表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十章~回収~
374/644

11.失敗した

「ガラクタ……何、壊れようとしてるの?まだ、全然……全然……」


 アリスとヴァルゴが今村を刺した機械を嬲り壊し、そろそろ決めて自殺しようかと考えていると、そこに銀髪ツインテールの幼女が飛んできた。


「?何してるの?」


 アリスは無言で自らの後方を指す。みゅうはその先を見てこの人たち失礼だなぁと思いながらその指した方向へとてこてこ歩いて行く。


「みゅうお仕事頑張ったよ!褒めて!やっぱ勝手に甘えるからそれ許して!」

「……ま、いいけど。」


 刹那、目から光を失っていたヴァルゴとアリスが勢いよくみゅうの言葉に返答した声の主の方向を向く。


「さて、そのガラクタ。貰おうか。」

「あ……ぁ…………」

「よ…………かったですよぉ……」


 悠然と進む声の主を見て泣き崩れるヴァルゴとアリス。声の主、今村はそれはさておきという感覚でさっさと自分のやるべきことを並列思考で演算していく。


「……ちっ。あんまりもたんな。みゅう。このガラクタをこの場所から動けないように術掛けて。」

「ん?いーよ。はいっ!」


 何故か目の前で二人が泣いているのを見て訝しんでいたみゅうは今村の指示が聞えると目の前の光景を一度おいて今村の指示にすぐさま従った。その間に今村は自分の体をチェックする。


(……馴染んでないな。こりゃ一回休眠が必要だ……つーか、少ない?前世の死の直前に思ってたよりエネルギー使ってたか?……まぁこれを元手にすれば色々できるし別にいいが……)


 少ないと言っても少し前までの2.5倍くらいは能力値が上がってるのを見て顔をほころばせる今村に鋭い声が上がる。


「パパ!お腹刺されたってホント!?見せて!」

「ん?嫌だ。」

「見るもん!」


 拒否を普通に無視してみゅうは今村のローブの内部の空間認識を行う。みゅうの愛らしい顔が闇に覆われ見えなくなると今村の腹部に怖気が走った。


「離れろボケ。何舐めてんだ。」

「えへへ……つい……でもいじょーなーし!」


 闇が晴れ、通常状態に戻ったみゅうがそう宣言するとアリスとヴァルゴが反論する。それにみゅうが付き合っている間に今村は隣にいるクロノを【白魔法】で治した。


「……え?パパ、今……」


 みゅうは今村が何をしたのか理解して固まる。今村から放たれる白い光の中で陶然としていたクロノはだんだんと現状を把握し始めて、我に返るとほぼ同時に今村に飛びついた。


「お兄ちゃん!」

「あー取り敢えず大丈夫と先に言っておく。それよりか俺、今から忙しいからこの後しばらく好きにしてて。俺は休眠に入る。」


 言いたいことだけ言って今村はさっさと「幻夜の館」に向けて飛んで行く。


(回復促進のためにあれ飲んでおくか……いや、作っておいてよかった。過去の俺流石。)


 飛びながら今村は少し前に作った薬品を飲む。


(これで3日ぐらいを大体半日で出来るようにはなっただろ。体の統合の間に精神だけあっちに飛ばしてあの二人……っ?)


 突然、今村は自分の身に異変を覚えた。そしてそれが何なのか分かると余りの迂闊さに空中滑走を止めて思わず声を漏らす。


「あー……マジか。嘘だろ。何が流石だ。死ねよボケ。」


 苦笑していると「幻夜の館」からサラが飛んで出迎えにきた。今村はそれを見て他人に頼るという選択肢を浮かばせて速攻で棄却した。


「む?どうしたのじゃ?主、体が縮んで……」

「……気のせいだ。後、少しの間休眠に入……あ、もうもたねぇのかよ。……畜生め……いいか?俺の部屋は見に来るなよ?」


 急速に訪れる眠気のような感覚に落ちる前に今村はさっさと自室へと飛び去る。残されたサラは今村が思考能力が早すぎて理解が追いつかず何を言っていたのか分からずに首を傾げた。


「むぅ……戦闘時じゃないのじゃから急に高速で言われても困るのぅ……聞きとれたのは『俺の』と『見る』それと『部屋』ということだけじゃが……」


 サラが今村を見送ってその場に浮いているとそこにアリスとみゅうが勢いよく飛んできた。


「ひとくんは!?」

「パパは!?」


 胸ぐらを掴まんばかりの勢いで両者がサラに詰め寄って来たのでサラは少し仰け反って二人から離れながら今の経緯を二人に話す。その間にヴァルゴとクロノも合流した。


「……俺の部屋と見る。ね。ひとくんどんな顔してた?」

「そうじゃのぅ……何となく少し困った感じで顔を歪めておったの。」

「仁さん大丈夫ですかね~……」


 そうこうしているとこの場所にミーシャと祓も飛んできた。「幻夜の館」で今村の様子がおかしかったので出迎えに行っていたサラに話を聞こうとしてきたのだ。そして各々が今村の現状や何があったかなどを話す。


「その機械、私の手で【魔法】を使って感情を与えた後に痛めつけて粉々にしたいんですけど……多分先生が何かするんでしょうね……」


 いつの間にかマキアもやって来て話に加わって、取り敢えずこの場で結論を出すために話し合った。



















「ギリギリだこの野郎!」


 今村は【口吸いの誓】を過失状態で制約を守る能力がないということを【魔法術式】で解除して無理矢理剥ぎ取ってから叫んだ。


「くっそ、結果的に良かったのかもしれんが『逆行ヲチ水』とか……マジ笑えねぇよ!この状態で…服用量から考えて4歳児だろ?……あーもう。世界が終わらないと良いね。」


 今村の4歳時。3歳からネグレクトを受けて何とか自分で料理をしていたが、周囲の話を聞くにおままごとの領域を遥かに逸脱して食事を作っている自分は料理の天才じゃないのか。と自負して将来は料理人になれるかもと思っていたところ、台の上に載っているのを発見され男らしくないとの理由で祖父に怒られる。


 その結果、親が食事を作るようにはなったが料理は禁止され祖父に武道に無理矢理突っ込まれて才能があるとか言う理由で年上の多い色々な道場へと通わされる。その上、祖父から怒鳴られた両親から育児能力がないと思われたとか言う理由で八つ当たりの暴力を受ける。


 そして、順当に今村は世界を憎んで恨んで破壊したいと望んでいた。それが今村3歳11ヶ月から10歳児の状態だった。


「……幸いと言っていいのか、親どもは一回引っ越してるし年月進んでるから顔も変わってるし守護霊交代で完全に元の人格消失してるから無駄な破壊はしないと思うが取り敢えず部屋は封印して、……そうだな。料理人になれたよ。とでもして未来の俺からの手紙的なやつ書いて料理置いて……」


 言いながらローブを神速で動かし、出来ればこの眠りから覚めた後にも世界が終わっていないことを願いつつ抗えない眠りについた。




 ここまでありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
よろしければお願いします
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ