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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十章~回収~
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15.改造中です

「んで、お前さん何か文句ないの?」


 今村は白崎の体を基に作られた機械の内部改造をある程度進めた所で少し休憩に入り白崎の霊体に尋ねた。


「文句……その、子宮の件が…」

「……言葉を変えよう。悪霊に成ったりする予定はない?今ならお得セットつけて大邪霊にして国を亡ぼすことくらいは出来るようにしてもいいよ?」


 白崎が今村の話しの意味を分かっていなさそうだったので今村が軌道修正を入れると白崎は少し考えて今村に訊いた。


「……今村くんって、私が大邪霊になったらどう思うのかしら?」

「それ自体にはなんとも。そうなって何するかによるな。」

「それじゃ……その、この私の目の前にある体が木端微塵にされると今のこの私ってどうなるの?」


 今村は質問に答えるべく白崎の霊体や魂の状態、それと現世との関連を霊視で確認してから告げる。


「今のままだったら……成仏はしないな。何かの未練が強すぎる。」

「あなたに対する未練よ。」


 断言する白崎。今村は分かっていたが自覚していなければいかようにも出来たのだが断言する姿を見て溜息をつく。


「生き返るか?魂があればそれにふさわしい肉体の生成くらい欠伸交じりで出来るが。」

「……?仮にこのままだったらどうなるのか知りたいのだけど……?」

「…………俺の背後霊になる。」


 今村は嫌そうにそう言った。白崎は一考の価値があるかもしれないと少しだけ逡巡したが首を振った。


「どんな体に入れてくれる?」

「多分大して変わらん。お前の心の質に応じるだけ。まぁ俺が個人的に弄ることも可能だが。」


 今村は特に何かした覚えもないのだが何故そんなに自分に執着しているのか分からずに首を若干傾げながら簡易生成で白崎の新しい体の見本を生み出した。


「今村くんと会った頃と変わらないわね…ね、どう……あんまりじろじろ見ないでほしいくらい言わせてほしいのだけど。少しくらい見たらどうなの?」

「そしたらあんまりじろじろ見ないでって言うんだろうが。」


 今村は白崎の体の見本を生み出した時点で機械の改造作業に戻っていた。白崎は溜息をつきながらこういう人だと諦めて会話を続ける。


「言うわよ。そう言うのが楽しいんじゃない。……ねぇ、ちょっとお願いというかなんと言うかその……」

「何?」


 作業の手を止めて白崎の方を振り返ると白崎は彼女の妹に比べてかなり控えめな胸の辺りを指して仮に生身であれば顔を真っ赤にしているであろう表情で言った。


「……ぉ、おっきくしたいのだけど……その、コロルくらい……」

「はっ!」


 今村は鼻で笑って作業に戻った。白崎はその前方に回り込んで抗議しようとしたところで機械の上半身に目が行った。


「ず、ずるいわよ!こんな感じにしてほしいわ!」

「……生身の体に動力部は要らんだろうが……折角俺が造るんだから形にも気を遣わねぇと何かイライラするから右側に色々足して左右を揃えただけだ。」

「だったら私の体だって今村くんが創ったモノよね?」

「……面倒だなぁ…しゃあねぇ。おらよ。」


 今村はクレーマーの白崎の相手を面倒臭そうして空気入れっぽい物を白崎に触れられるようにして手渡した。


「……空気入れじゃないわよね?」

「空気入れで良いんならそれ渡すが?」


 白崎は何らかの道具なのだろうと自分を納得させてそれを持って自分の体の見本の前に戻って止まった。


「……この、針みたいなのってどこに挿す……もしかして……」

「多分、想像してる通りだと思う。」

「……体に入った時、大丈夫なのそれ…?」

「そうだな……俺はしたことないから知らん。」


 白崎は寧ろ今村がしていたらそれはそれで問題があると思ったが取り敢えず意を決してそのささやかな膨らみの突起部分の中央にその針を挿して―――普通に通過した。


「……?手応えがないのだけど。」

「そりゃ霊体針だしそうだろ。肉体的な影響はかなり低い……お前わざわざそこに挿すか……まぁいいけど。」


 白崎の不安な声に反応して今村が振り返ると白崎が微妙な顔をして立っていたのでやはりこいつは変なやつだな…と思いつつ彼女の弁明を適当に聞き流して頑張るように伝えた。


「……聞いてないわね。もういいわ……」


 白崎の方も今村の説得を諦めて空気入れっぽい物を頑張って抜き差しして大きくしようと試み始めた。


 そして30分近くが経過し、白崎が怒った。


「全然大きくならないんだけど!?」

「……そうか。じゃ、無理。あれ可能性を吹き込む物だからなぁ……大きくなる可能性がないんじゃ……」


 今村は手を合わせて目を伏せ、一礼した。


「……そう。」

「まぁそれなりにはあるんだしいいじゃん。AAAとかじゃないんだし。」

「慰めになってないわよ……」


 白崎はとても疲れたように溜息をついた。それとほぼ時を同じくしてめまぐるしく動き回っていた今村のローブが急停止し、壁に道具を置いて元の形状に戻った。


「お、終わった。……あ、事後申告になって悪いが……お前の故郷、焼き尽くすから。」

「……それは、無辜の民もなの?」

「どうだろ。お前の妹に訊いて?因みに俺を殺そうとした計画組には俺が既に刑を執行した。だから俺はもうこの機械を動かす以外は何かする気はない。どうでもいいし。」

「……ロケナンドもよね…」


 白崎が呟いたのを聞いて今村は歪んだ笑みで以て尋ねる。


「旦那がどうなったか知りたいか?」

「あんなのと付き合うくらいなら死んだわよ。……でも聞きたいわ。できれば私が殺したかったから…」

「……まぁ聞きたい理由が口では嫌ってても本当はとかだったら面白そうだったんだが……本当に嫌いみたいだな……まぁ普通のやつらには簡単な刑で『易老不死いろうふし』。因みにこの不死に関しては爆砕されるか消し飛ばされるかしないと解除できない。」


 そして、と今村は続ける。


「ロケナンド君には『易老不死いろうふし』特別バージョン。四肢を捥いでも捥がれた痛みもあればその先でどうなっているのかの感覚までリアルタイムで分かる。まぁ『消滅』の術を使われたり消化されて別の動物の細胞に作り変えられたら別だがな……あ、勿論精神にプロテクト掛けてるから狂えないよ?」

「……そう。」


 色々な感情が混ざった返事だった。それでも自分を納得させようと彼女が目を伏せた瞬間、圧力が消えて空気が漏れる音などが聞こえて目を開けると機械が理性を宿した目で起きて今村を見ていた。


「……?何故、私を、直したのですか?あなたは私の、敵…では?……データの一部に欠損が見られます。目の前にいるあなたは死んでいます。任務の一部の成功を確認。最優先事項は帰還です。」

「そうだな。俺は死んでる。……だから安心してお前のご主人様に褒めてもらうといい。」


 今村は優しげに嘘の微笑みと作って彼女が出られるように天井を開いた。彼女は現状の確認をしていたが最優先事項が達成可能だと悟ると実行に移した。


「疑問の解消はできませんでした。これよりDeathQeeen-Ⅲは最適解を求めて行動を起こします。それでは。」


 記憶の混濁と様々な問題を棚上げにした状態で機械は飛び去って行き、今村はその後ろ姿を見送って呟く。


「Queenのスペルの訂正忘れてたな。発音が変だった。」




 ここまでありがとうございました……

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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