表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十六章~遊びましょう~
303/644

5.フラッグ

 立てこもっていたビルの中はシャッターが壊れて中に敵が侵入して来ていた。その為、道を選んで主人公一行は逃げていたのだが…途中で足の遅いカホが逸れていることに主人公は気付いた。


 そこで主人公は止まって戻ろうとしているのだ。


「話せみのり!カホが!」

「だから何回も言ってるでしょ!?あんたがいなくなったら私たち…」

「先輩…行かないで…っ!」

「あぁもう!これじゃ埒が明きませんわ!いっそ一回落として…」


 モニター越しに見ていた言い争いを止め、幼馴染キャラが羽交い絞め。ロリキャラが腰に巻きつき、高飛車お嬢様キャラがスタンロッドで落とそうかとしている中で今村は薄く邪悪に笑いながら言った。


「俺が行って来るよ。」


 そしてその案はさも名案かといった具合に受け入れられる。


「仁!行ってくれるのか!?お前なら安心だ!」


(何を以て安心だっつってんだこの能無しは…さっきからいちゃいちゃして危ないことは他人任せのヘタレ野郎。もうすぐゴールだからちょっと自分の心にゆとりが出来てから周り見て一番の想い人がいないことに気付く屑め。お前程度の恋慕は応援しない。今すぐ風穴開けてやろうか?)


「そう…ね。仁なら…」


(大切な片思いの幼馴染の為ならもう一人の幼馴染くらい死んでもいいってだろ?何が俺ならだ?俺なら死んでもいいってか?)


「が、頑張ってください…!」


(はっ!本心じゃ主人公攻略キャラでの一番の有力候補共々死んで来いって思ってる癖によぉ…いやマジこのキャラ不憫だね。何が悲しくてこのグループの中に居続けたのか…)


「そ、そうね。あんたが行ってくれば先程のことはなかったことにしてあげてもよろしくてよ!」


(アレは元々逃げられるのに逃げなかったお前に責任があると思うんだが?その証拠に俺がいなくなってからすぐに逃げて来たし。第一お前は何様だ?)


 そんなことを思いながら合流地点を地図で確認。そして別れた。




 ここから先は今村のパーティタイムだ。まず最初の気分はシュワシュワちゃん。Nirinco YL-1887Lでどっぱーん!


 もちろんそこからくるりと回転させてリロードして(実際は動作の必要はない)もう一回どっぱーん!


「やべ、楽し。」


 ショットガンでゾンビと疑った者(・・・・)は殲滅していく。しかし、思いの外くるりは飽きるのが早かったので次もシュワシュワする。M79グレネードでどごーん!だ。


 しかし、このグレネードランチャーはビルの中で使うものではない。軽く崩壊しかかっているのでちょっと残念ながらも変な空間に仕舞う。


「んじゃ…PDWで行こうか。無難に。」


 そう言って今村が出したのはストック展開済みのKAC 6×35mm PDWとPP-2000という広義で言うところのサブマシンガンだ。


 そして、理不尽な無限弾薬と言う設定の物。


「米・露の共同戦線ですよっと!どいてどいてー!」


 アーマーを貫通できるように設定され、片手での使用が可能化されるほどの反動の低さ。尤も、今の今村の能力的に言えば撃った反動などあってないようなものだが…


「トリガーハッピー♪ん~にしても…殺した感触が薄い気がする…殺害とかの罪の意識とか生々しさに欠けるよなぁ…あんまりよくない…」


 一応憧れではあるので一度やってみたがあまり好感触ではなかった。そんな感じで進んで行くと目的地付近に着いた。


 原作ではハーレムの中でも一番可愛い設定の一目惚れキャラの可愛さに釣られて性欲を満たそうとしたゾンビが増えて隠れている所、初期に高濃度の原液によって感染した中ボスキャラが一気に突撃して襲う直前で庇うという流れだが―――


 今村は最短をドンパチしながら進んで来たのでまだゾンビの群れしかいない。


「ん~あんまりシナリオからずれると俺の方で管理が出来なくなるが…まぁいっかバレッタだけにして隠し持ちながら避難誘導するかね。」


 ということで今村はハンドガンを一応隠し持ち、ゾンビどもを体術でぶちのめしながら隠れているドアの方へと進んだ。


(やっぱ自分の体でやった方がいいな。これで一応方向性が決まったけど…飛び道具もいいんだよなぁ…戻ったら調べるか。)


「えーと…誰だっけ?ミクリヤさーん?逸れて引き籠りのミクリヤさーん?」

「い、今村くん!?待ってて!今入れるから!後私はミクルベだから!」


(…おぉ、そう言えばそうだった。)


 若干間違っていたが大体合っているので気にしないことにする。ついでに足音を消そうともしないゾンビに後ろ蹴りを叩きこんで吹き飛ばす。


「開いたっ!今む…す、すごいね…」

「さーぁお姫様逃げようじゃないか!この地図を渡しておくから合流しないと。」

「う、うん!頑張るね!」


 小さく両手でガッツポーズ。それを見た今村はあざといなぁ…と思いながらトイレの掃除用具を拝借しておいたのでそれを渡しておく。


「おか…犯す…あ゛ぁ…ぐぎゃっ!」


 何か来たが今村は蹴り飛ばす。ミクルベはあんまり接点がなかった人だが少なくともこんな異常な戦闘力を持っているのだろうか?と思いはしたものの助かるのであまり深く考えないことにして今村に付いて行った。


「今村くん…皆は?」

「逃げた。おっと…」


 今村はゾンビどもの動きがおかしいことに気付く。そして面白半分にこういう場面で言っておきたい台詞を並べてみることにした。


「今村くん?」

「また、皆で戻ったら騒ぎたいな…」


 その気はない。だが、急に変なことを言いだす今村にミクルベは怪訝な顔をする。そんなミクルベの様子はガン無視して今村は続けた。


「俺、戻ったら誰かと結婚するんだ。」

「誰かって誰なの?教えて?」

「…知らん。」


 生まれてこの方恋愛感情を持ち合わせていないのでその辺は適当に曖昧に誤魔化しておく。


「後…あぁ、ひゃはははは!来いよ化物!俺がぶっ殺してやる!」

「い、今村くん?まさか…今村くんもゾンビに…!?」


 あまりにも様子がおかしいのでミクルベは今村が感染したのではないかと疑い始めるが今村は平然と返事をする。


「いや、ちょっと死亡フラグを立ててみてるだけ。何か物音がするな…まぁ俺の銃があればどんな化物もいちころさ…って何だ鼠かよ脅かすな…」

「今の状況じゃ面白くないよ!?」


 今村は止まらない。


「はは…まぁ戻ったら誰かが温かいスープを作って俺を待ってくれてるんだ…死ぬわけにはいかねぇよ…あぁ、早く家に帰らねぇとな…!っと!ここを曲がってしばらくすれば出口だ!」

「!ホント!?」

「あぁ!後しばらくが結構あるけど。」

「だから!」


 ミクリヤはこんな状況なのに可愛らしく怒って見せる。素なのだろうが何故か今村的にこいつゆとりあるなぁ…と感じた。


「大丈夫!このルートなら100%大丈夫だから!」

「…もう!冗談もほどほどにしてよ!不謹慎だよ!?」


 その時だった。咆哮と共に身の丈が3メートル近い化け物が今村たちの後ろから現れたのだ。


「きゃあああぁぁぁっ!」

「なーに、ミクルベさんが出るまでもない。俺が倒していきますよ!だからここは俺に任せて先に行け!」

「だからぁっ!もう!逃げるよ!」


 原作ムービーではあいつが現れるとパニックになって部屋を開け、そしてゾンビの群れの中に飛び込む位混乱していたはずなのに何か違うなぁ…と思ったがそれはまぁいいとして今はフラグを立てるのに勤しむことにする。


「ミクルベさんはあいつに伝えたいことだあるだろ?それは自分の口から言うべきことだ。なぁに…目の前のでかぶつ…あいつを俺が倒してしまっても問題ないんだろう?」

「何言ってるの!?早く逃げようよ!」

「さっさと行けぇっ!」


 説得は面倒なので勢いで何とかすることにした。そして何食わぬ顔で儚げに笑って見せる。


「あいつに…よろしくな?ちょっと喧嘩しちまってたけど…また会ったら今度は仲良くしようって。」

「…なるべく逃げながら待ってて!正面からとか絶対だめだからね!銃声が聞こえてたし、戦える人がいるはず!助けを呼んでくるから!絶対死なないで!」


 二人でかかっても勝てないと判断して、足手まといの自分にもできることを考え泣きながら走り去るミクルベ。それを見送りながら今村は獰猛な笑みを浮かべて右手を拳にして左の掌に横のまま打ち付ける。


 何となくした動作で「呪刀」を出した今村はそれを軽く振るだけでビルの床に綺麗な一文字の亀裂が入る。それは底が見えない穴となった。


 そして異様な気配を今村から本能的に感じ取った化け物どもは全力で逃げて行った。


「ちっ…ここじゃ銃しか使えんのか…あー逃げられた…よし!」


 今村は逃げているゾンビの一匹の顔を剥いだ。


「グロイね。きゃはは。」


 そして自分のゲーム内の服を何とか逃れようとじたばたするそいつに無理矢理着させる。すると勝手に自分の体は黒いローブに覆われた。


「…中二スティック…まぁしっくりくるからいいけど。」


 偽造工作を終えた今村は一度城に戻って休憩することにしてこの場を終えた。




 ここまでありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
よろしければお願いします
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ