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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十八章~四界滅亡?~
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9.哀れな敵

「こ…ここは…?」

「気付いたか……ここは俺のアジトだ。」


 【無尽】は気付くと薬品の匂いが充満している部屋で粗末なベッドに横たえられていた。


「っ!ぅ…が…」

「酷く痛むだろう。まだ動かない方がいい。しかし…そこまで酷い欠損。誰にやられたんだ?」


 声がする方を見るために上体を起こそうとして激痛に呻く【無尽】。だが口は動かせるので質問に答えた。


「クソッタレな【冥魔邪神】さ…あの屑が……悪いなあんた。これ以上ここに居たらあんたごとあいつに殺される。」

「【冥魔邪神】…か。そいつはこんな顔をしていなかったかい!?」


 その言葉と同時に声色を元に戻して【無尽】の顔の前に今村は顔を出してにんまり笑った。


「いい反応してくれるねぇ!俺から逃げられるとでも思った?残念!助けたのも俺でした!」

「な、なん…」

「何で助けたか?お前を骨の髄まで遊び尽くすためだ。言わせんな馬鹿…」


 死刑宣告よりもひどい宣告を受けたかのような顔をして【無尽】は逃げ出そうとして右腕の感覚が痛みしかないことに今更ながら気付く。


「あー右手は毎晩君のことを慰めてあげてるのにあんな男たちとか豚とかナメクジとかとお楽しみだったから拗ねて家出してたよ。もう耐えられないんだって。左手は右手が家出するなら一人にしておけないって。しかたないから月1cm胴体を食べさせる契約で蟲を入れてみた。」

「ぎぃやぁぁああぁっ!」

「うわっ!その汚物を俺に近付けるな!」


 発狂して暴れ出す【無尽】の腕を今村は吹き飛ばした。しかし、直後にその蟲の腕は生えてくる。その代りに【無尽】はいきなり痩せ衰えた。


「あー腕の復活には自分が死なない程度に栄養を奪い取られるから。…あれ?もう自我がなくなったか……じゃ蟲の世界に苗床として提供しとこ。」


 【無尽】の体は黒い半球の何かに覆われ、その後には何も残らなかった。


「ふっふ~ん♪あ、そうだ今テンションがある内に『永久黒闇蓮華』充電しとこうか。結構いいとこ行けると思うんだよね~」


 誰もいないのを再度確認して瞬時に呪具を出して充電すると元に戻して今村は次の行動を考える。


「踊るか。」


 今村は不思議な踊りを踊った。その後首を傾げて電子精霊たちを呼んでBGMを付け、また踊る。が、何か納得いかなかったらしく今度はステージを整えた。


「はっ!俺は何をしていたんだ……その場のノリって怖い!」


 正気に返ったところで何か約束事があった気がしてその場の行動を思い出すために何かをしていた場面に戻ることにする。


「何だっけ…取り敢えずドームを創ったところに戻るか。『神・行方不知ゆくえしらず














 ドーム跡地には未だ大勢の生徒たちや関係者各位が残っており、その全員が顔を蒼白にして今村の顔を見るなりびくりと震えた。


「…何だっけ……な~んか忘れてんだよなぁ…ここじゃなかったか…?」


 そのどれにも今村は一瞥もくれずに顎に手をやって首を傾げる。


「この前……?いや、それはないな。テンション高い時のいつかに朧気に誰かに何か言った気がするんだが…クイズ辺りかな…?もう少し前か?何だろ。」


 今村はぶつぶつ言いながらうろうろする。仕方ないので状況の再現を行うことにした。


「あー?ぅー…」

「汚っ!呪具に触れさせたくないなこれ。まぁあるだけでいっか。んでー敵全体に『実影縫い』してて…」


 悲惨な末路を辿っている【無尽】をその場に放置して今村は周りにいる面々を睥睨した。


「何か死にそうになってるな。飲み会でアルハラに遭った…あ!そーだそーだ飲み会だ!思い出した思い出した。協力感謝する汚物!いや、今更だけど丁度良い所に敵が来てくれて俺は中々嬉しかったよ。テンションって溜めれないし使ってナンボだしね。それじゃお元気で~」


 お礼とばかりに極々スローペースな欠損箇所自動修復術を掛けて【無尽】を蟲の世界に送り出すと今村は周囲の人々への術も止めた。


「あー。んー……ん~…よし、放置しよう。判定的に微妙なラインだしな。それに事ここに至って大敗を喫してる相手に戦いを挑んではこないだろうしね~このまま緩やかに永く敵対していってほしいね。さて、マキアも飲み会来る?」

「あ、はい。……で、えーと…それはさておきまして、クロノちゃんは…」


 聞こえるように宣言した後、今村が解説者席から降りて来ていたマキアに声をかけるとマキアは【無尽】に吹き飛ばされたクロノを探した。


「…羽虫が邪魔だな。」


 今村の視線の先には「癒し手」が全能力を集中して治療を行っているクロノの姿があり、それを見て別段変わった風もなく無造作に「癒し手」をどけると急いで邪魔にならないように全員が退いた。


「『配素氣流』。『覚醒呪』。」

「っぁぁあっ!い、いた…痛い…」

「『クロノセラペーヴォ』使え。」


 今村はクロノに強制的に意識を取り戻させると自身の時を戻させて完全治癒させた。


「あれ?あの変なのは……?」

「バイトの時間だって言って帰って行った。地球にある大気中の水素分子を頑張って肉眼で視認して一つ一つ丁寧に数を数える仕事だってさ。」

「……う、ぅうん?そう、なんだ…」


 釈然としないがクロノは一先ず頷いておいた。今村は適当なことを続ける。


「難儀なバイトだよな~コンマ0点000000…秒以下単位で数が変わるから永遠に終わらないんだって。」

「うん……」

「まぁそれは冗談として、普通にぶちのめした。今から祝勝会しに飲み屋に行くが来る?」

「あ、うん。……ごめんね?クロ…じゃなくて私何の役にも…」


 クロノが暗い顔をしているのを今村は途中で遮った。


「言い直すのは面倒そうだしもうやめていい。クロノって言いたけりゃ言え。後役に立ってないって思うなら次頑張れ。今回は次があったんだからよ。」

「え、でも…私じゃないと悪い子…」

「一人称なんざ自由にやってろ。そんなことより飲むぞ。今回はテンション高いしいい酒飲もう。」


 そんな感じで二人の話がまとまって行く中、今村は充満している恐怖を吸い邪悪な笑みを浮かべて呟く。


「圧倒的過ぎてビックリするほど怯えられてるな~クックック…いいねぇ。」


 今村がテンションとは別の氣が溜まって行くのを感じながら少し待ってから移動しようとしたところで唐突に空が割れ、光が舞い降りてきた。

 今村は舌打ちする。


「チッ……そうか。そうだよなぁ…ライアーが俺の所に来てたってことはそういうことだもんな。」

「え、か……帰って来たの…?」


 クロノは敵がまた現れたのかと不安げな声を出すが今村は首を振ってそれを否定する。そして辺りが抉れるほどのスピードでそれはやって来た。


「やっと見つけた……」

「ジャリが…帰れ…」


 今村に「憎禍僻嫌」を掛けた張本人。アリスは安堵の笑顔に涙を浮かべながら今村達と対峙した。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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