14.改造
「さて、個人的に恨みはないけどアレだし、面白いことしよう。」
今村はみゅうに封印させておいた機械の下へと飛んでいた。この前、死ぬ直前に見た感じでは自分の少し前で剣を止めており、進むどころか止まるだけで体に刺さらなかった距離の為、個人的に何の恨みもないのだが何となく八つ当たりをすることにしている。
「何するの?パパの中ではスタンダードな機械人への痛めつけシリーズ。恐怖を植え付けて痛覚を与えて痛みを倍加し生命力を増大させる薬打って寸刻みにするの?」
しれっと恐ろしいことを言うのは着いて来ていたみゅうで、今村はその言葉に対して首を横に振った。
「いや、こいつ自体に恨みはあんまりないからそれはしない。でもまぁ国全体に恥をかかせて、後これを造った奴にも嫌がらせ。……それとやっぱ殺されたんだしこれには死んでもらうか。なるべくこれが嫌がりそうなやり方で。」
今村はそう言って幾つかあったパターンの中では比較的優し目な物を選択して目の前の機械を持って研究用の屋敷へと飛んだ。
「さて、まずはサーチして御開帳と行きますか。」
様々な機械や工具、それに何かの部品や魔術道具、魔具、呪具、法具など一見しただけで怪しいと思える物が並ぶ中で今村はその機械を拘束具つきのベッドに寝かせて中身を調べた。
「……生体ベース?わざわざ何でそんな面倒なことしてんだあの腐れどもは…いや確かに行動パターンの入力は今のこの世界の技術じゃあんまりできないからそう言う手法もとるのか……?」
サーチしながら今村は独り言を言う。生体反応があるのが気になりその解析を片手間に動力部を探して動力部を探す前に生体反応の解析が終わったのでその結果を見る。そして少し眉を上げた。
「……白崎?何でまた。」
王宮で見た顔だとは思っていたがその時はかなり適当にしか見ていなかった上、魂が雑だったのでホムンクルスの失敗作とでも思っていたがどうやら本物だったらしい。
(ん~どうしよっかなぁ?生き返らせてもいいけど……こっちが動力部か。)
今の今村にとってはこの程度の相手を蘇生する程度であれば財布から小銭を取り出す程度の手間くらいにしか感じない。だが特に生き返らせる意味もないので解体を進めながら考えた。
「ど~しよっかな~……一応知り合いだし何があったか位は聞いといた方がいいかな~でもコレにはウチの最新技術で改修して自我を芽生えさせた上で虚偽情報とを打ち込んで危険な任務をこなしたと思わせ、誇りを胸に凱旋させたところでウチの最新技術で改修された姿を見た祖国の人間に懐疑の念を抱かせて戦闘騒ぎをして自我による苦悩を味わいながら死んでもらおうと思ってるんだよなぁ……」
今村は部屋の中にいる他の何かに説明するかのようにそう言って歪んだ笑みを浮かべた状態で部屋の一点を見た。
「で、どう思う?」
「……色々あって、整理がついてないわ。兎に角、今村くんには謝らないとダメよね。ごめんなさい。」
どうしたらいいのか分からないと言った風に空中を漂っていたそれが今村の声掛けに応じて今村の目の前に舞い降りた。
深雪の様な白髪、きめ細かく白い肌。今村が毎日のように顔を合わせている白髪の美少女とどこか似ている美しく、可愛らしい顔立ちだがこの少女はややキツめの印象を与え、氷のような美しさを示していた。
彼女はここでの名前を白崎菫、フェデラシオンでの名前をニフタ・ネージュという祓の腹違いの姉だ。
「あー何に対する謝罪?」
だが、それはともかくとして今村は何で謝罪を受けたのかよくわからないのでそのことについて尋ねる。すると申し訳なさそうな顔で彼女は答えた。
「……まず、今村くんの指示を聞かないでロケナンドと婚約破棄に臨んだことから始まるわ。…どうしても、本当に私が好きな人じゃない人のことを好きだと言いたくなかったのよ。」
今村はしばし何のことか思い出す時間を要して彼女の懺悔に明るく答えた。
「あーアレ。……あーなんでお前そう言うことするかなぁ?ギリギリの線で煽るスタイルで台本書いたのに。ってか、それで何でその……淫売のボケナンドファックスだっけ?」
「インバイト・ロケナンド・ファエクスよ。Dシリーズの開発成功で大公貴族姓のロケナンドを得た変態。」
「そう、そのロケナンドのことが好きになったわけ?いや、あんまりにもゲテモノ食い過ぎてびっくりしたんだが……姉妹揃って趣味悪いな。」
今村の言葉に白崎は大きく目を瞬かせた。
「……私、アレのことなんて好きになった覚えないわよ?吐き気がするくらい嫌いだわ。」
「ん?じゃなんで結婚したの?」
「……その時点で、私、死んでるわ…」
今村の質問に暗い顔をして白崎は順を追って説明した。
ロケナンドとの会話の最中に不意に意識を失ったこと、気が付けば地下牢で拘束されていたこと、犯されそうになったのでその前に自害したこと。死はロケナンドに秘匿され、体の中から機械化されることで生きているように偽装されたこと。その辺りから自分の体の周辺だけを動き回る地縛霊になったこと。そして月日が流れて今に至るまで。
そして今村はそれを聞いて呆れた顔をした。
「お前、本当に変な所でアホだな。あの監視機は毒物無効化、衝撃反射、斬撃無力化、耐熱、その他諸々付けてたが流石に電源切られたら何も出来ねぇよ。」
「……責任転嫁するわけじゃないけど、教えてくれてなかったじゃない…」
「はっ!点けとけとは言っておいただろ。つーかそういう交渉の場に無防備に飛び込むとかよっぽどの自信がないと無理だろ。その自信ある行動にゃ裏がいる。それがないなら単なるアホだ。お前貴族歴何年だよ?」
白崎は俯いて黙った。今村は解体作業を休めることなく続ける。
「で?他になんかあるの?」
「あ、……わ、私の体が……その、昨日……」
「あぁ、俺を殺した件か。」
今村にはっきりと言われて白崎は霊体なのに泣き始めた。何とか泣かないように気を張っているようだがどうしても抑えられなかったようだ。
「……まぁそんなことよりロケナンドは大概な趣味してるな。何だこれ。どう考えても機械には要らん機能だろ。」
「あ、そ、……あ…ぅぅ……」
「何だ?」
泣いている白崎を無視して解剖を進めていた今村が白崎の下腹部の切開に入ると生殖機能があったのを見て摘出して兵器を入れようとし、白崎が変な声を漏らして止めた。
「その、もうちょっと、色々考えて、配慮とか……」
「あ?要らんだろ。」
「結構大きな問題なんだけど……女の命と言っても……」
「お前死んでるじゃん。ついでにこの体ももうすぐ木端微塵にされるぞ。お前の国の奴らに。」
「でも、ずっと守り抜いたものだし……あ、そう。ちょっと訊きたいんだけどこの体が実体に影響を与えられるようになるってどんな時なの?」
白崎が何か思いついたように話題を変えると今村は面倒な論争を避けるため先に別の場所の改造を行いながら答える。
「あー?そりゃ霊体が実体化するっつったら強い思念とか、未練とか後念動力の素養があった奴とか、あとは魔術。魔法なんかだな。氣もある。」
「あの屑男が私の、その……私の体をそういうことに使おうとした時だけ一部を実体化できたのよね。」
「強い拒否感だろ。別に珍しくもない。」
言い終わったところで今村はこの機械の動力部分の改造を終え、少し休憩に入ることにした。
ここまでありがとうございます。




