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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十章~回収~
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8.げぇむ

「どう?」


 今村は景色がいいこの別荘で少しだけ特殊な場所にある部屋の個人モニター前に座って自分そっくりな傀儡を操作している彼女たちに向かって尋ねた。


「……まぁ、それなりには動かせますけど…」

「まぁ遅いし弱いよなぁ?10万分の1スケールだし。」

「というより何で私だけ裏切り者の役なんですか~?嫌なんですけど~」


 海岸で戦っている組は言い辛そうな顔をして今村にそう返す。そんなことを言っていると不意にアリスが呟いた。


「あ、何か動けない…あぁー負けた。……それよりひとくんにはお姉ちゃんがこういう風に見えてるの?」


 モニター内で傀儡の顔に傷をつけられて仕様で憤激し動けなくなったところをやられたアリスがモニターにリンクしてある黒い棒を手放し、今村に尋ねると今村は首を振った。


「いや、姉貴は10万分の1のスピードでも音の10倍速のチートキャラだからハンデ付けとかないとゲームバランスが悪い。」

「……そうじゃなくて、跪きなさいとかあんまり言って…」

「音声に関しては思考をそれっぽいテンプレキャラの台詞に当てはめた。でも中々似合ってると思うぞ?」

「そう?じゃあ今度…」


 アリスの言葉が最後まで言われる前に扉が開け放たれた。そこから現れるのはボロボロになった服を纏い、深手だけを癒してここまでやって来たモナルキーアの彼女たちだ。


「ようこそ。」


 今村はその客人たちを笑顔で迎え入れる。その音が消えるよりも早く彼と客人たちの間に2列になって6人の美しい女性が立ち並ぶ。その顔を認識した瞬間、客人たちはその神々しさに当てられ物も言わずに跪いた。


「あ、少しキツイか?んじゃ保護しよう。」


 今村の一言で彼女たちは立つことが可能になるがその瞬間に彼女たちの武器は音を立てて粉々に砕け散った。


「な、あ?」

「さぁて……一応言っといたよな?手荒い歓迎しかできないって。それでも来たんなら何か用があるんだよな?言ってみろ。」


 持っている武器どころか隠している武器すら失って今村の殺気を浴びる彼女たちは間抜けな声を漏らすことしかできない。仕方がないので今村は徐々に殺気をゆるめた。


「だ、だだ…ダニエルを、かぇし…」


 大分弱めた所でメアリーが何とか震える声で不明瞭ながらに言うことに成功したが、今村に睨まれると身をすくませてその後の言葉を連ねられなかった。


「返す?何でだ?本人も認めている上、サービスも受け取った後に一方的な契約破棄が許されると思うのか?今なら、まだ寛大に尻尾巻いて逃げるのを許可してやるが……退かなければ、分かるな?」

「ぁ…ぅ…」


 怖い。メアリーの心中は恐怖一色に染め上げられる。この男の前では息をすることすら憚られ、反抗などもってのほかだと本能が全身に警告を鳴らす。


 だが、それでも彼女は言った。


「ぉ、お願いします……他のモノなら、何でも……ダニエルだけは…」

「ん~……じゃ、王女殿下ども。テメェらが異触獣の慰み者になって愉しませてくれるならいいよ?」


 メアリーの覚悟を前に今村は薄く笑って指を鳴らすと彼の右隣に眠っているダニアンが出現して浮き、その逆側に嫌悪感をそそる脈動する肉の塊が触手を振りまきながら現れた。


「どうする?」

「あ、う……」


 メアリーは怯えるかのように後ずさる。そのほっそりとした足首を肉の触手が掴み、あまりの嫌悪感にメアリーは情けない声を上げる。


「待てこのド低能が。」


 出て来ていた肉の触手を燃やして消し飛ばすと肉の塊本体が奇声を上げる。それを聞いてメアリーは更に不快感を増したが目の前でより酷い光景が広がっているのに気付く。


「あっ!」

「燃やされた分だけ回復しようってしてるな。このままじゃあのモルモット食われて死ぬ。」


 今村を挟んで向こう側にいるダニアンに目掛けて触手が蠢き、更にそこから粘膜が滴っているのを見てメアリーはそれを止めに入ろうとするが今村の前に並んでいる彼女たちに止められた。


「と、通して…ダニーが…」

「何とか扇情してあの肉塊がお前を犯すように仕向けないとな。幸か不幸かアレは食欲より性欲のが強い。頑張れ~」


 気のない声で今村は少し下がって全体を見渡している。モナルキーアの面々はダニアンに掛けられている体液により服が溶けて行っているのを見て覚悟を決めた。


「お、脱ぎ始めた。」


 今村は慣れない動きでありったけのいやらしさを込めて頑張って誘惑しようとしている彼女たちを見てくつくつと笑う。そしてマジか~と呆れたかのように天井を見上げて呟くと爆笑し始めた。


「……な、何が?」

「99.997%。」


 今村の哄笑に驚き呆気にとられて動きを止めたメアリーたち。そこに触手が向かうがそれは消し飛ばされた。序でに本体まで消し飛ばされる。


「『確率視』で視たあんたがそこで寝てるダニアン以外の誰かと結婚し、そしてその国を傾かせる確立だ。あー人の愛っていいねぇ?楽しいもん。あはは。」


 この場の誰もが状況も今村が言っていることも理解できないままだが今村は続ける。


「良いねぇ良いねぇ。やっぱり他人の恋愛は何にしても見ていて面白い。報われない恋、終わりに向かう狂愛。目の前で行われているこの恋愛だって俺から見れば何でもアリだ。それが冷めるのは当然だが終わらないものこそもっと愉しいものだ。それまで見通すのが傍観者。特に、Ture Endの確率が低いほど面白い。君たちには良くできましたのチェックを上げよう。」


 メアリーたちの直線状にチェックを入れると彼女たちは服を着させられていた。それも王族である彼女たちでも見たことがない程の美しい物だ。


「さて、起きろこのタコ。」

「ふぎゅっ!」


 何が何だか分かっていない面々を放っておいて今村はそれより何も知らないダニアンを空中から落として足蹴にして起こす。


「え?あ、え?水着は……」

「……まぁ、うん。お前……後でシバかれると良いよ。お迎えだ。帰れ。」


 状況は良く分かっていないが今村の前にいる女性陣を見て顔を赤らめながらモナルキーアの女性陣の方に向かうダニアンを見送って今村は「幻夜の館」にいるミーシャに連絡を入れる。


「手筈通り。」

『はい。嬉しそうですね?何か良い事ありました?』

「まぁね。ここの所あんまり見てなかったから……んじゃ、切るぞ?」

『そうですか。今村さんが嬉しそうなら私も嬉しいです。お早いお帰りをお待ちしていますね。失礼します。』


 通話を終えると今村はアリスに巻物を渡してフェデラシオンへと直行し、書面通りに動くように、みゅうには「幻夜の館」に一度戻ってミーシャから頼んである書類を貰ってアリスとフェデラシオンに合流するように、祓とマキアにはミーシャと事業交代をするように言った。


「んで、ヴァルゴとクロノ、それにマキアはこいつらの面倒を看ろ。」

「え、あ。はい。」

「俺はテンションがある内にちょっと用事を済ませて来る。」


 そう言って今村はこの場から離脱し、それを合図にしたのかこの場の「レジェンドクエスターズ」たちも行動を開始した。




 ここまでありがとうございました。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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