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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十章~回収~
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7.侵入者ですよ

「来ましたね~」

「んじゃ手筈通りに。」


 フェデラシオンとの謁見が終わった夜に今村が3分で造った島の別荘で寛いでいると島に誰かが入って来たのを感知して今村の下にヴァルゴがやって来た。


「わかりました~」


 今村の言葉を受けてヴァルゴはすぐに出て行く。それを見送って今村は意地の悪い笑みを浮かべながらヴァルゴに言われてやって来る面々に指示を出し、それを終えると独りごちる。


「さて、どうなるかなぁ?」


 彼は文字通り目の色を変えて島の中に見えるぼんやりとした薄い氣の流れを見下ろしながら背もたれを軋ませた。










 頼りない星明りの下、島に降り立ったモナルキーアの面々は潮風を感じてそこが海にほど近い場所であるとすぐにわかった。


「……ダニーは大丈夫かな…」


 ぽつりと呟いたのはメアリーだ。彼女はこの島から感じる重圧の所為で破裂しそうな心臓を何とか押さえつけながら不安をかき消すかのように呟いた。


「まだ大丈夫ですよ~」


 幼い声が彼女たちのいる海岸に響き、メアリーの鼓動が一際高鳴った。気付くと目の前に転移方陣を渡してくれた空色の髪をした美幼女がにこやかに立っている。


「あ、今の話は…」


 メアリーの縋るような声にヴァルゴは首肯し、別荘の一室、妙に普通の壁から出ている3階の部屋を指して言った。


「あなたたちの探している人はあそこにいます~。ですけど向かうのであればもう戻れませんけどいいんですか~?」


 ヴァルゴの言葉にメアリーはほんの僅かな時間だけ逡巡するが力強く頷く。それを見てヴァルゴはメアリーを腰砕けにするような可憐な顔で微笑み、言った。


「今回の仁さんはらしくなかったですしあなた方を少しだけ手助けしますよ~」


 間延びした口調だが、メアリーの護衛を務める大柄な女性はその幼女が自分では計り知れないほどの強さを持っているのを本能で感じており、心強い味方になるとメアリーに進言した。

 メアリーが忠臣の言葉を聞き入れている間にヴァルゴは続けて言った。


「ですけど多くの障害がありますから気を付けましょうね~?あの時仁さんについて来ていた方々は侵入者に気付いてますからもう「侵入者ですね?」…」


 ヴァルゴが言い終わる前に彼女たちの前には美しい、女神。この世の物とは思えない美貌を持った白髪の美少女が冷たい視線を以て彼女たちを見据えていた。


「祓さん……」

「ヴァルゴさん。あなたには失望しました……先生を裏切ったこと、後悔して死んでください。」


 白髪の美少女、祓がそう言い終わると波が意思を持ったかのようにうねり、蛇の様な姿を持ったかと思うと鎌首をもたげてヴァルゴ達へと襲い掛かった。ヴァルゴは風を操りそれからモナルキーアの面々を守ると声を大きく出した。


「行ってください!」


 呆然と見ていた彼女たちだが、ヴァルゴの声に弾かれたかのように我に返るとモナルキーアの面々はすぐさま浜辺を駆けて別荘へと入って行った。


「……行きましたね~」

「えぇ。では……」


 激しい嵐の音が、浜辺に響き渡った。











 別荘へと向かうモナルキーアの前に、黒髪の闇の様に深い黒色のゴスロリドレスを身に纏った美童女、そして銀髪ツインテールの純白のドレスを身に纏った美幼女が別荘のエントランスで待ち受けていた。


「……え、と?侵入さゃっ!」

「排除します。」


 一瞬たりとも気を抜けない中で銀髪の美幼女が突出してきた。大柄な女性が身構えたその手に運よくそのツインテールの美幼女の蹴りがヒットして彼女の手が跳ね上がる。


「っっっ~そのなりでなんて重い……」

「次で…っ!」


 銀髪の美幼女は着地と同時に大柄の女性に飛びかかろうとして藍色の髪をした妖艶な美女に阻まれ、壁に叩きつけられる。黒髪の童女が藍色の美女を睨んだ。


「よくもみゅうちゃんを!」

「あら、お二人とも大人しくして頂けるかしら?主様より命令よ。『新しい実験道具が手に入ったんだ。お前らは免職クビだ。』と。悪いけど死んでくださらない?」


 童女と幼女は世界が終わったかのような顔をして時が止まったかのように動かなかった。いや、動けなかった。


「う、そだ……」

「本当よ?だからさっさと……」

「嘘だ!」


 黒髪の童女が妖艶な美女に襲い掛かる。モナルキーアの面々は見ることは愚か反応すらできない高速の動きだったが妖艶な美女は眉を吊り上げ、どこからともなく出した鞭を振るい、その童女を叩き落とす。


「はぁ…物わかりの悪い子ね……」

「それ……本当にパパが……?」


 銀髪ツインテールの美幼女が震える声で妖艶な美女にそう言うと妖艶な美女は嗜虐的な笑みを浮かべて頷いた。


「そうよ?あなたたちの大事なお・と・う・さ・ま。の台詞よ?」


 挑発に乗った銀髪の美幼女が意味をなさない声を上げながら妖艶な美女へと突撃する。その様子を見ていたモナルキーアの面々は今の内にとばかりにヴァルゴが指した部屋がある上の階へと駆けて行く。


「…酷いですね。」


 小柄な女性が呟いた。走りながらだがメアリーが応じる。


「……さっきの子どもたち?」

「えぇ…あの言葉が正しければあの男に実験道具扱いされて、不本意なまでの力を手にして人生を狂わせて……」

「!何か来る!」


 話は中断だとばかりに大柄な女性が二人の会話を遮り、何かの襲来に向けて警告を飛ばす。彼女の警告が響いた直後、彼女たちが進んでいた道に亀裂が走る。


「避けられたわね……まぁいいわ。跪いて、死を受け入れなさい。」

「「「っっっ!!!!」」」


 酩酊させるかのような美しい声とともに現れたのはまさに絶世の美少女。神々しさを纏った金髪の美少女がレイピアを片手に彼女たちを待ち受けていた。


「呆気ない。その程度の覚悟でここまで良く来れたわね。」


 冷笑を浮かべる絶世の美少女を前にモナルキーアの彼女たちは言葉一つに逆らうことが出来ずにその場に跪いて頭を垂れたまま動かない。いや、動けない。


「ひ、め……」

「あ、が……」


 迫る、レイピア。風を切る音が近付き、彼女たちは顔を上げずにそれが近付いて来るのを肌で感じた。


(動け、動け……)


「動け…私は、まだ何も……」

「生意気にも抵抗してるの?」


 至近距離で声が聞えた。脳髄を蕩かすような甘い声、思考に靄がかかるその甘く心地よい香り。それらを意思の力で捻じ伏せて彼女は立ち上がり、そして攻撃の一手を繰り出す。


「うっ…」

「解けた!」


 狙い違わずその攻撃が目の前の絶世の美少女にぶつかる前に彼女が下がり、そしてモナルキーアの面々は体の自由を取り戻した。


「……小賢しいわね。」

「ダニアンを、返してもらうわよ。」


 侵入者3人は戦闘の意思を目に宿して絶世の美少女と対峙した。




 御来訪ありがとうございます。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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