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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十九章~段落の間~
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9.話しの間にも作業は粛々と

「ねぇお兄ちゃん…あの人何したの……?」

「ん~?んー……本人に訊いたら?」

「でもあの人お兄ちゃん以外の声全部無視するし……」

「あの変な男とか話してるじゃん。大丈夫大丈夫。」

「していません。」


 現在、今村は春の場所を終えた後に夏の場所で水を掬った後、いくつかの素材らしい物たちを採取して秋の場所に移動していた。


 なお、現状は春の場所の時とあまり変わらず、戦闘機に乗ったままクロノと今村が会話をしながら今村が作業を続け、外でメイド服の女性が謝罪を続けながら男を排除している。


「私はご主人様だけで、ご主人様さえ居てくだされば他に何も望みませんからどうか珂雪城へお帰り下さいませ。」

「しつこいなぁ。ねぇクロノ?」

「あの人何したのか気になるなぁ……」


 クロノが好奇心を発揮しているので今村はメイド服の女性に視線を送った。彼女はそれだけで察し、すぐに口を開いた。


「ご主人様の意にそぐわない形で、城の仕掛けを動かしました。全て私の落ち度です。」

「……?それだけ?」


 クロノがきょとんとする中今村が目を細めてイラッとした感情を面に表し、舌打ちした後に棘ついた口調で言った。


「それだけだぁ?こいつほんっとムカつくな。目障りすぎる。本当に死ねばいいのに。」

「……申し訳ございません。ですが、私にはこれ以上何が悪かったのかわからないのです。どうか教えてください。」

「何で何回も言わねぇといけねぇんだよ腐れゴミ。廃棄する前に言っただろうが屑。無視しといていい度胸してんな本当に。本気で消え去れよ塵芥。まぁ創ったのが俺だからその悪口雑言は全部俺に帰って来るだけなんだが。うん。俺は確かに腐れゴミ屑カス野郎だが……まぁまだ死ねんし頑張ろう。」


 今村は一人で満足して納得し、頷いて作業を続けるがメイド服の女性が立ち塞がる。


「ご主人様は、間違っておられません。私が、天才であられるご主人様が創って下さった自由な進化プログラムを勝手に…」

「取り敢えずまだとか言わないで死んじゃだめだよお兄ちゃん?後お兄ちゃんはさいこーだよ!」

「うるさい。集中できんだろうが全く……つーかここの新居者がさっきから五月蠅いし邪魔い。」

「……でしたら、「はっ。嫌だね。」……まだ、何も言っておりませんが…」

「あの城に入って俺が操作したら早いとでも言うつもりだろ?」


 今村の言葉にメイド服の女性は頷いた。


「どうせ罠に嵌めて俺を殺すつもりだろ?」

「違います……私は、ご主人様を害そうとなど一切思ってません……ご主人様がそうお創りになられたではありませんか……信じてくださいませ……」

「まぁ信じられないから言ってるんだが。……ここの所有権とか居住権は別に人にくれてやってもいいがやっぱ流石に交戦権はちょっと俺を殺しに来られると今は困るしあげれんなぁ……」


 容赦ない言葉に感情を殺そうと小刻みに震えながらメイド服の女性は何とか言おうとするが表情を押し殺した頬に涙が伝う。


「あ……」

「お兄ちゃん…」

「見っけ。見つけ辛かったなぁ……さて、後一つで帰れる。あー嫌だったぁ。」

「……やっぱりあの人は気にしないんだね…」

「当たり前だ。どうせこいつはあそこにいる奴と共謀して俺を殺してから交戦権を奪おうということしか考えてない。だからアレを殺さないし、わざと五月蠅くすることで作業を遅らせて帰る時間を先延ばしにし、会話で俺を油断させてるんだよ。全部俺を殺すため。」


 今村の言葉に感情を殺し切れなくなり始めている女性は首を振る。


「違います。誓って、そんなことはありません。」

「名付けまで済まされてるんだし。」

「ふーん……じゃあクロノに何があったのかお兄ちゃんから教えて?クロノそんな失敗したくないし。」


 そんな女性のことなど今村たちは無視して会話を続けた。クロノの言葉を受けて今村はどう説明した物か少し考え、天を仰ぐと話がまとまったのでクロノの方を見た。


「じゃあ、クロノは小国の女王様と仮定しようか。」

「うん。」

「んで、お城に住んでいます。当然、一人じゃお城の運営は出来ないのでメイドを雇いました。」

「うんうん。」

「ある時、クロノの国に2人の悩める非常に格好いい王子様がやって来ました。」

「お兄ちゃんが二人ね。」


 今村はそこで話を切りたくなったが続ける。


「……まぁ、で。その王子様2人を追って非常に大きな国から女王様がやって来ました。彼女たちは話し合いがしたいのか、それとも宣戦布告に来たのかどういう目的で来たのか分かりません。」

「何で王女様が来たの?兵士とかじゃないの?」

「そこの国は王女が最強なんだよ。んで、クロノは普通の相手位なら瞬殺できるだろ?じゃあ他のが来るだけ無駄じゃん。」

「ふーん。なるほど。」


 クロノは頷いて今村は話を元に戻して続けた。


「そんな王女様が2人来た時、クロノは凄く忙しくてついつい寝ちゃってました。すると寝ているクロノを見てお城に仕えているメイドは何をしに来たのか分からない王女様2人を城の全兵力で以て追い返したのです。……さて、どう思う?」

「え、戦争じゃん……」

「しかも、王女様は1人でクロノを瞬殺できます。クロノは二度と外に出れません。その上、」

「その上……?」

「お城に来ていた王子様は王女様と単なる痴話喧嘩で出て来ていただけだったのでした。当然、帰りたいと思うのに戦争の引き金になったので素直なことにはなりません。……まぁ大体こんな所。」


 今村がそこで話を終えるとクロノは大きく息を吸った。


「クロノがお兄ちゃん役で、そこの人がメイドさん役。……つまり、この人お兄ちゃんが寝てる間におっきな国に戦争仕掛けたんだ。」

「そういうことだね。まぁ恥捨てて奇襲仕掛けて死にかけて何とか今の小康状態まで持って来たが……そん時の戦いのオチ酷いぞ?俺が止めさそうとしたらその駆けこんで来た奴が庇って逃げられるというね……今日まで禍根を残す結果だな。」

「……でもお兄ちゃん喜びそうな展開だと思うけど…」

「まぁ戦力とかひっくりかえすのは好きだが限度はある。大体誰かに戦わせられるのも気に入らんのに、ようやく首が据わった赤子にヘリ撃ち落として来いっつーレベルの無茶振りされればイラッとも来るだろ。」


 クロノが外にいる女性に目を向けると彼女は肩を落として何も言えなくなっていた。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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