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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十六章~遊びましょう~
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7.趣味ですが何か?

「はっ!本性丸出し!」


 信管を抜いてある手榴弾を投げ落としておいた今村は戻ってからモニターを見てそう嘲笑した。


(…まぁ対大きい奴はそれなりに有意義だったが…もう社畜ゾンビはいいや。あのゲーム飽きた。)


 そう思って機械から取り外しを行い、別のゲームを適当に箱の中から出して設置しておく。中身が何なのかはよく知らないが、まぁ面白くなければ出ればいいだけで特に気にしない。


 因みに箱の中は地球で捧げられた供物の内容をそのまま出したものだ。最初にと書かれた欄にアクション、RPG、育成、恋愛シュミレーション、などの一通りの種類が入っていた以外の並びとジャンルは超適当。


「あ、帰って来た!お帰り!遅くなくてよかったぁ~!」

「…まぁ行ってきたところのキャラウザいし。早く帰って来るけど…そろそろRPGの方が進むかな。」


 今度こそ炭鉱で軽く中毒になって死にかけている勇者(瀕死)の所に行かないといけないと決めている今村は寄って来たクロノにそう言った。


「…クロ…私も行っていい…?」

「…来れるんかね…?その辺分からん。」

「……じゃ、じゃあ。早く帰って来て。お留守番するから…」


 どちらにしろそんなに時間をかけるつもりはない今村は頷いてゲーム世界の中に入って行った。



















「…お、発見。」


 鉱山中毒で意識を失い外に出されていた高飛車勇者を発見すると今村はその勇者を起こした。


「ぐ…あ…お、お前は…」

「お前って口が悪いなぁ…折角遺体の引き取りに来てやったのに。」

「ざっけんな…げほっ…俺は死なねぇ…第二の人生…で…俺は…」


 高飛車勇者が何か言っているが今村にはあまり関心がない。というより今村が今やりたいことはそんな事ではない。


「ねぇ?今どんな気分?」

「……は?最悪に…決まってんだ…ろ…」

「まぁ俺は別に断罪するわけじゃないが…特に被害をこうむった訳じゃないしね。でもまあ一応言っとく。最悪なのはお前だけどね~こちらにはちゃんとデータが残ってまーす!読み上げるね?」


 今村の目はネズミをいたぶる猫のような目をしており、口の端は笑いを堪えているようにしか見えなかった。


「さて、誕生の辺りは…まぁ幼いことを良い事にメイドとかにセクハラ三昧はいいとして…おっとこれはよくない。幼少期の人柄を視て祝福を与える精霊に俺以外に『真水の勇者』の適任者はいないんだろ?弱い奴だと死ぬのが怖いから戦いに行かないぞ?と脅しをかけて最大限に付与を受けたな?」

「な、何で…?」


 突然告げられた彼にしか知りうることのないこと。それを受けて彼は困惑する。しかし、今村は歪んだ笑みを浮かべて言った。


「続けよう。君は12で精通した。そんでもって幼馴染を半ば強引に犯しました。…はぁこの腐れロリコンが…強くなるために頑張ってる姿を見て仲良くなるはずの努力なしでチートの強さを誇る君はあんまり好きじゃなかったのに。」


 今村は溜息をついて続ける。


「はぁ。庶民の幼馴染はいくら強くても権力には勝てません。哀れ、お貴族様のあんまり好きでもない野郎の言いなりになって…あぁ可哀想にねぇ?」

「黙れ…ドロシーは…」

「証言者!おいでおいで!」


 今村は嘲笑を浮かべながら紺色のローブをまとった赤髪の少女を召喚する。


「さぁ!彼の家は既に没落した。何を言っても構わないんだよ?」

「……っ!何で、ここに…」


 状況が呑み込めない少女だったが目の前にいる高飛車勇者を見て嫌悪と怯えを滲ませた顔になる。それだけで十分だった。


「あなた、誰?私をどうするつもり?」

「俺は化物、狂い人、壊れ人…まぁ好きに呼んでくれるといい。今俺がやってるのは趣味。屑が苦しんでるのを見て愉しんでる。あ、俺は別に被害者じゃないからこいつを偉そうにどうこうする気はないけど君は被害者だから何してもいいと思うよ。」

「…シンヤ様の家は…」

「こいつが姫に手を出そうとして騎士に返り討ちにされ、その後も窃盗やら住居不法侵入。また王都保護動物の殺戮及び保護植物の無断採取。それに王族への不敬罪に禁止地区への侵入。これだけあれば没落するだろ。本っ当に色々やってきたからなぁ…なぁ?」


 今村は邪悪な笑みで彼にそう話し掛ける。彼は何か言いたそうにしていたが口を噤んだ。


「何かあるならどーぞ?あ、個人的に笑ったのは味噌とか醤油の製造。アレ、素人が適当にやるとかマジ馬鹿じゃね?同じ菌があるかどうかも分からんのに…まぁあるんだけど。それはいいとして、君が認識してる麹菌の類の近縁種ってヤバいぞ?アスペルギルス・フラブスとかアスペルギルス・フミガーツスとか後…まぁいいや。取り敢えずそいつらは発ガン性物質を作るやつらな。それと当然アスペルギルス症を発症させたりする力もある。」


 今村はノリノリで喋るがあまり理解していなさそうだったので言い換える。


「要するに、君の研究に付き合ってくれた人たちは幅広く死ぬね。抗生物質もない上、医者も少ない世界。それに感染に対する知識も少ない。でもまぁ不幸中の幸いと言っていいかお前が没落したから製造も止まったけど。」

「嘘だ…醤油作りは…皆やるし…」

「そりゃ失敗者を話にあげることはあんまりないしねぇ…まぁその辺はいいよ。君みたいに中途半端な知識で黴を木灰で培養してドヤ顔でアルカリ性で麹以外の毒性菌が死ぬって言ってたのがウケただけ。えぇ趣味が悪いですが何か?君に言われる筋合いはないと思うけど。」

「うるせぇ…うるせぇっ!」


 彼は幽鬼のような顔で今村を睨んだ。今村はそれをガン無視して隣にいる被害者の元高飛車の幼馴染に声をかける。


「恨み言ないの?」

「…あの、あなたは本当に誰なんですか…?」

「狂人。ってか恨み言ないなら帰る?何か別場面でちょっと忙しくなって来たっぽいからちょいと巻き入ってるんだけど。」


 今村はだんだん目の前の存在に飽きてきたのでさっさと移動したくなって来ていた。幼馴染の彼女は幾つか言葉を彼にだけ聞こえるように言ってから帰還を望んだので今村はその通りに実行した。


「ん~にしても…思ったより慕われてて良かったなぁ?…まぁ今更知っても遅いけどね。もう死ぬし。」


 幼馴染の彼女が隠すように言ったところで今村の聴覚から逃れられるはずもなく今村はそれをネタにして更に彼を追い詰めた。


「さて…廃人みたいになってきたし最後に訊こうか?」

「…好きに…してくれ…」

「今どんな気分?」


 今村は訊くだけ訊いて返事を聞かずにその場から去って行った。



















「あ…あぁ…あぁあぁあぁぁぁぁあっ!」


 モニターに映っていた場所、前回の中ボス戦の場所へと移動すると少女が慟哭していた。彼女は今村の姿を認めるとフラフラと近付いて来る。


「私は……今村さん…私は人間じゃないらしいです…」

「おっけぇい!」


 付添いの勇者が壊れそうな追い詰められた儚い顔でそう言ってきたので今村は彼女の分まで元気よくそう答えた。


「…人間じゃない…しかも……人間が、一番嫌う…」

「魔族ね!おっけい!ってか確認がしつこい。魔王だろうが何だろうが其が其であり他が他であることに変わりない。俺の認識は基本的に個体意思で行うものであって種族とか肩書で行う物じゃない。さぁまだ言うか?」


 今村の言葉に不意に顔をくしゃりと歪めた彼女はそのまま今村に抱きついて来て号泣した。


「よ…かったです…うわぁあぁぁぁぁあん!」


(…危ね。何か急に来たから投げ飛ばしそうになった。)


 そんなことを思いながら今村は彼女が泣き止むまで待った。




 ここまでありがとうございます。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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