」


 機械は非常に困惑していた。以前の自分のことは靄がかかったような感じでしか思い出せないのだが少なくとも任務、命令、実行するための作業の確認以外のことを考えることはなかったと思う。


 しかし、彼女は今、知覚すること全てに対して感想のようなものを手にしている自分がいると認識している。


 空を飛ぶのは気持ちいい。あまり速く動き過ぎると怖い。今までであれば最優先事項の為にキャパシティーを軽くオーバーしていても早く動いていたのだが今は少しスピードを落として動いている。


 任務は成功した。良い事をしたら褒められる。皆が喜ぶ。だから彼女は期待して彼女がいた居場所に帰るのだ。


「DQ-Ⅲ。帰還しました。」


 フェデラシオン全域に張られている結界が近付き、彼女は結界師に自らの帰還と帰国要請を出す。結界師の女は彼女を見て驚きに目を見開いたがすぐに返信を返した。


「本国に確認する。しばし待機を。」

「了解しました。」


 彼女は待つ。しかし、これまでであれば気にならなかったの事にも目が行き、結界付近の町の様子、その中でも子どもたちが遊んでいる様子を見て彼女は笑みを漏らし、任務中だと慌てて引き締めた。


 それを見ていた結界師は冷たい汗を流しながらすぐに連絡を取る。


「っ……本国。こちら自治区国境です。DQ-Ⅲが帰国しました。しかし、装備が我が国の物ではなく町の方を見ては笑顔と思われる物を見せるなど、様子がおかしいです。」

『……ロケナンド様が原因不明の失踪、いや、DQ-Ⅲを軍事演習のために動かすと企てた方々が行方不明となっている。しばし返答を待たれよ。』

「恐れながら提言を許可させていただきたい。おそらくアレは『レジェンドクエスターズ』の手により改造を施されたとようだ。また、それにより町を滅ぼすなどの命令を受けている為笑顔を見せたと考えられる。速やかに迎撃の許可を。」

『……それは、私の一存では決められない。少し待ってほしい。」


 通話が一度途絶える。国境付近の結界師歯噛みした。


(何がロケナンド様だ!あの肥え太った豚の所為でこの国は、王は……何より姫様は完全に別物にされてしまった!)


 結界師の彼女はこの国を出る前に比べて見違えるほど良くなった動きを見せるDQ-Ⅲを前に唇を噛み、血を流しながら同時に冷や汗を流し、一刻も早い本国の返答を待つ。


(姫様はおそらく『レジェンドクエスターズ』の総帥によってあのような体にされた復讐をしようとしているはず……あの屑を出して姫様の怒りを少しでも抑えられればどれだけよかったことか……)


 彼女がロケナンドに内心で怨嗟の声を吐きながら返答を待っていると通話が繋がり直した。


『……こちら本国結界管理室だ。自治区国境軍務官長、迎撃の許可が下りた。速やかに排除せよとのことだ。相手は『レジェンドクエスターズ』だ。何があるか分からない。心せよ。」

「了解。」


 国境の結界師である彼女は速やかに通信を終えると周囲に聞こえるように大声を張った。


「目標は『レジェンドクエスターズ』による改造を受けた侵入者!全員、己が責務を全うし、全力で迎撃せよ!」


(姫様、不甲斐なき我々をお許しください……)


「撃て!」










 何が起こったのか、彼女は分からなかった。そのため、彼女は飛来する物への対処が遅れ、体にいくつもの攻撃が着弾する。


「……え…………?」


 任務は達成した。なのに、何故?


 爆音が彼女の声を、爆炎が彼女の表情を結界内から隠し、一切の情報を互いに遮断する。


(弟。王?褒められない?撃たれる?殺される?任務成功。何で?装甲損傷率46%廃棄処分?成功作、失敗。帰る所。私が生まれた所(・・・・・・・)。安全である所。ここは危険?危険。ならば、逆説的に、ここは帰る場所ではない?)


 その疑念が芽生えた時、彼女は攻撃を初めて意識的に防御した。


(私は誰?Death QeeenⅢ号機。否、製体番号。個別名称は?ニフタ・ネージュ記録の反映――――――認識困難。存在意義、命令の遵守。されど、遵守すれども現在攻撃に遭っている。何故?確認再開。命令の遵守。誰の?旦那様の。旦那様検索。ロケナンド……?記録システムによるノイズ一部解析完了。ニフタ・ネージュの想い……旦那様、今村仁…?不適合。照合……?…?……!確認終了。これより障害物の排除を開始します。)


 瞬間、彼女は全ての攻撃に対して反撃を始めた。


「……私としたことが、混乱で、命令を履き違えるとは…これは、何らかの功を得なければなりません。罪を功で贖う必要があります。」


 その声はすぐに掻き消され、そしてその姿は相手の視界から消え、そして防衛施設はその存在がきれいさっぱり消えてなくなった。




 ここまでありがとうございました。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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