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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十五章~彼の思うがままに~
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11.動き出す

 目が覚めると、今村は少し前に異世界に行ったとき以降の記憶が適当になっていた。が、まぁ気にしないことにして軽く首を動かして伸ばした後、ベッドから起き上がる。

 すると、黒髪で起伏に富んだ記憶が残っている自分の年齢より少し上くらいの美女が優しげに微笑んでいた。


「お早うございます。マスター。」


 そんなことを言われても全く記憶にない人物なので軽く目を細めて観察しながら返事をする。


「…どちらさまで?」


 月美はそんなマスターを見て寝起きの目を細めて軽く身構える辺りに記憶が無くてもそういうものか…と心中だけで納得しておく。


「私は月美と申します。あなた様の身の回りの世話を任された者です。」

「…そうですか。」

「では、現状確認をさせていただきますね?」


 月美は今村がベッドの向かい側に貼っておいた紙と現在の今村のちょうど真ん中に立ってその紙の暗記した分を今村に話した。


「…ふむ。なるほどねぇ…まぁ俺ならあり得なくもないか…」


 かなり荒唐無稽な話を今村は一瞬で信じた。と言うより、軽く記憶の改竄が行われており、それが微妙に不自然に感じられたので逆に自分を信じないという結果こんな簡単にいったようだ。


 そして月美は続ける。


「代償の末、何もないと危険であることを判断したマスターはここでの能力使用を全面禁止の呪いを掛けました。」

「まぁ…うん。俺基本的に嫌われ者だから襲われかねないだろうし…さもありなんだな。」

「居住区に罠はないようですが、エリアによっては能力なしでも発動できる場所があるので外には出られない方がよいそうです。」


 今村はこのままで話を聞くのが飽きてきたので行動しながら聞こうとして動き始める。そうすると目の前に紙が貼ってあった。その内容を読むと頷いた。


「あ、何だ書いてあるじゃん。…なるほど。来る奴は皆敵っと…あ、例外的に黒髪のロリ巨乳が寂しくて来るかもってか……黒髪ロリ巨乳ねぇ…実在するのな。」

「…早いですね。」


 月美は話していない分を呟く今村を見て単なる人間としての記憶しかないのにスペックにあまり変わりがないのに驚くが今村は軽くしか応じない。


「箇条書きだし。」


 軽く応じたはいいものの今村には目の前の美女が誰なのか分からなくなっていた。取り敢えず黒髪で服を圧迫する程度には巨乳ではあるが…ロリではない。


(んじゃ…敵かね?)


 今村の目に若干剣呑な物が込められるが、向こうは警戒することもせずにそれを受け止めた。


「…世話を任されたって…誰に?これは俺に書かれたメッセージっぽいけど…そんなことは書いてなかったんだが?俺との関係性を示せる小型の機械はある?」

「…出来ればそのまま信じて頂きたいのですが…私はマスターをお慕いしてましてですね…」


 この時点で今村は月美を信用する気が完全に失せた。


「それはない。はぁ…お、追い出しって念じればいいのか。」

「やはり信じるのは厳しいようですのでここにある財宝の一部のためです。ここから外に出すと危険ですが、私は毎日見たいのでここにいるのです。そしてその料金代わりに世話をすると申し出ました。」


 記憶が無くても知的生命体不信な今村に月美はそう早口に捲くし立てた。こちらは今村も多少信じたようで頷く。


「…まぁ…それならあり得なくもないか…雑務は面倒だから…いてもらってもいいと思うし…ん~でもなぁ…」


 どうやら記憶がない今村は思ったことが結構口に出るらしい。そんな発見をしながら月美は今村の説得を続けた。



















「…これが、神の愛ですね…」


 祓は能力と完全融合して悟りのようなものを開いていた。先程辿り着いた真理をもう一度確かめるように心中で繰り返す。


(私は愛していると言っていたのに愛されることしか考えていなかった…そんなことでは嫌われて当然…傍に居たいじゃ駄目。傍に居る。私を見てもらわなくてもいいから私が一番愛していると自信を持てるような行動を…)


 これが彼女なりの行き付いた答えらしい。そして水の鞭で海を叩き割ると何となくの直観で今村を探し始めた。


「…あっち…かな?」


 祓が水割り占いと勘で決めた行き先は正しい。彼女は神愛…アガペーを豊満な胸に抱きながら飛び去った。


(与えられるのではなく我が身を犠牲にしてでも先生を満たすことが出来る愛を与えられるように…)


 道中で新能力のテストをしながら祓は今村の世界へと向かった。



















「…戦争は取りやめじゃ。」


 サラは地獄の秘宝を自分に使って何となく思い出した時点で地獄の秘宝を永久に使えなくするレベルで酷使して全てを思い出した。この第3世界、最古の秘宝はこうして完全に壊れたのだ。


「…仁は…これで妾が諦めるとでも思っておるのかのう…?逆じゃぞ…?初恋の人と現在の想い人が同一と知って妾は…もう止まらん。」


 彼女の前にはいきなり告白して来た連中が軒並み倒されている。彼らは今村が唆しておいた者たちだ。


「…確か、白狼とか言う輩が来てからは弱体化する可能性があると言っておったな…?ならば…その体を洗って待っておるがいい…」


 第3世界の地獄女帝は不敵な笑みを浮かべて彼女の居城から消えて行った。



















「…あはははは~…本気でしんどいですよ~?取り敢えず仁さんの所に行かないとダメですね~…」


 同じく天界でも天界の秘宝を使い果たしてヴァルゴは復帰した。そして今村に問答無用で弾かれたことを受けて無理矢理笑顔を作っている。


 それを痛々しい物を見るかのように見た一行。その中でも代表であるミーシャが口を開いた。


「…まぁ…お辛いとは思いますけど…」


 ヴァルゴは何が言いたいのか察して全部言われる前に遮る。


「…分かってますよ~…この程度で諦めるわけないじゃないですか~…でもショックはショックなんですよ~…『もしかしたら、私は…』とかはやっぱり考えてましたからね~…」


 しかし、それはそれとしてここに居る彼女たちと連携を取って動かないと話にならない。それに先程サラからも連絡が入っていた。


「協力しないとですね~…私だけ置いて行かれて…挙句仁さんとのハッピーエンドに取り残されたらそれこそ最悪ですから~…」


 言い換えればまだ最悪の事態ではないと判断した。ちょうどその時にサラがヴァルゴの私室に現れる。


「思い出したかの?鳥頭。」

「えぇ~脳の栄養分が胸に盗られた蛇さん~」


 少し前ではその程度の軽口でも殺し合いにまで発展していたが今ではそれはどうでもいいと言う扱いで彼女たちは協力し合う。


「…転送に関しては仁の呪具でやってたからのう…まずは世界座標を調べないとダメじゃな。」

「申請が通ったところを調べましょうか~あなたたちはもしふよふよどこかに仁さんが出かけていたら教えてくださいね~」


 無論、ミーシャ達に異論はなかった。




 ここまでありがとうございます。


 大体ここで半分です。そして第15章が終了という事になります。

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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