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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十九章~段落の間~
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2.微妙な業績悪化のため

 今村は忙しなく働いている「幻夜の館」の面々からサインする書類を受け取って執務室に入り、適当なことを考えながら仕事をしていると先程までの仕事にキリが付いたらしい祓がお茶を淹れてやって来た。


「どうぞ。」

「ん。どうも。」


 最近、色々昔馴染みの者たちに会って様々なことを思い出していた今村は祓を見ながら溜息と共に呟いた。


「……なーんで俺は感情に乏しい奴の心を捻じ開けるんだろうな。」

「?え、えと……どうかしましたか?」

「いんや…ちょいと昔の知り合いに会ったから、もう一人の若干おかしい奴のことも思い出してな…………アレ?俺の知り合いって皆おかしい…」


 ふと身近な面々の顔を思い起こすと大概が【負】の神よりの性質持ちな気がしてきて【正】の原神も最近変になってるし…と思ったがまぁ気にしないことにした。


「あ……誰なのかは知りませんけど、私は色々知れて……先生と出会えて本当に良かったと思ってます。」

「はいはい。そりゃどうも。」


 祓の言葉を適当に流してお茶を飲み干すと祓はその湯呑みを回収して執務室を後にした。そして書類に目通しをしていると一枚の書類の前で止まった。


「ん……?アイドル業界が僅かながら下降して廃れ気味か…イリアとかいう歌姫の登場で歌唱力がどうこうって話に……ふむ。」


 今村の呟きに電子精霊がにゅっと現れて自分たちの業績を見せて誇らしげなポーズを取って来たので一応撫でておく。こちらは飛ぶ鳥を狩りつくす勢いだ。


「ん~。アイドル勇者に詳しいこと訊くか。」


 大体が業績を伸ばしている中で明確に連続して下降気味である業界はこれだけのようだったので今村はすぐに足を運ぶことにした。


















「今村会長!」

「これ読んで来た。」


 今村が簡単にまとめられた資料をひらひらさせながらそう言うとアイドル業界を任せられている朝倉は表情を暗くした。


「そうなんですよ……」

「単刀直入に言うわ。イリアってのはどんなもんなの?」

「……知らないんですね。」


 どこか呆れる視線を持って彼女は今村に音楽番組を見せる。大抵の番組では「レジェンドクエスターズ」の何かしらのアイドルは入っているのでほとんどの音楽番組は録画されているのだが、この番組は歌姫イリアの特集でアイドルは入っていなかった。


「……ふ~ん。まぁ、そこそこ上手いな。どっかで見た覚えもある。」

「まぁ連日テレビで出ずっぱりですからどこかで見てるはずですよ。…って、え?そこそこ…?」

「個人的にアリアの方が上手いと思う。多分お前も見たことあるけど…いや、アレ神域に入ってるから記憶改竄されるっけ?」


 今村は育ての娘であり、【謳う者】、【死を司る女王】であるアリアのことを思い出したがテレビの中の女性は大分ランクが下だと思った。


「ん~電子精霊こいつらみたいな正確性もなければ、動くわけでもない。顔はまあいいけどそれだけならウチの奴らと大して変わらんし、センスも普通…」

「え、この人私より大分歌上手ですし、2000年に一人の逸材って言われてるくらいですよ……?」


 朝倉が抗弁してくるが今村は鼻で笑った。


「所詮、人止まりだろ?異能力者が人止まりって……大体、これなら祓とかの方が上手いぞ?……あ、いいこと考えた。期間限定でアイドル作ろう。」

「……期間限定で?え、どういうアイドルを作るんですか?」

「取り敢えずオーディション会場創るから付いて来な。」


 朝倉は訳が分からないまま研修していたアイドル候補生たちに自習を言いつけて今村に伴って「幻夜の館」へと向かって行った。











「いつどこで誰を対象にどうやってやるんですか?」

「今からここで『幻夜の館』の面々を対象にする。個人的な伝手を使ってやってもいいんだが……気絶するレベルの奴が多いし、下手すれば見ただけでテクノブレイク起こして死ぬかもしれんしな…」


 いつもと変わらない軽薄な感じで言っているものの本気で言っているということが分かった朝倉は引き攣った笑顔でその話を受け入れる。


「あはは…」

「だから、まぁ……姉貴は駄目だな。人間じゃ直視できないレベルの美顔だし。映像とか写真とかなら大丈夫なんだが流石にアイドルだからライブはさせる。いけるのはぎりぎり祓たちくらいまでかなぁ……」


 今村は言いながらオーディションの資料的な物を速攻で作り上げて印刷し、各所にある掲示板に張り付け、その場から離れて行く。

 そんな印刷された紙の一枚を見ながら朝倉は今村に質問した。


「……?褒賞のぎくしゃくしたのを取り除く…って、何ですか?他の褒章は分かるんですけど…」

「ん?ちょっと殺し合いして俺と敵対したのを怖がってる奴らがいるんだよ。表面上和解したんだがいつ不興を買って殺されるかとびくびくしてる奴らにそんなに軽く殺したりはしませんよ~っていう免罪符的なやつ。」


 周囲で休憩に入っていた女生徒が掲示板を見てその褒賞内容ではしゃいでいる中、今村は朝倉を連れて執務室に入って行く。


「んで、作詞作曲とかは任せた。俺がやると呪歌になる。」

「えーと、ですけど……ただ単に新規のアイドルグループを作っても既得ファンがいるイリアさんには…」

「衰退するのを待つだけなら何かした方がマシだろ。最悪の場合はちょいと面白いことするし…」


 今村はそう言って口の端を吊り上げた。朝倉はそれ以上何も言うことはなく今村が言った通りに手はずを整える。


「……ですけど、人と曲のイメージとか振り付けとか時間がかかりますんでその辺の兼ね合いを踏まえるとオーディション終わってからの方がいいと思います。どうせ明日中に終わらせるんですよね?」

「ん?そりゃ書いてある通りだ……まぁ曲とかその辺は好きにして。俺はオーディション会場を今から作って来る。」


 今村はそう言いながら書類を目にも止まらぬスピードでまとめたり書き終えたり訂正したりし終えると背もたれに体重を預けた。


「あー怠ぃ。何か面白い事ねぇかなぁ……まぁ今から若干極微小にだけ面白いもの見れそうだけど…」

「……何かするつもりなんですか?」


 朝倉の問いに今村は僅かに口の端を吊り上げるだけで何も言わなかった。




 ここまでありがとうございました。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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