表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十章~回収~
372/644

9.何故か

「……微妙に何か食べたい気分。お、おでんにしよう。」


 整然とした綺麗な街並み、店は数多くあるが活気はなく人通りも少ない場所で今村はその中の一つの店に入った。


「!【冥魔邪神】!死ね!」

「はいはい後でね。」


 ふらりと入った店で店員に襲い掛かられるのを一蹴して殺すと今村はおでんの具を取って店から出て行く。すると、3人で外を歩いていた数少ないヒト型の生命体とぶつかりおでんが零れた。


「どこ見てんだ死ね!」

「……おでんが。」


 ぶつかったことですでに怒ったその生命体が今村に襲い掛かるが今村は完全無視して零れたおでんの具を見る。


「なんだ辛子か。」

「て、てめ【冥魔邪…」


 殴られたことに対して『復讐法ハンムラビ』で返して今村はおでんの容器の蓋につけておいた辛子を拾わずに燃やして周囲を見る。


 敵意と警戒心をむき出しにした集団に囲まれていた。


「……まだ、大丈夫か。」

「今こそ【勇敢なる者】様の為に皆の命を投げ打ちこの怨敵を滅ぼす時だ!皆!往くぞ!」


 怒号が響き、今村に襲い掛かる。今村は全く動かずにただ周囲を見終えただけでそのすべてを殺し終えた。


「ま、俺を殺すために色々頑張ってるのは無駄だねぇ…慣れない呪術にも手を出して世界一つ丸ごと蠱毒に使っても……それが呪術なら…」

「きさ……」

「人を呪わば穴二つだよユーシアくん。じゃね。」


 殺し終えたその人々の亡骸でこの世界に掛けられていた術式を起動して蠱毒の化物を創り上げると今村はこの世界に現れた【勇敢なる者】にそれを嗾けてすぐさま撤退した。


「許さんぞぉぉおぉおぉぉぉっ!」


 背後にそんな声を聞きながらどっちにしろ許す気ないくせにねぇ……と思いながら今村は次の目的地へと向かう。











「へぇ、のこのことよく来れたね?」

「青春仕立ての甘苦しいツェペラシィーノ!」

「うんまあぁぁあぁぁぁあぁぁっ!」


 今村がその場所に到着したと同時に彼は目の前にいて、今村を攻撃するモーションに入っていたが今村の手に持っていたお菓子を前に出されて動きを止めて叫んでいた。


 瞬間、幾つもの攻撃が彼の身にクリーンヒットするが彼は全く動じない。


「さて、犯しの時間だ。」

「きゃっほー!」


 今村は端的にそう言ってその世界に大量のお菓子の形をした神殺しの毒物をばら撒くとその場から立ち去った。


「ぐ、な、何気に存在値を削って来る強力な感じだね……だが、それでもお菓子は食べる!」


 彼はそう言って超毒物だが代償として美味しさを手にしてあるお菓子類を貪り、ついでに攻撃側でも食い意地の張った者が何名か脱落するもしばらくは一方的な攻撃の時間となった。












「まぁ、一応こんな所でいっかね。しばらくは大丈夫だろ。」

「お兄ちゃん何してたの?」

「色々。」


 今村が元のゲネシス・ムンドゥスに戻って来るとクロノが一も二もなく飛びついて甘える。原神相手の神速の行動を取っていたので疲れた今村は島の海岸に作ってある椅子に腰かけて少しだけ休憩する。


「……?何か来るな。誰だ?」


 ヴァルゴに甲斐甲斐しく世話をされ、クロノに心配されているとフェデラシオンの方から極々弱い敵意を持った反応が飛んできた。それを感知した今村は速度などを視て笑った。


「確か俺らを殺すとかいう意味でデスクイーン。略称ナンバーDQ-ⅠとⅡとかいう兵器だっけ?成程、納得いただけなかったと。」

「壊します~?」


 ヴァルゴが提案し背中に純白の羽を生やして戦闘態勢に入るが今村が立ち上がってそれを静止した。


 そして突如として腹部に異変を感じる。今村は反射的に避けようとして―――


「あ?」


 何故か、それに失敗した。


「……え?」


 間近でそれを見ていたクロノは目を疑う。彼女と今村の目の前にはフェデラシオンで見た顔が、剣の柄を握り今村の腹部を剣で以て貫通させ、無表情で返り血を浴び剣を抜いたのだ。


 何故か、全ての敵意に対する反射能力を持つ「復讐法ハンムラビ」は発動していない。


 何故か、この世界の技術レベル如きでは一切傷をつけることすらできない今村の体はそれをあっさりと通している。


 何故か、外敵に対して猛毒になる彼の体液は剣を一切溶かすこともなくただ流れるだけだ。


 そして何故か、いつも遮断してあるはずの痛覚が存在し、クロノの術式を弾いて一切の治癒を許さない。


 灼熱感を全身に巡らせる傷口の痛みを感じつつ今村はそれでも嗤った。そして急に冷静になって呟く。


「マジ…か。はっ……さっきの所為…か?」


 先程、蠱毒の世界で言った言葉が言霊になり、発揮してしまったのか。そんなとりとめのないことを考えながら今村は倒れ、そして死んだ。


「う、そ…?」

「勝率、不可思議分の1より涅槃寂静まで上がります。【神殺しの凶刃】が外的要因により【ナニカ】に変貌しました。これにより自我を失い、性能を兆倍まで跳ね上げます。時点標的クロノ。成功時における勝率の上昇40分の1。」


 現実を受け止められないクロノは今村を刺したその剣で突かれた。痛みと先程の光景を受け止めキレられなかったクロノはそのまま気絶してしまう。


「クロノ捕縛成功。ロケナンド様の下へ。……外的要因により離脱不可能。問題の解決を図りりrrrrr……」

「壊れやがりましたねこのポンコツ……とりあえず惨たらしく分解してやりますから逃げないでくれませんか~?」


 返り血が無表情で美しい顔に映える彼女。しかし、その目からは人情的な光は勿論のこと、機械的な光すらも失い一目で暴走を始めたと分かる動きを見せ始めた。


「確実に、殺します。」

「tttttうじょおおおおおぉseeeeen……不可の……miもーぉぉおぉぉおぉ」


 不明瞭で何を言っているのか分からない言葉を言って機械の彼女は不意に姿を消した。結界内にいることは分かっているがヴァルゴはその動きを掴めずに歯噛みする。


「イライラさせてくれますね……本っ当に!」


 ヴァルゴは苛立ちをぶつけるかのように今村とクロノに配慮して全方向への攻撃を解放する。しかし、それは何の意味も見せなかった。


「あ゛ぁあぁあああぁぁぁぁっ!」


 更に怒りを掻き立てられるヴァルゴが叫ぶ中、クロノは失っている意識の中で死んでしまった今村に尋ねていた。





(お兄ちゃん…何でお兄ちゃんの前で止まった刃に向けて進んで、自分から刺さりに行ったの……?)


 と。




 ここまでありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
よろしければお願いします
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ