4.やってられない気分
「さぁて…まずやるべきことは黄巾を紅巾に変えることだなぁ…?」
今村は張角から統帥権を受け渡されるとライアーに伝令を任せて諸将を集める旨を張角に伝えてそう呟いた。
「え、あ…その、…えぇと……」
「あ?土を表す黄色で漢王朝の象徴である火を消そうって意思を表して黄巾つけてんだから現状の黄巾はアウトに決まってんだろ。思ってた状態から今の状況は乖離し過ぎてんのは分かってんだろ?無辜の民を虐げまくる口実になってるだけの現状を変えたけりゃすぐに変えろ。…んで、拒否する奴が居たら連れて来い。それの血で黄巾を赤く染めてやるから。」
黄巾幹部を召集しに行かせていたライアーが突如現れ、どこのレッドキャップ?という突っ込みが入るが適当にあしらい何が起きたのか全く分かっていないといった顔をしている幹部たちを睥睨した。
そして至極真面目な顔をしながら思う。
(…何か作りが雑な気が…いや、普通こんな感じだっけ?久しく人の顔を自分から見てないし対人の記憶ないから忘れた。最近見た奴等は基本美形だしクロノはその中でもアホみてぇに可愛いから、そればっかり見させられていたら周りが変に見える。…つーかそれでもあいつらは分かりやすいよな…示し合わせたかのように髪の色と目の色が違うし…こいつらは皆黒髪で茶色目か黒目しかいねぇし…これじゃ覚えられん…)
名前は知っているが顔とは一致しないことが分かった今村は史実などでも目の前の短絡的な仕事しかできない所詮村の力持ち的な感じでしかない彼らを覚えるのは諦めた。
「太賢良師様!こちらの方々は…」
「控えなさい。こちらの方は畏れ多くも天帝様であられます。我々の不甲斐なさのため、天から舞い降りて来てくださった方です。」
今村は張角がナチュラルにライアーのことを無視していたことに関して少々思うところがあったが気にしないことにして命令を下す。
「黄巾を赤く染めろ。それと、今から言う話を覚えろ。いいな?」
今村はそう言って張角が南華老仙人から薬丹の秘術を教えてもらい、人々を救っていたところで患者の誰かが世が悪いのは朝廷の所為だと怒りながら待ち時間を過ごすことで次第に仲間が集まり、名声を得ていた張角の名前を勝手に使われたこと。
そして、病を得てしまったせいで患者を止めるべく動くことが出来なかったがもう一度彼の仙人が現れ、治したことで今から朝廷のために戦う。
という話をして、拒否する者は理由を聞いて論破して、納得いかない者には放逐勧告を下し抵抗するようであれば殺し、その後に恭順の意を示した者たちに復唱させて内容を覚えた所で解散させた。
「ん~卞喜に裴元紹。張牛角、張曼成…だったかな……?何か時代が変だけどまぁいっか。」
解散させた後に反抗して来た幹部たちの死体を曝し、罪状を高札に掲げておく。
「さて、お次は官軍に合流する前に賄賂の手筈がいるな。皇甫嵩とか朱儁は手柄の独占欲が強いし…ん?いや、朱儁は賄賂上等だからそこに入って不慮の事故でご退場…」
今村はそう言いながら張角の命令に不満げで今村を何とも言えない目で見ていた張梁を更迭する檻を見送った。
その後ろではライアーが今村のことを鬼だの悪魔だの言って張角と談笑しようとしている。しかし、張角は泣きそうな顔をしていたが首を振って反論する。
「いえ、ここにいるのは志を同じくしていたはずの者たちのはずです。民の暮らしの安寧を願っていたはず…それが、いつの間にか太平道教で天下を獲るために戦うという間違った方向に行っていると天帝様は語られました。それを無視した彼らの自業自得だ…と…」
「いやいや、ここまで苦楽を共にしてきた挙兵時からの戦友を彼ぶち殺したんだからもっと怒っていいと思うよ?」
「…まぁ恨むなら恨め。」
今村はライアーがチャラ男に見えたので一度殴っておいてこの軍の混乱が収まるまで殺した将がいた城に籠ることを提案した。
「…あ、その前にっと…ライアー。お前って人を騙すのが三度の飯より好きなんだろ?ちょっと行って来て。」
「ん?人聞きが悪いなぁ…まぁご用件があるならやるけどね。」
今村はライアーに黄巾軍から太平道軍に名を改めさせ新編成した軍の中に入って噂を流すように伝えた。
(…まぁ死人に鞭打つが……しゃあない。本当にやってたかもしれないし、噂の範疇で流すだけだからまぁいいだろ。)
噂の内容は大まかに
処刑された将たちは別働隊を使って無差別に村や町を荒らしていた。
その中には今軍にいる君らの家族もいたかもしれない。
太平道教は民の安寧と平和のために在り、それは望んでいないことだ。
幹部たちの裏切りに気付いた今からは本当の目的のために戦おう。
こういったものだ。それを流すように言った後、今村はまた思考を進める。それと同時に誰に聞かせるでもなく声を漏らした。
「さて……策謀とか嫌いじゃないが俺は殺し合いをしたいからなぁ…ちゃっちゃと場を整えて殺り合いたいなぁ…まぁこの辺で戦えるっつったら「クーデレ娘曹操たん!ツンデレ娘袁紹たん!そして南下して来てるのは」テメェは仕事に行け!」
独り言を言っているとライアーが地面から顔を出して無駄なことを言ってきたので蹴りを入れて追い出す。
「上手く行かなかったらどうしよっかなぁ~?ねぇ?」
今村はライアーを追い出した後、病み上がりの張角が横になっているベッドに腰掛けて非常に答え辛い質問をしてみた。すると張角は困ったような顔をして訊き返してきた。
「そ、あ、……え?あの……神様…ですよね?」
「今は休業中って。大体神だからって何でもできる奴はあんまりいねぇぞ?」
思考放棄を始めたらしい張角に今村は少々厳しめの目を向けて続ける。
「俺は助けるとは言ったが…助かるにも助ける母体が諦めてたらどうしようもないからな?ある程度は自分で考えろよ?」
「はぁ……」
今村の言葉を聞いているのかいないのか張角は急に眠りについた。今村はそれを見て「過歳生薬」の効果が2段階目に入ったと分かると気になる事があったのでライアーを呼んでみた。
「ライ「呼んだ?」…あぁ。ちょっと変なことを聞いた気がするからな。」
土から生えて来たライアーを連れ、今村は外に出る。そしてある程度陣から離れたところで質問する。
「…これ、時代とかどうなってんだ?あと、将とかの扱い…」
「ん?超適当。えーと、後漢末期から三国時代の終焉までのキャラの中で有名な人が有名になったところとかで各々領地を経営してる状態。あ、イベント熟さないと出て来ない人もいるけど。亮たんとか。孫家とかは3代揃って建業にいるよ?」
それなら、と今村は続けて訊く。
「呂布はどこだ?」
「…ロリコンだったのか…成程。」
好戦的な目をしている今村を見てライアーが何を勘違いしたのか戯けたことをぬかした。今村は暴力に訴え出ようかと思ったがその前にもう一つ訊いておくことが出来たのでそれを先に行う。
「…もしかしてだが、」
「ん?多分君は呂布も女?とか訊くんだろうけど先に言っておくね~?全部女の子。董卓様も貂蝉姉様も百合百合んだし、み~んな女体化してるよ☆やったね大ハーレム!」
今村はむしゃくしゃしたのでライアーを殴り飛ばして空中で更に打ち上げ、蹴りで落として地面に埋めて立ち去った。
後ろは振り向かなかった。そしてふと気が付くと目の前にはお帰りと言わんばかりの笑顔でライアーが両手を広げていたので更にイラッと来て足蹴にした。
ここまでありがとうございました。




