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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十八章~四界滅亡?~
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2.正義の対極の正義

 ああでもない、こうでもないと話し合っている内に今村は議論に飽きてきた。なので偽造死をメインにすることにして全員に演技を求める。


「偽造死に関してはこないだライアー…まぁ【欺く者(ディシーバー)】から血から奪っといたから若干余裕があるんだよね。」

「……ならそれでいいんじゃないですか?」


 日馬がそう言うと今村は一つ頷いて言った。


「問題は死んだ後、どこに行こうかなってところだな。地上だとねぇ…会社が大抵の所に網張ってるから生活が面倒なんだよ。自世界に引き籠るのもいいけど偽造死の瞬間に飛べるのは範囲があるしなぁ……あーどっか、例えば魔界とかねぇ、どうかなぁ?行く場所ねぇかなぁ?」


 今村は日馬を見ながらそう言った。因みに日馬は現在魔帝となっており、様々な仕事をしている立場にあるので人1人匿うくらいであれば何の問題もない。


「…はぁ。まぁいいですよ?」

「おー。これで全員解放されるな。めでたしめでたし。器量が良くて顔立ても良くてみんなに人気だし、その上高収入。3年もすれば全員結婚してるだろうからそれくらいになったら戻るとして…よろしくな~」


 今村が軽くそう言った後、演技指導に入ろうとしたところ案を詰めていたタナトスから意見が出た。


「因みに死亡だと欺く範囲の境界線はどうするんですか?今村さんが居ないと第3世界で色々問題が起きるんですが…」

「ん~?正直俺一人の生き死にで如何こうなるレベルの世界なんぞ知ったこっちゃないが…まぁ、この世界範囲内だけにしておくか。あんまり皆に死んだんだ~やったね!とか言われると戻って来る時に気まずいし。」


 今村は歪んだ笑みでそう笑いながら言うが、イグニスは呟く。


「……喜ぶ奴だけじゃないんですけどね…………」

「多数決取ったら死んだラッキーついてる!の方が圧倒的に多いだろうが。」


 今村は普通に聞きとって返すが、目はタナトスとトーイの計画図案の方に向いており、そこまで関心はないようだ。


「えーと、ところで今村さんに純粋に質問があるんですけど……さっき、『幻夜の館』の皆さんのこと器量が良くて顔立ちもいいって言ってましたよね?じゃあ何で今村さんは嫌なんですか?」


 魔界に連絡を取っている日馬の隣で所在なさ気に座っていた白水が今村に質問して来た。今村はやはり目を離さずに答える。


「皆に好かれるなら俺は要らねぇだろうが。記憶はねぇが『負』としての自覚はある。細かいのを合わせると色々あるが他の大きな理由は……例えば、俺は理性で全身統制してる。んで、ちょっと理性が弱い時に刃物とか持つと何かしら斬りたくて仕方なくなるし、他にも破壊衝動とか色々持ってる。細かいのは色々あるがまとめると基本的にいるよりいない方がメリットが大きいからかな。」

「……それ、本人たちに言ったら激怒されますよ多分……」


 魔界との連絡が終わった日馬が呆れるように言った。とはいえ逆らってもろくなことはないので計画は進める。


「えーと、細かいことは月見里に訊いて内容は詰めましょう。あ、記憶ないんで多分忘れてると思いますが『確率をる者』です。事象が起こる確率までなら知ることが出来ます。」

「ふーん。あんまり他人任せだと個人的にしっくりこないから原案は全部書いてから送るか。」

「あの、今村さん……僕今村さんが言いたいことは分かるんですけど、賛成はできません……」


 計画がどんどん進行していく中、白水はそう言って今村達を止めに入った。


「……まぁ一応理由は聞こう。何で?」

「だってそうでしょう?ここに居る皆さんだって、もし今村さんが本当にいなくなったらどうしますか?少なくともイグニスは不安でいっぱいになるよね?」


 白水の意見にイグニスが苦い顔をして黙るが、今村は計画書から顔を上げてそんなイグニスから一歩引いた。


「お前……そっちの気が…?」

「いや、違いますけど。普通に、過去に逆戻りにさせられるかもしれない、もしかしたら今みたいに生きてるのは全部今村さんの能力のお蔭で死んだら施設に戻るかもしれないっていう……そういう、感じになるだけです。」


 イグニスの回答に場の空気が一気に重くなるが今村だけは普通にして計画書の内容書きに戻っている。日馬もそれほどまでには堪えてはいないようだが白水の一言が続けられる。


「日馬さんだって、魔界の後ろ盾がなくなったりもっと言えば『レジェンドクエスターズ』による改革が無かったら、どうなってたか。」

「……俺は、そこまで…」


 日馬も「幻夜の館」で教えられた今村の恩恵を知らず知らずの内に受けていたという事実を思い出して苦い顔になった。


「んー……まぁ、時間が経過すれば何とかなるって。皆いつかは死ぬんだし。誰だってそれを乗り越えて生きてるんだから。」

「誰もが今村さんみたいに強くないんですよ。過去は過去って割り切れるほど、軽い感情であの人たちは…「あのねぇ。」」


 今村はようやく顔を上げ、それでも尚後ろ髪で計画内容をいくつか書きながら物わかりが悪い子どもに教え諭すような口調で言った。


「完全に割り切らなくてもいいの。ある程度で十分。吹っ切れない奴もいるかもしれんが俺が居たら吹っ切れる切っ掛けも全部なくなるだろ?」

「ですけど、」


 今村は白水の言葉を遮るように続けた。


「しかもだ。常に危険と隣り合わせ。俺が城に居た頃も色々来てたが、こっちに来たら俺の所まで来なくなった。何故か?俺に知る前に、知ってどこかに行かないように何とか倒そうと、あいつらが特攻紛いのことを平然として排除するからだ。弱いのに。」

「それは、今村さんがそれだけ大事で…」

「大事?記憶はないが話を聞くに育てたのは俺だ。確かに育ての親は大事かもしれんが……選択肢を広く持つために与えたと思われる能力で、世界を見て回ることが出来るように育てたのに、育てたという理由でそいつに守らせて、可能性の芽を摘み取るのは頭おかしいとは思わんか?」


 今村はその時点で自分で納得できる計画を書き上げたので計画書を捨て置いた。白水は何とも言えない。


「大体、俺は俺だ。俺の為に生きるのであって誰かの為に生きるんじゃねぇ。育てたのも多分捨て子か何か知らんが見てて気分が悪くなるからだろうし、俺の邪魔になれば普通に殺す。…そんなの好きになったら人生ダメになるだろ?」


 重い雰囲気の中で日馬が『確率を識る者』に送るために計画書を読み、それを送って返答が帰って来た時点で計画成立と見做し、今村は全員から「罪の意識」を「ドレインキューブ」で奪い取った。


「まぁ、なるようになるってことだ。」

「そうですね…じゃあまぁ刺身なんかが乾燥しちゃう前に食べますか!」


 場は明るくなり、この後今村を除く全員が飲み倒れるまで宴会が続いた。




 ここまでの読了ありがとうございました。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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