1.対策会議
今村が超弱体化してゲネシス・ムンドゥスに帰ってから一月が経過したころの昼前の午前中。今村は遅い起床をした。
「おはよー!」
「……あぁ。」
起きてから部屋の外に出るとクロノがレーザーを時間の壁で阻みながら待ち構えており、今村はクロノを連れて部屋から降りると食堂へと向かう。
食堂では祓が料理を作っており、椅子とその中にマキアと「癒し手」の聖女と呼ばれる犬耳の美少女、クーシーが四つん這いになって背中で座って欲しいと語っていた。
今日は何となくそんな気分だったので二人の背中に座っておく。それと同時に食事が並び、自分の分も並べた祓が対面に座った。クロノは今村の横の普通の席に座る。
ご飯、柴漬け、味噌汁、ストラグルフィッシュの味噌焼き、それに卵焼きとホウレン草の白胡麻和え。
それらを食べ終えると祓は満足そうに微笑んでから片付けをして仕事に戻って行く。
席を立つと今村は「レジェンドクエスターズ」とかいう変な名前の自分で設立したらしい企業へと向かい、仕事を観察して少々言葉を掛け、業務終了。
その間、褒められたり話し掛けられた社員は非常に嬉しそうに好意を隠そうとして完全失敗しながら接して来た。
「……はぁ。」
「どーしたの?疲れちゃった?」
「……視察の回数を減らしますか?2日に一度くらいに…」
「あ~もう。アレだわ。ちょっと飲み会に行ってきます。」
「………………はい……」
送迎中についた溜息に付いて来ていたクロノと運転手の芽衣が心配して、今村の言葉に残念そうに頷いた。
そして、夜が来た。今村は焼き鳥や若鶏とイカの唐揚げ、刺身にお菓子、チーズや様々な丼もの、天ぷらなどを準備した後術式を発動した。
「えーと、敵ではない、俺と同じような境遇に遭って嬉しいと思うより違和感を覚える奴らの中で酔って絡んでも簡単には死なない奴、男限定。先着5名。」
今村が遮音結界を張って侵入者に対する対策を済ませた部屋に3人の美男子、それに普通の1人の青年と1人の中性的な顔立ちの美少年が現れた。
「お…た、助かったぁ……」
「家でも服着ておいた方がいいと思うぞ俺は。まぁだからと言ってナチュラリストを否定するわけじゃないが…」
美少年が涙目でそう言うのを今村は冷静に突っ込んで周囲を軽い威圧込みで睥睨する。
「ちっ。顔がいい奴らばっかりかよ。そりゃそうだろうよ。さぞかしおモテのことだろうからねぇ。死ねばいいのに。」
「……何で急に呼ばれて急に罵倒されてるんだ…?」
「記憶無しでも変わらないな……」
「うっせぇ。違う奴らにしようかな…どう思う?」
今村が普通の顔立ちの青年に絡んでいる間に3人の美男子たちが打ち合わせを開始した。
「…どうする?今の内に変に対等関係で話させるのをやめさせてもらいたいんだけど…」
「いい加減様とか付けた方がいいよなぁ?立場分かってからだと冗談真に受けてた気がしていきなり殺されるかもしれないってこえぇし。」
「……同感だ………」
3人の方は顔を見合わせて頷いた。
「あー、今村様。一応俺らって自己紹介した方がいいと思うんですが?」
「おーんじゃ頼むわ。」
今村が生意気だと言って中々強めの食人植物に吊るしている青年の方を見るのを止めてこちらを見たので言いだした男から自己紹介を始める。
「俺はシエテです。今村さんには前世で小さい頃からお世話になってました。特技は武器製造と武芸です……まぁ今村さんには全然及びませんけど。」
「え?タナトスさん何で急に偽名を?」
「黙っとけ日馬。折角落ち着き始めたのに戦闘したいのか?」
食人植物の魔の手から逃れた青年、日馬がタナトスに質問するもタナトスに睨まれて速攻で黙った。が、タナトスが今村に視線を戻した頃には今村はタナトス達を見ていなかった。
「あーこっちからタナトス、トーイ、イグニスか。被検体番号から付けた名前とか止めといた方がいいぞ。」
「『呪式照符』……使い方とかの記憶も無くなったんじゃ…いや、その、騙そうと思ったわけじゃなくてですね。」
トーイとイグニスは既にローブで捻じ伏せられていた。その更に横では日馬を絡めていた食人植物が中性的な顔立ちの美少年に絡んでいる。
「んじゃ…そこの生意気ボーイは置いといて、君~遊んでないで自己紹介してくんない?」
「えぇっ!?これ遊んでるように見えます!?こんなに必死なのに!?」
「……諦めろ。今村さんにとっては児戯にすら見えんだろう…」
どこぞのヴィジュアル系のように明後日の方向を見ながら呟くトーイ。話が進まないので今村は食人植物に脚を足してお家に帰らせた。
「…………本当に規格外ですね……えぇと、僕は白水です。今村さんとは僕が小さい頃に会ってるらしいですけど、5歳の頃なので良く覚えてません。」
「ふーん。俺も。ん?白水ねぇ…何か俺が行こうと思ってた高校の名前と一緒だ。」
「あ、僕そこの理事長の息子です。」
「へぇ。理事長の顔も覚えてねぇから何とも言えねぇが…まぁ飲み会を開始しようか。」
世間話を程々にした後は今村が準備しておいた食事を食べながら本日の議題に入ることにする。それが終わってから宴会だ。
「ほいっと。んじゃ、俺のことは何か知ってる奴が多いみたいだが一応自己紹介するよ。今村だ。最近記憶喪失で【移ろう者】とかいうキャラブレの奴を殺すために全力を出した所為で前よりさらに弱体化傾向にある。敵意悪意を向けると反射的に殺すかもしれないから気を付けて。」
【移ろう者】という言葉を聞いてトーイが固まり、その理由を聞いてイグニス、タナトスも固まるが今村は続けた。
「んでー死にかけて帰って来たら何か知らない人たちが心配心配言って過保護状態になってる。その打開策を皆で考えようと思って呼んだ。因みに俺としては偽造死がいいかな~とか思ってる。流石に色々失敗してるけどあれだけ迷惑にならないように全力で尽くす奴らを問答無用で皆殺しはちょっと…」
「…いや、ちょっとどころじゃ…っていうより、確か自分の記憶なくなる前に全員の記憶盗ったんですよね?もう一回それをすればいいんじゃ…」
日馬が意見を出すが今村は少し考えた。
「……連続だと廃人になりかねんが…マキアが何とか治したって言ってたが綻びてるし…まぁ考えとく。」
「いや、考えちゃ駄目です。他の案に行きましょう。」
日馬がそう言うと白水が手を挙げた。
「あの、今村さんは僕みたいに優柔不断じゃないみたいですし、きっぱり断ったらどうなんですか?」
「んー…どうだろ。幻覚で全員皆殺しにしてこうなりたくなければ引き下がれって言ったやつより上か……何があるかな?」
「え、あ、ちょっ…とそれ以上だと僕も…」
「…適当な奴らに強姦させるとか?流石にそこまで嫌いってわけじゃねぇし…」
「別の案に行きましょう。」
今村が考え込み始めると議題進行係になったらしい日馬が仕切り、硬直から戻って来た3人も話しに混ざり始めた。
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