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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第二十章~回収~
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5.謁見のようなもの

 謁見前、モナルキーアの面々が大きな溜息をついていた頃、今村に頼んで祓は二人きりの状況を作ってもらい二人きりで話をしていた。


「……まずは、先日から何度も言ってますが黙っていてすみません。ご迷惑をかけることになるかと…」


 まず、祓は昨日まで自分が王族であることを黙っていたことを改めて謝罪した。今村の方からすればどうでもいい上よくあったことなので別に気にしていないが正直何度も謝罪されている方が気になる。


「何回もしつこく謝られた方がイライラする。」

「わかりました。先程ので最後にしておきます。……これから私は少し、王に対してあの……色々と言うと思うんですが…」


 祓が歯切れ悪くそう言うのを今村は笑いながら流して祓の綺麗な白髪の頭に手を置いた。


「存分にやれ。戦争になっても構わん。お前にとって俺は先生らしいからまぁ責任位はとってやるよ。家庭訪問としゃれ込もうか。」


 今村は外から近づいてくる気配を感じて祓から手を降ろす。祓は少し残念そうにしていたが重厚な扉が開いてフェデラシオンの兵が入って来る頃には今村がいない場所で仕事をしている時の無表情な顔に戻っていた。


「謁見の用意が済みました。ではコロル様はともかく、今村様。ネージュ国王にくれぐれも粗相のないようにお願い致します。」


 今村と祓はその言葉に続いて部屋を出て行った。











「これよりモナルキーア名代メアリー・モナルキーア第1王女様とフェデラシオン国王……」


 始まりの挨拶だけで5分を要したのでこの時点で今村は大分やる気をなくして人間には見えないように術式を施した本を宙に浮かべて自分も相手に見えないようにした状態で「雲の欠片」を浮かべて寝転がった。


「はー……暇だな。アレだ。」


 表向き、モナルキーアとフェデラシオンの謁見だが実情としてはレジェンドクエスターズによる両国裁判の様なものだ。なので、今村についてきた面々は姿を魅せて・・・術で創った机と椅子のセットに並んで座っている。


 そんな彼女たちに怯える場を見降ろしながら今村は取り敢えず祓が何かする素振りを見せているのでそれを待つ。ただ、それを待つだけと言うのは退屈なのでこの場にいる面々の心を読むことにした。


「まずは国王とか言ってる虚ろな王様から~……うん。エロエロですね。このおっさん幾つなんだろ?『神核』入って何かちょっと特殊例になりかけてるとはいえ実の娘まで犯そうとか正のニンゲン・・・・・・で考えるかなぁ?」


 まぁそう言えばこの世界は自分の望む世界の反映かと思い直してカオスな物を好む時の自分ならあり得ないこともないかと割り切った。


「まぁそれは置いといて。……おう、置いとけねぇのか。」


 この場にいた面々、その中でも男性陣は大体がレジェンドクエスターズの女性陣に魅了されていた。いや謁見中で国の一大事決めてる最中なのに仕事しろよとか思いつつ、その中でもどす黒い感情を持っている人物を見て今村は口の端を吊り上げる。


「面白そうなのがいるじゃねえの。……まぁ仲良くはしたくねぇけどね。」


 そこでふと何となく今村はそのどうでもいい男に極々僅かな間だが何か見覚えがある気がして記憶に検索を掛けた。


「ロケナンド……?後なんだっけ……?あ、白崎だ。あーあー。そうそう。そう言えばそうだった。」


 かつて、中学の時の知り合いの為に調査して完全に無駄にされた情報を収集した時の人物だ。それで思い出したがフェデラシオンの国王の近くの席に彼の知り合いである白崎、フェデラシオンでの名をニフタ・ネージュが座っているのに今更気付いた。


「……?いや、流石に興味ないからって今更気付くってのは……ん?」


 彼女に気付いて、そして彼女を見てから今村は違和感を覚え、注視する。


「……あれ、白崎じゃねぇな?いや、白崎だが……ん~魂が死んでるし肉体の殆どが機械だなありゃ。何があったんだろうねぇ?機械大好きな夫に自分尽くしますよのアピールかな?」

「はっ倒すわよ?」


 今まで一言も口を挟まなかった座っているだけのニフタが急に凛とした声を出して変なことを言ったので周囲の注目が一斉に彼女に向いた。特に、ロケナンドの驚愕ぶりは凄かった。


「妻よ。どうかしたのか?」


 ロケナンドはだみ声でニフタにそう尋ねるが、当の彼女は無表情に何でもありませんと首を振って黙った。


「……えー話を戻させていただきます。」


 少しの混乱があったが、会議が再開される。それを尻目に今村は訝しげな顔をしてニフタこと白崎の顔を見て心を読んでいた。


「……まぁ機械仕掛けの死んだ魂だし何も考えてないよな…少なくともこいつら程度じゃ心と魂の再現とかできないし…ん~何かお粗末なの見てると本物を造りたくなって来るなぁ…」


 今村はそう呟いて銃火器はあんまり自分で使わないから今度創った奴に備え付けようと思っていると下で動きがあった。


「……そなたもフェデラシオンの子で…それも王族の子であれば我が国の利益を考えるべきであろう?」


 この言葉を向けられた祓が全否定、及び今まで積もり積もった感情を爆発させるかのように無表情に淡々と反論し始めたのだ。それを援護と称してヴァルゴがモナルキーアの面々から更なる依頼料を提示しているが場は祓に釘付けでその動きに気付いているのは当の本人と相手のダニアンだけだ。


「さてさて……場が本来の話し合いからずれたなぁ…」


 しばらく成り行きを見ていると祓は感情の吐露をし終えて席に戻った。その後のフェデラシオンの面々は祓の感情の吐露の犠牲になった山を嫌に風通しが良くなった城壁から見て顔を青くしている。


 その中でも流石と言うべきか、ロケナンドは祓を取り込むことに頭を巡らせているようだ。


「ふ~ん……祓が付き従うのはレジェクエの最高権力者だけだとか言ってたからそいつを殺して自分のテクで落とす……フフフ…バカなんだろうか?いや馬鹿なんだろうけど…」


 3歳児が小指ほどの大きさのトカゲを追い払って自信をつけ、今ならドラゴンにも勝てる!と豪語しているのを見ている気分になって今村は失笑した。


「あー…まぁいいや。あとは場を引っ掻き回して適当に脅かした後ダニアンをスーパー改造人間にするためにヴァルゴの取引の内容で身柄を貰ってその後返すとするか。……まぁもう少し面白いことになればいいけど。」


 モナルキーアの面々の心も読んでおいた今村は青春の状態になればいいなぁと思いながら姿を現して軽く強引気味に不可侵条約を締結させ、フェデラシオンに友誼の証としてメアリーと次期王子との婚姻を結ばせて王城を後にした。




 ここまでお疲れ様でした。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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