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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十章~回収~
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13.その日世界は滅亡した

 一同が落ち着いたのは幼児今村にストレスが溜まり始めて周囲の空間に多大な影響が出始めたころだった。


「……ボクはだっこされるのあんまり好きじゃない。あと、ヒトいっぱいすぎだからじゃま。」

「だって!邪魔な分は出ていこう!」

「うるさいヒト出てって。」


 ということでアリス、みゅう、マキアが幼児の魔術によって外に追い出された。そして残った面々を見た今村は猫状態のミーシャにだけ興味を示すが目の前のお菓子の山に興味を持って行かれ、全員無視して部屋にあるお菓子を食べ始める。その様子を見てクロノが思わず声を漏らした。


「……可愛いなぁ…ね?ね?クロノあーんしてあげよっか?」

「いやにゃい。」

「~っ……」


 口の中に物を入れて喋る幼児今村にクロノは悶えた。今村は変な虫でも見るような目でクロノを観察したが可愛いのに残念な子だなぁ…とだけ思うとすぐに興味を失う。


「ふぅ……おなかいっぱい。ねぇ?」


 いろいろ食べ終わったところで今村は疑問があったので手近にいたクロノに質問することにした。クロノは動くのを止めてキスをしかねない距離にまで身を乗り出して質問に答える意思を見せた。今村は少し引きながら質問する。


「え、と……これ、ホントにボクが作ったの?」


 その問いにクロノは体に不釣り合いな豊かな胸を張って答える。


「とっても美味しかったらそうだよ!美味しかったら祓ちゃんとかアリスちゃんだよ!それなりに美味しかったらここにいる誰かだよ!あんまり美味しくなかったら余所の人が作ったやつだよ!」


 幼児の今村では話の繋がりが見えないのでクロノの次に近くにいた白髪の美少女祓に疑問の目を向けた。


「……え~っと。急いで作ったモノみたいですから少しわかり辛いですけど…多分先生が作った物で合ってると思います。…少し食べてもいいですかね?」

「おなかいっぱいだから全部あげる。」

「わーい!」


 今村の言葉に祓より先にクロノが反応してお菓子を食べ始める。今村はこの子本当に残念だなぁ……と思いながら手近にあったクラウンベリーキッシュを少し食べる祓の方を見る。彼女は顔をほころばせて頷いた。


「私の知らない、この世界じゃない技法を使って何か合成してある風味がしますからほぼ間違いなく先生が作った物です。」

「とっても美味しいからクロノも保証するよ!」


 その言葉を受けて今村は照れた顔をしたが不意に難しい顔になって僅かに泣きそうな顔になった。それを見たサラが何事かと訊くと今村は前置きに敵じゃないんだよね?と言ってから全員が頷くのを「真偽眼」で見てから言い辛そうに口を開いた。


「ボク、半日で大人に戻っちゃうんだって……一応何か、じんかく?って形で大人になったボクの中に残るらしいんだけど…」

「……不安になったのかの?」


 サラが可哀想に思って尋ねると今村は首を振る。


「んーん……別に、ボク、アイツらに復讐することだけ考えて生きてたからそれおわっちゃったし、消えちゃってもいいんだけど……」


 今村の力無い笑顔を見て全員が言葉は違えど待ったをかける。今村はそんなことを言われると思っていなかったようで驚きの顔をしていた。


「……え?なんで?ボク、要らない子だから……」

「そんなことないですよ!」

「そうだよ!お兄ちゃんいなくなったらクロノ死んじゃうよ!?」


 猫形態のミーシャもにゃーにゃー何か言っているが、不思議とサラは黙って成り行きを見ていた。代わりに今村が口を開く。


「……大人のボクが必要なんだよね?だったらやっぱり今のボクは要らない子じゃん。」


 幼い子どもには似合わない諦念などの様々な感情を混ぜ合わせた陰のある表情をする幼児今村になおも猛反論する女性陣だが今村はそんなことよりと切り出した。


「ボク、アイツらにムリヤリ辞めさせられたお料理したい。これだけ美味しい物作れるってわかったんだからボク頑張りたい。」

「そんなことじゃないんです。まず……」

「わかった。」

「サラさん?話がまだ終わってないんですが……」


 そんなことで斬り捨てられる問題ではないと祓が考えを少しでも改めてもらおうとするのを遮ってサラが今村の言葉に頷いた。それにより水をかけられた形になる祓が文句を言い募ろうとするが途中で頭が冷えたらしい。


「……わかりました。お手伝いします。」

「そうじゃの。キッチンが高いから少し改造を頼まねばのぅ。」

「??クロノまだ話し終わってない……」


 この場で祓とサラが考えた内容がわかっていないクロノが首を傾げて物議を醸しだそうとするが猫形態のミーシャが二人が何を考えているのか教えに走った。


「二人は料理を通して自己承認させることで自分の価値を高めさせようとしてるんですよ。」

「ん?んー……?よくわかんない。」


 クロノにはよく分からなかったらしくこてんと可愛らしく小首を傾げたのでミーシャは少し考えて言い直す。


「……簡単に言えば、子どもの状態でも料理上手!ということを自分に教えて自分は出来ること思わせてからこれだけ出来る子はどう考えてもいらない子じゃないよと諭そうとしているんです。」

「……上手く行くの?」

「それは、流石に今の段階じゃ……」


 二人(1人と1匹)がそんな話をしている間にサラが外に出て待機していた面々に事情を説明し、みゅうに今村が料理するのに適切な空間を創らせ、アリスと祓で調味料の調達を行い、ミーシャとヴァルゴとサラで材料の調達を行った。


 そして、舞台が整ったところで料理を開始することになった。外野が五月蠅いという理由で多くは外に出され、祓とミーシャも厳正な審査員の役ということで外に出されて監督はサラだけになった。


「それで、仁は何を作るのじゃ?」

「んー……ハンバーグ!」


 まず、天野菜あまやさいを天牛のミルクで作ったバターで透明になる程度まで炒めるとふと何を思ったのか今村は手近にあったスパイスの匂いを嗅いでその中の1つを振りかけた。


「?何を入れたのじゃ?」

「美味しくなりそうなモノ~」


 今村は無邪気な笑顔でそう返すと続いて魔牛Lv.12と妖豚悪魔王の挽肉(8対2)をカシュリカキルギアスという存在を視認しただけでそれより弱い物であれば即死するという鶏に近い鳥の卵の卵黄を入れて捏ねる。


 そこで今村はまた何を思ったのか決められた調味料以外にも色々気になったモノを入れて行き、更に次の手順を無視して全部一気に材料を混ぜてから焼き始めた。


「き、基本は大事じゃぞ……?」

「……なんかよくわかんないけどこっちのほうがいいきがしたの。」


 それでも一応形は整えられており、焼けば固まるし、食べるのは自分たちだけだから美味しいと多少大袈裟にでも言ってあげればいいか。サラがそう考えた時だった。彼女はかつてない程の飢餓感を覚えた。


「おーおいしそ~」


 今村が匂いに喜んでいる後ろでサラは口から無意識の内に涎が垂れていることに気付く。そして何が何でも、無我夢中で焼いているその肉を食べたいという衝動に駆られた。もう多少中が焼けていなくても構わない。そう思う強い衝動だ。


「ミニバーグ味見しよっと。」


 幼児今村が一つを形作るには少なかった分の挽肉で作ったミニバーグを味見と称して食べるのからサラは目が離せない。


「ん。美味しい~他のも美味しく焼けるかな~」

「大丈夫じゃろ……」

「?サラお姉ちゃん大丈夫?」


 サラはだんだん我慢が限界に達し始めていた。今村の目の前にいるということで何とか理性を保てているが目が離れれば野生に帰る自信がある。いっそ失敗したと言って全部食べてしまいたいが外にいる面々に何と言われるか、それよりも今村がどう思うかが気になる。


「あ、火が止まった。なんで?」

「ここの調理器具は、調理終了を勝手に、知らせてくれるんじゃよ……さて、実食しに外に出ようではないか。」

「そだね~……あ、ボク流の特製ソースがあるんだ。直接見てると緊張するからボク片付けしてから外、出るね?先食べてて。」

「……そうじゃの。」


 綺麗に盛り付けられた10個のハンバーグ。そのうち一つは今村のモノだが後一つが余る。それはお変りしたい人用だと言って今村はサラを送り出した。


「美味しいって思うかな~どうかな~」


 そんな期待を持ちながら今村は独りで食事を摂ると期待と不安が入り混じる状態で外に出た。










 今村が外に出て見たのは崩壊した建物。そして、生き物はいなくなっておりゲネシス・ムンドゥスは滅亡していた。


「……え、なんで?」


 あまりの出来事に幼児状態の今村ではキャパシティをオーバーしており、事前に大人状態で眠気と戦いながら何とか創り上げていた防御陣を無意識に構築して気絶した。


 半日以上が過ぎて戻った今村が『千辺特化異化探知』で半死のクロノを見つけ出すと【白魔法】の真髄を見せつけるかの能力を行使して、クロノを全快させて世界の時自体を巻き戻して、彼女の権限以上の能力を行使して全て戻してから何があったのか訊くとハンバーグの争奪戦で世界が滅んだと言われもう喋る気も失せた今村は更に半日引き籠った。




 ここまでありがとうございました。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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