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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十七章~ロールプレイ~
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8.フラグの強制力

 燕軍との戦争による敗走から2日が経っていた。夏候惇は何とか逃げ込んだ城で眠ることもなく城門の詰所前に居続ける曹操の下へ来て何度目かもわからない溜息交じりの讒言を言う。


「孟徳…お前いつまでそうしているつもりだ?」

「…私の我儘と失策のために戦っている者が居るんだ。戻って来た時に出迎えもなしというわけにはいかんだろう…」


 曹操の変わらない返事に夏候惇は苦い顔をして言う。


「お前も、もうわかってるだろう?」

「約束したんだ。」

「お前は君主だろ?上に立つ者だ。」


 夏候惇の言葉に曹操は聞く耳を持たない。夏候惇の曹操を見る目は次第に憐れむものに変わって行く。


「殿。お食事だけでも…」

「いらぬ。下がれ。」


 下男に指示を出していた張遼の言葉ににべもなく拒否を示す曹操。続けて言う。


「お前も食べていないだろう?」

「……いえ。私は…」


 張遼が言い辛そうに否定する。だが、警護と称して傍にずっといたのだ。条件が違う訳がない。そんな空気が悪くなった中で櫓の上から伝令が下りてくる。


「殿……我が軍の……今村殿の私兵が…」

「!帰って来たのか!」

「はい、ですが…」


 落ち込み気味だった空気が一気に晴れるかと思ったが、兵の苦りきった顔で続く言葉に一行は黙ることになる。


「今村殿の姿は…」

「っ!確認するぞ!」

「殿!危険です!」

「孟徳!落ち着け!」


 二人が讒言する緊迫した雰囲気の中に突如として黒髪の小柄な少女が現れ、曹操の頬を引っ叩いた。目の前の光景を理解するのに少々の時間を要しやっとのことで張遼が声を漏らす。


「奉孝殿が…外に出られた…?」

「いや、驚くべきところはそこではないだろう。」


 張遼のずれた発言に夏候惇が呆れたようにそう言う。そんな両者の前で曹操が目の前の少女、彼女の配下である智将の端正な顔を睨みつけて怒りの声を上げた。


「何をする郭嘉。」


 それに対する郭嘉の返答は一言だった。


「腑抜け。」

「…は?」


 いきなりの暴言に固まる曹操。それに取り合わずに郭嘉は続けた。


「フヌケ。いつまでそうしてるの?お兄様が帰ってくるわけないじゃない。その程度も分からないの?」

「郭嘉。幾ら貴様でも許さんぞ…?あいつは私と…」


 曹操は怒りを凝縮させ、冷ややかな物に変えるが対峙している郭嘉はそれよりも冷ややかな声で言った。


「約束したって…死人にはそれを守ることは出来ない。」

「あいつは死んでなどいない!」

「うるさい!お前の所為で死んだってことをいい加減分かれっ!」

「奉孝殿!流石にそれは!」


 激昂する郭嘉を止めるべく張遼が間から口を挟む。それにより郭嘉の怒りの矛先は張遼へと向かった。


「…何?私、何か間違ったこと言ってる?」

「今村殿にも何か考えがあられたはずです。既に死んだというのは早計でしょう。」

「そうだ。あいつはそう簡単に死ぬなんて…」


 張遼の言葉に便乗する形で曹操も続けるが、郭嘉は人を見る目つきではないほど興味なさ気に彼女たちを冷ややかに見据えた。


「私は、城から出る前にお兄様を止めたの。現状も把握できずに理想を掲げて戦いに向かったあなたたちのために死んでほしくないって、泣いて頼んだの。」


 その言葉だけで処刑されてもおかしくないことを郭嘉は殺したければ殺せと言わんばかりの態度で言ってのけ、息を切らさずに続ける。


「でもお兄様は止まらなかった。『俺が行かないと皆死ぬから…』と笑って考えがあるのか訊いても『特にないけど足止めならできるだろ』って止まらなかった。」


 郭嘉は目に涙を浮かべながら続ける。


「お前らの所為だ……ック…私は絶対に許さない……でも、託された国を、残された場所を蔑ろにするのはもっと許さない!」

「私は…」

「戦え!あなたは誰なの!?単なる個人じゃないでしょう!?君主として何をするのか、もう知ってるでしょう!」


 郭嘉の一喝に曹操の目、そして心に火が入ったようだ。


「……託されたのか………どうしようもない、感情で動く私にあいつは…ならば私は誓おう。この先、何を犠牲とすることがあっても、あいつに託されたこの国で、天下を統一してやることを!」
















「こうして乱世の奸雄・曹孟徳が誕生したのであった。的なモノローグが付きそうな感じのホームドラマだったな。色々突っ込みたいけどどうしようか?」

「……まぁ、こういう世界だし。野暮なことは言わないであげたら?」


 当然ながら今村は生きていた。300の兵で殿を務めた後、不思議素材のワイヤーブレードを迂回しようと分化した時点で穴と不思議素材をライアーの能力で消してから分断部分を強襲。

 秩序を取り戻し掛けの時に喰らった一撃によって燕軍は大混乱の坩堝に叩きこまれ、今村の異名と相まって及び腰になったところで敵将の首が挙がり、完全に浮足立った。


 その後は撤退を始めたので今村は負傷兵を後方にある曹操たちがいる城に下げつつワイヤーブレードの恐怖による投降者とともに逆進攻を開始し曹操たちが失地した分を取り返してさぁ左慈仙人との遊びを見るために帰ろう。と思ったところで曹操たちがちゃんと生きてるか気になったライアーから曹操たちの現状を一緒に見せられたのだ。


「完全に俺死人扱いだよな…いや、やっぱ死亡フラグさん強いね。この前のゾンビのときはその世界からの死亡扱いで今度は社会的に殺しにかかったか。」


 今村はまず感心することにした。思ってたより死亡フラグと言う物は効果があるようだ。次いで次の疑問に移る。


「…何で俺に妹が量産されてんだ?一匹でもウザいのに。」

「仕様だから仕方ない。どーする?戻る?」

「あんな状態で戻ったらアレだろ。あ、負傷兵が大変なことになってる。」


 ライアーから見せられたモニターでは今村の安否を聞いて「知らない」と答えられて泣き崩れている者と信じられないと問い詰められ、唯でさえ負傷しているのに酷い目に遭っている負傷兵が居た。


「…そりゃ知らんだろうな。頭に血が回ってないんだから落ち着いてから話を聞けばいいのに。死にかけじゃ頭回んないから単純思考しかできないだろ。」


 初期の戦闘で負傷した兵たちなので現状を知るわけがない。そして怪我を押して安全地帯まで戻っているので自分のことで手一杯で今どういった答えを求められているかなど細かいことまで気が回らないだろう。


「ごしゅーしょー様だな。戻るのには空気もアレだし、呂布のところに行くか。」

「ん?兵とかどうすんの?」

「…ここの辺の空白地帯を治めさせよう。最悪、元黄巾軍の所に身を寄せればいいと思うよ。多少経営難だろうが人手も欲しいはずだし。」


 この後今村は傷心状態だったらもしかすれば玉の輿狙えるかもよ?的な話と自分は死んだことにすれば曹操軍に戻っても昇進間違いなし!ということ、また戻らなければ一国一城の主だよ!と伝えてから呂布の下へと北進して行った。




 ここまでお読みくださりありがとうございます。お疲れ様です。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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