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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十九章~段落の間~
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13.退行

「フハハハハハ!嫌々ながら戻った甲斐はあった!……が、思ったより大漁に出来ちまったな…ん~空き瓶でも作って…いや、今は不安定だし他の物と混じるとよくないしな……」


 今村は目の前にある薬品を見て楽しげに笑っていた。現在、5徹目。実際の機能としては寝る必要もないが、気分的に寝ていた方がいい今村は微妙におかしなテンションで部屋の中を見る。


「……んじゃ、しゃあないしこのコップの中にでも入れとくか。熟成段階ごとに分けてっと……あーじれったいしこの辺に置いてある飲み物空けて一時的に入れてから部屋の外に一部出しといて甕か樽作るか。」


 誰かが居るわけでもなく今村はテンション高めに独白して酒やら何やらを飲み干してどんどん外のこの前設置してそのままになっている要件用ボックスに置いて行く。


「ん。んじゃ~遮断と何入れよっかなぁ…」


 そして今村は作業に戻った。














「せんせ~……ん?何だろこれ。……ふむ。先生の唾液付き。」


 マキアが用事があったので今村の部屋に入ると二重構造になっている部屋の要件用ボックスに多くの瓶が置かれているのに気付いて取り敢えず確認した。


「物質の情報的に先生は一番端っこのこれはあんまり要らないと。何か泥水みたいな感じと…まぁでも先生がごく最近に口付けた容器みたいですし折角だし飲みますか。」


 マキアの確認は今村の唾液付着、それとこの中に入っている液体が猛毒か致死毒か、今村が必要としているかどうかだけで効能などは全部無視していたもの。まず唾液を舌で舐め取ってから一気に飲み干した。


「ふぅ。軽い猛毒で体火照ってるし何か体の至る所が痛いけど満足。午後の会議まで何しよっかな~」


 マキアはご機嫌で自分の手持ちの中で今飲み干した物より今村が欲しがるものを検索して自分の要件と一緒に要件用ボックスに入れると退出して行った。


 この後、他の面々―――アリス、サラ、祓、ミーシャ、ヴァルゴ、それぞれがそれぞれの反応を示して今村の部屋に来てから必要のなさそうな物と自分が持っている価値があるものを入れ替えて出て行った。













「……ん?減ってる?」


 今村が出てきたのは夕暮れ時でアリス、クーシー、サラ、マキア、ミーシャ、芽衣、ヴァルゴなどのこの場の幹部における会議の大分後半になる頃。つまり、会議の結論が出ているころだった。今村は液体の減りに気付いたがこれ以上遅れると自分の仕事を怠慢している気分になるので捨て置いて会議室に向かった。


 会議室前で元々この時間からの参加と決まっているのに何となく静まり返っている教室に遅刻して入る時の気まずさを感じた気がするが気にしないことにして扉を開けると盗聴防止のために完全防音となっている部屋の様子が見える。


「きゃはははは~!」

「うぅるしゃあぃ!」

「あぅ……」

「あっ!ご、ご主人さ……」


 今村は何も見ていないことにして静かに扉を閉めた。そして扉を塞いで天を仰いで溜息をつく。


「…馬鹿が。『逆行ヲチ水』飲んだな……あ~何考えてんだあいつ等…」


 現状は理解していたが理解したくなかった。自分の部屋にあるものは基本的に取扱注意品だから口にしない様に暗示をかけてあったのに彼女たちを何が突き動かしたのか知らないが相当な欲求が起きたのだろう。


「急に体内保有水分を奪取する呪いでも付けたっけ?」


 液体はどんなに美味しそうでも汚泥の様な物に感じるようにしていたはず。そんなことを思いつつも現実逃避してはいられないので助けを求めていた犬耳美女と猫耳美少女が待つ部屋に入る。


 すると目の前に眠そうに目を擦る白髪の美幼女が待ち受けており、今村の足にしがみ付くとよじ登ってからセミが木にしがみ付くように今村にしがみ付いて寝た。


「あ、ご、ご主人様……何がこうなっているのか分かりませんけど…その子、天明先生です……」

「だろうな。」


 部屋の中で変わってないのはクーシーと芽衣。そしてヴァルゴだろうが……彼女に関しては元から幼女だったのでよくわからない。ただ、現在変にはしゃいでいるので怪しい気もする。


「あと、その……アリスさんも会議中に消えたんですが…着ていた服はそこに落ちてるんですよね…」

「あ!ずりゅい!ヴァーも抱っこ!」

「サラも抱っこして欲しいの…」


 祓がしがみ付いているのを見たルビー色のロングストレートヘアの幼女と空色の緩いウェーブがかかった幼女が今村の周囲にまとわりつく。一先ず今村は両者をローブで抱え上げてゆりかごの様に揺らして眠らせにかかるとクーシーに質問した。


「マキアは?」

「……一番最初に退行してから自分の体を見て『やばっ!』と言って逃げました。」

「…精神退行は何とかしたか…ふむ。んじゃ姉貴はっと…」


 今村は意図的に猫耳幼女に遊ばれて……猫耳幼女と戯れている芽衣を視界から外して「千辺特化異化探知」を行使し、アリスの行方を探る。


「……いや、座敷童は何して……まぁいいけど。えーと…あ、いた。」


 「幻夜の館」の地下に元々創っていた迷宮がトレーニングやら実験やらで引き籠る前とは比べ物にならないほどの巨大な大迷宮になっていたが楽しそうなので放っておいてアリスを見つけた。


 比較的近くの通気口にいたのでローブを捻じ込んでトラップやフィルターまみれの通気口で立ち往生しているアリスをぐるぐる巻きにしてこの場所へ連れて来ると今村は何と言っていいのか分からない顔をした。


「……」

「いや、嬉しいんですけど私を見られてもですね……」


 芽衣は猫耳幼女に服を切り裂かれまくって半裸になっていたが放置。改めて目の前の……パンツを被った裸にシャツ1枚の幼女を見た。


「……はぁ。馬鹿なんかな?もう少し隠しようがあっただろうに…『ウェアーアップフレーム』」


 今村はベルトコンベアのようにアリス(幼女)を「ウェアーアップフレーム」の枠の中にローブで入れるとアリスはカラフルなドレスを身に纏い、まさに絶世の美幼女の顔を曝け出した。


「み、見ちゃ駄目なのです……」

「……『魅了チャーム』の制御が出来てねぇなこりゃ……精神退行のレジスト失敗してる…」


 顔を覆っている布がなくなっているのに気付いたアリスが慌てて両手で顔を隠して震えるが、時すでに遅く見てしまった人を魅了してしまい、芽衣は襤褸切れを全く気にせずにアリスにダイブ。クーシーも同様に飛びつこうとしてローブで縛り上げられた。


「……ふぇ?」

「さて、どうすっかな~クロノとみゅうは出掛けてるし。」

「あ、あの……そこの人は、アリスを見てもへーきなんですか?アリス閉じ込めたりしませんか?」

「平気だしどうもこうもしない。……スケジュール的に今日明日は空いてる…この状態は深層心理で残るんだよなぁ…上手く行けばこいつらを真っ当に成長させることが可能かね……?」


 今村が手近な椅子に腰かけるとそれに気付いた猫耳幼女が今村の太腿の上にすぐさま移動する。そのせいで会議用テーブルが壊れた。


「……まぁ後で効能切れしたら自費で直してもらうか。はぁ。敵意のない子どもに関して俺の能力ってほとんど使えないからなぁ…あの馬鹿二人の所為で…」


 溜息をついていると樹液が出ている椚のようになっている今村は自分の袖を引いているアリスに気付いた。


「お兄さん…その……アリスはいろいろじじょーがあって、大変なことになってますけど、お兄さんはだいじょうぶみたいなので……おねがいします!アリスここにいてもいいですか!?」

「いーよ。……どうすっかなぁ…」


 あまりにも呆気なく了承されたのでアリスは気付かずにしばらく頭を下げっぱなしだったが承諾されたのを理解すると泣きじゃくりお礼を言った。




 ここまでありがとうございます。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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