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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十七章~ロールプレイ~
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12.混沌とした場

「かっは、ゲホ……あー普通に帰って来たねぇ。」

「そして死ね。」


 今村が倒れたままの状態で城に帰って来たと同時に冷たい声が聞こえ今村の腹部に槍が突き刺さった。


「オイオイ…まだ生きてたんかよ…」

「第一世界舐めるんじゃないわよ。『バーストクラッシュ』」


 最早笑うしかない今村に対して【移ろう者】は疲労感たっぷりにそう言って術を発動し、今村の腹部を破裂させて顔を顰める。


「ちっ…そう言えば猛毒液だったね。刃先が完全に溶けてる…でもまぁもう終わりでしょ。あーこれでよし!首貰って行くね~」


 首に迫る切れ味の鈍った穂先。しかし、今村はそんなものを見ていなかった。今村が見ていたのは自分の腹部。


 でもなく、腹部から飛び散った血がべっとり付着した本棚の本だった。瞬間、頭の奥から冷たい物が流れる気分になる。


「…『転移方陣』『王獄の』『死呪過多の獣』『破壊宴技』『グラックル』『アルグルス』『死犠利鬼刀しぎりきがたな』」

「!?」


 槍は消失し、気が付けば【移ろう者】と今村は城の闘技場へと移動していた。その状況把握に努めた一瞬で【移ろう者】は全身に無数の傷を付けられた。


「な…っ!?」

「『侵略の証クラッカーズエンブレム』『破戒刀獄』『呪氣円刃』あぁそうか。『壱禍倒千』『弐禍倒万』『惨禍死億』『死禍骸兆』『伍禍壊京』『陸禍崩星』『失禍破界』『苦禍裂世』―――『呪禍滅全』以て発動せよ『数え殺し』」

「……あ、お帰り。」

「………………大怪我してる…アレ?ナンデ?オカシイナ?アレ?アレェ?」


 一連の攻撃で今村が創世した世界が崩壊しかかったのでそれを止め、元凶の排除に来た幼女ズが今村を見て【移ろう者】に激しい敵意を向ける。


 だが、今村の方が止まらない。既に死んだ【移ろう者】だが、特性上復活する彼女が再生できないほどの存在値への損傷を受け、既に原型を止めることができていないのにもかかわらず連撃を続ける。


「『浸透烈破掌』『真破烈倒掌』ここに祈りを済ませ、鬼を消し、天を決める神業よ。我が身に宿りてその業を晴らさん。【死に業・鬼】『鬼砕き』『鬼殺し』『鬼神双破』『鬼邪殺し砕き』【死に業・消】……あーちょっと退いて。」

「アハハハハハァアッ!皆死んジャエェァェ!」

「『血染め黑夜』」


 今村は止まらなかったが、周りにいた幼女たちも止まらなかった。復旧限界を超え、塵と化しつつある彼女に猛攻を捻じ込み続ける。


「うーわぁー……これ、僕らが居なかったらどうしてたんだろ…」

「しりません。でもまぁあのかたならまあいっかですましそうですよね?」

「血が勿体ないなぁ…」


 遅れてやって来た外から世界保護をしている3人は本気で保護結界を張り、その余力で【移ろう者】に攻撃を加える。


「……止まれ。この腐れ砂利には謝罪をさせる。存在自体がゴミの癖に生まれて来て挙句には本という自分では到底価値が分からない神のような存在を穢すようなまねをしたことを謝罪しろ。今すぐにだ。」


 今村の言葉に【最低最悪最狂】が気を利かせて【移ろう者】の頭部から首に掛けて復活させ、神をぞんざいに持って血塗れの本の前に生首を添えた。


「だ、誰…がぁっ!げごっおげぇっ!」

「謝罪以外の発言を許した覚えはないが……?あー汚ぇもんだしてんじゃねぇよ虫けら。ほらこの『週刊・筋肉大冒険』………誰がこんなもん読むんだ?」


 本棚に立て掛けるようにしておいてあったのはどこかの変な国の週刊誌だったことに今村は今更ながら気付き、首から上だけになっている【移ろう者】の顔面に叩きつけた。


「写真集は保護対象外だ。好きにしな。そのアドミナブル&サイで表紙が飾られてるそれは冥土の土産にやるよ…」

「オーノー!ボス。他の本を庇ったのにそりゃないぜ!」


 そう言って召喚幼女4人組と龍による一撃で完全消滅させようとしたその時だった。黒光りする腹筋と発達した大腿筋を見せつけるようにポージングしていた表紙の男が実体化し、【移ろう者】を踏みながら今村にそう言ってきた。


「あららこりゃ別嬪さん。首から下がないのが残念だね。」

「ジョージ。遊んでる場合じゃないのよ?今まさにボスから免職クビを言い渡されてるんだから。職ナシなら見捨てるからね?」

「オイオイ待ってくれよナンシー。職もなくなってお前にも捨てられたら俺に何が残るってんだ?筋肉だけじゃないか!」


 何か急に他にも血が付着していた本の一部が人間になり、コメディチックなアクション映画の一幕のような舞台を繰り広げ始める。

 今村がそちらを見ている間に他5人が全力で【移ろう者】を滅殺し、巨大な力の奔流により今村が事態の終結に気付いたころには今村のテンションはガタ落ちしていた。


「……何か急にテンションが抜けて来た。あー……」


 それと同時に体全体の力が抜け、その場に膝から崩れ落ちてしまう。


「!?」

「……ぁ?」

「おもってたよりまずそうですね……すぐにてあてしましょう!ハニバニさんはしんにゅーしゃをみなごろしに!」


 【破壊魔導姫】の指示に従いハニバニと呼ばれたバニー姿の美幼女は一つ頷くとこの場を隔絶空間としてさらにもう一つの空間を生み出してそこ経由でなければこの場に何人も通れないようにして番人役として出て行った。


「えーと、桜花ちゃんはもーどくじゅえきのちをなんとかして、へんたいさんはよどみをながして!」

「わかった!」

「……変態って俺?いや、俺の方見てるから間違いないだろうけど……」


 【消血妖鬼】は元気良く頷いて幾つもの術式を展開しながら術式コードを円形につなげる。

 【最低最悪最狂】も釈然としないまま様々な特殊術式を行使する。


「アルマちゃんはわたしのおてつだいをたのみます!」

「………ぅ……ん。」


 膝から崩れ落ちた今村はうつ伏せから仰向けに倒され、薄れ行く意識の中でそう言えば痛みを感じないな…といったことや筋肉の人はどこに行ったのかなどととりとめのないことを考えながら気を失った。




 ここまでお疲れ様でした。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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