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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十八章~四界滅亡?~
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7.不思議生命体の骨頂

 今村の発言後、しばらく読書などをしていたが不意に周囲の緊張が高まる気配がした。クロノは泣きそうな顔になりながら今村にしがみ付き今村は今村で本を読んでニヤニヤしている。


 そして緊張は爆発し、現在拠点としている家も爆発させられた。


「ふきゃっ!お、お兄ちゃん…え?お兄ちゃん?」

「あー?何だこれ。【爆ぜ避けろ】」


 クロノが悲痛な顔になる中、今村は一歩も動かずに椅子で本を読みながら周囲の惨状を消し飛ばした。


「貴様が我が主の敵かの?」


 随分と見晴らしがよくなった今村の周囲は既に感知されていた通りに包囲網が敷かれていた。

 その包囲網から出て来たのは今村がカラフルズと名付けた彼女たちであり凶悪なスタイルを誇り、ワインレッドの長髪をたなびかせている美女は敵意を押し出すように、白髪の美少女は嫌悪感を隠しもせずに、黒髪猫耳の少女は戦闘意思を滲み出させて今村の前に立ちふさがる。

 そんな中、空色の髪をしたあどけない顔立ちの美幼女は浮かない顔をしており桃色の髪をした美女と美少女の間の娘は不敵に笑っていた。


 が、それら全てを今村は黙殺して読書を進める。しかたがないのでニヤニヤして顔を一切上げない今村の代わりに月美が前に出て彼女たちと対峙する。


「あなたがたはマスターの敵という事でよろしいですね?」

「違うねぇ。」


 月美の問いに答えたのはどこか聞き覚えのある声で、月美にとって嫌悪するべきものだった。突如として現れたその声の主の方を見て月美は思い切り顔を顰める。


「ゴミ虫ですか……この恩知らずが……私を殺しておきながら私のマスターまで手を出すつもりですか?」

「あぁ、違う違う。これはただ【冥魔邪神】への負の感情が強かったから利用させてもらってるだけだよ。何でも誰よりも大好きな人を盗られたんだって。可哀想だよねぇ?復讐させてあげないと。」


 そう言って、相馬の形をした何かは本人が到底浮かべることのない歪んだ笑みを浮かべて月美に笑いかけた。


「全く、同じ負の神として何でこいつがそんなにモテるのかわかんねぇが…君も可愛いね?俺の物にしてやろうか?」

「生憎ですが「あぁ、さっきこれに殺されたって言ってたね?」…は?」


 拒絶の言葉を述べようとした月美の台詞を遮ると相馬の形を取っていた何かはいきなり液状になり、次の瞬間には彼女を今村の下へと派遣した男の姿になっていた。


「これならどうかな?中々良いと思うんだけど。」

「それは……?」

「ん?これに恨みが募ってた哀れな悪魔だよ。尤も、強力な呪いの所為で横槍が入って本体の精神体には逃げられたけど…知り合いなんだよねぇ?」

「あなたは一体…何なのですか?」


 月美のどこか怯えの混じった言葉に男はにたりと口の端を吊り上げて応えた。


「俺は【無尽】。第1世界の高等精神体特化地区出身の神罰部についてる。ところで嬢ちゃん?君程度の術じゃ俺には通じないよ。遊んでほしいなら後で掛かってきな半端者。」


 台詞の途中で急激に不機嫌になった【無尽】は様子を窺いつつ逃げ出す準備をしていたクロノを一撃で沈め、月美に笑いかける。


「さて、この屑はいい加減自分の立場を分かってもらわねぇとな?でもまぁ…先に余興でも楽しもうか。折角こいつの関係者を集めたんだし……」


 未だ周囲の事態全てをガン無視して読書を続けては時々噴き出してページを捲る今村の頭上に【無尽】は術を掛けて厭らしい笑みを浮かべる。


「くくっ……自分で育てた子どもたちに殺されるっつーのはどんな気分なんだろうな?それを死ぬ直前に教えてもらうにゃこのガキどもとの関係性を思い出して貰わねぇと……なぁ?」


 強大な力任せに【無尽】は今村に記憶と、彼がカラフルズを洗脳するために一度殺す寸前まで攻撃していた時の彼女たちの思考を流し込む。


 すると、ここでようやく今村にリアクションが出た。僅かながら顔を顰めたのだ。そして、何事もなかったかのようにページを捲る。


「オイオイ。弱体化して精神まで弱っちまったのか?現実見ろっての!」


 【無尽】は腑抜けと化したか?と今村が座っている椅子を蹴り飛ばし、今村が普通にその上に空気椅子で座っているのを見て憤慨し―――背筋に液体窒素を捻じ込まれたかのような悪寒が走る。


 直後、彼の脚は消滅していた。


「……は?」

「ぎゃーぎゃーぎゃーぎゃーうっせぇなぁ……?何だ?俺に何か用か?今は珍しく機嫌がいいが…読書の邪魔をしたんだからそれ相応の覚悟は出来てるんだよな?」


 今村が、立ち上がる。指を栞代わりに本に挟めた状態で、どう見ても普通の状態であるのにもかかわらず彼は動けなくなった。

 歯が噛み合わない。疑似的に創ってあるだけであるはずの汗が止まらない。体の震えが収まらない。


 そんな彼に興味を無くした今村は「雲の欠片」を出して横になって読書を続行した。ふと顔を上げて何か考える素振りを見せた今村は今見ている本を一気読みすると満面の笑みで「雲の欠片」から降り立ち、髪やローブをざわめかせて彼と対峙する。


「んで?何?殺し合いなら現在大歓げ……おー。これはこれは。第1世界からはるばるどうも!名前忘れたけど何か強い奴だったよね?」


 実に良い笑顔のまま今村は【無尽】を殴り飛ばす。地面が割れ、星が震えた。


「いっけね。結界がいるなぁ?【破魔神の独裁場】これにしよっと。」

「クソがぁっ!サラ!祓!ヴァルゴ!マキアにミーシャ!来い!『プリンスキス』してやる!」

「『プリンス(笑)キス』ねぇ。プリンスって顔ですか?HA!HA!HA!いや~高見んの本はやっぱいいねぇ。今の俺はテンション高いぞ?いぃぃぃいいぃやっほぅ!位高いぞ!」


 今村は意味の分からないことを言いながらノリノリで相手側の準備を待ってあげる。ふと気付けばクロノは吹き飛ばされて重傷を負っていたが後で何とかすることにして【無尽】を見るとキスでえらく難航していた。


「……何じゃろうか…?取り返しがつかんことになりそうなのじゃが…」

「いいから早くしろ!あいつの気がいつ変わるかわかんねぇんだぞ!?死にてぇのか!?」

「そーだそーだ!」


 今村はヤジと一緒に極小で切れ味抜群の斬撃を飛ばす。それは今村の狙い違わず【無尽】の耳を削ぎ落して結界まで飛んで行った。


「っ!?何だ!?耳がぁっ!」

「あ、痛覚あげたよ。俺から君への良く知らんけど多分誕生日……?プレゼント!にゃっはー!ってか早くしろって~俺…あ、目にすればよかった。まぁいいや。3分間待ってやろう。それ以上気が変わらない自信がないんだ。」


 今村は「目がぁっ!」と言わせればよかったなぁ。と思いながら適当なことを言ってまた読書をしようと思って…………気が変わった。


「死んじゃえ♪」

「ぐごぁっ!さ、3分は……」

「オイオイ。敵の言う事を鵜呑みにするってどんな育ち方してんだよ。大体俺は3分待つっつったがそれ殺さずに待つって意味な。因みに頑張ったら3分位は気が変わらないと思ったんだが…まぁ世の中って頑張ってもどうしようもない時ってあるよね?」


 今村はそう言ってまだ更になんだか不思議と楽しくなって来たので今度は本当に若干待ってあげることにした。


「『呪死裂断』♪」


 【無尽】を切り刻みながら。




 毎度どうもありがとうございます。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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