10.殺殺殺殺…
「おーおー来た来た。じゃ…始めようか。」
今村はそう言って入界直後に大量の死人を出した白狼一族を見下ろした。
「まずは圧殺から…ちっ…警戒されてたか…まぁ連チャンはバレる気もしてたけど…お、油断した。縊殺しよ。」
巨大な金属の塊は避けられたものの、直後に亡者の腕により縊り殺される白狼の眷属たち。そして彼らは回廊を進む。
「さぁて…次々。お、そろそろ術の作用が浸透してきて憂い死にが出るかな?」
モニターの前では口の締まりがなくなり涎を垂れ流しにして目が虚ろになり始めたくすんだ毛並みの狼が出て来た。そして彼らは間もなく死んでいく。
それで軽い物だと考えていたものが実際は死に至る罠だとわかり事態を重く見た白狼・ユースはなるべく明るいことを考えて進むように伝令を下したが…
「今度は悦楽に溺れて死ぬんだよね~あはははっ!」
先程までとは真逆の意味で口の締まりを無くし、涎を垂れ流して生殖器を表面に出す狼ども。時折その場で同僚に襲い掛かる者も出て来た。
「ん~…この時点で3分の1も減ったら後がなぁ…」
脳内が悦楽に溺れて自我を殺された狼たちをユースは置いて行き…突如横殴りに衝撃が襲い掛かって来た。
「殴殺っと。さぁ~一列になったところで~?」
衝撃により道の端に寄せられた白狼たちを襲ったのはレーザー。それにより先頭集団は穴まみれにされる。
「貫殺来ました~!」
ユースが同朋の死を嘆き、遠吠えを上げるが今村はお茶菓子片手にモニターを見るだけだ。
続くデストラップは木。文字通りその存在が木になってその後考えることもなくなり自我崩壊する罠だ。
「でもってね~…次はスペシャルゲストです!さぁ皆様!世界最高の美少女が過去に作ったお料理!たんとお召し上がりください!」
そう言って今村はモニターの前でニヤニヤしながらスー…プ?を「水呪空印・湯風煙」で気化させてその空間にまき散らした。
突如来た苦味。しかし、まさに食べた物ではないその味だがそれにより実際に死ぬ者が出て来るのだから驚きだ。
「まぁ俺は喰ったんだけどね。健康第一って…ガチでイカレてたからなぁ…」
その次、血が暴れ、内部から破裂して血液が流れ出る者、血液が急に沸騰したりあるいは凍結したり…それによりついに白狼たちは半分になってしまった。
「あーりゃりゃ。…まぁ今までのは雑魚ばっかりってことで…」
次は幻惑により精神発狂。および自我崩壊や同士討ちにより数を減らすが思ったより減らなくなって来たので今村は範囲系の罠を特定に集中しようかな~と思い始めた。
次はいきなりの渇き。そして急激に体の水分を失うことでミイラ化し、死んでいく。その後は急に紐状、また縄の様な何かが出て来て吊して絞殺。
「さて、復習いっとくか。」
そして今までの全てが混ざった罠。残殺。これは現代では惨殺と言った方が意味が通るものだ。しかし、惨殺では語感が斬殺と混じるという事で今村はあえて古語でいった。
「んで~斬殺っ!これはついでに俺も~ひゃっはーっ!」
一瞬だけ通路の奥に出現して「呪死裂断」を飛ばす。ユースは今村の存在を感知して壁に攻撃したが壁は破壊できない。
「無駄無駄~限定術使ってるからね~安心しな~今回の限定要因はゴールがあるってことで~!」
「卑劣な…屋上で首を洗って待ってろ!」
「…首フェチ?舐めるの?キモいな~」
「黙れ!」
そう吠えていることには今村はもうその場にいない。呪殺場の準備に取り掛かっていた。その間に白狼たちは刺殺エリアに到達しており、重症者が増えた。
「その次はエグイよね。自殺促進エリアだ。」
これには多数の白狼たちが犠牲になった。長い長い年月を生き続ける者たちには非常に効力があるものなのだ。
まぁ、それはそれとして射殺エリア。銃や弓、弩に…飛び道具なら何でもござれとばかりに射掛ける。
そして次が今の今村くんが最も得意な呪殺場。中々に死んでくれたが自殺エリアの方が白狼の死体が多かった気がする。
「む~…やっぱり弱化してるなぁ…アレ使わんと…」
次はある意味天国のような地獄。食殺だ。これは今村の料理スキルにより美味過ぎて頭がおかしくなって死ぬ。もし、理性を持っていても食べることしか頭に残らず、共食い・果ては自分すら食べるという者も出る。
敵地ど真ん中。どう考えても食べてはいけないとわかってはいるものの、匂いが本能に訴えかけ、生きることよりも優先があるもの以外はつい誘惑に負けて死に絶えた。
お次は酸。体をぐずぐずに溶かす酸により…その次は世、自分と世界、その場にあるものの境界線が薄れ存在が消える…その次は素、素粒子になるレベルで分解されて…と白狼たちはどんどんと数を減らした。
そして…
「…やっぱりユースは生き残ったかぁ…最後の『怨』以て50の殺戮を成し遂げよまでやったんだけどねぇ…」
白狼族族長・ユースは生き残って今村の前まで現れていた。その目は血走っており、刺し違えてでも今村を滅ぼすと意気込んでいるのが見て取れる。
「はぁ…流石、怨敵にして仇敵【冥魔邪神】よ…我が一族の恨み晴らさせてもらうぞ!『白狼神化』!」
しかし…そんな白狼に対して今村は微笑みかけて言った。
「いやぁ…凄いねぇ。でも…それ禁止で~」
「んなっ…!?」
「でもってばいば~い。」
己の力を完全に防がれた白狼は何も理解できないままその頭を切り落とされ、そして魂まで斬殺された。
「はぁ…まぁ。こんなもんか。んでもって事後処理行きましょう!月美!」
まさに瞬殺で白狼をその辺に投げ潰した後、今村はすぐに月美を呼んだ。
「は…はい。」
「今から俺は代償で記憶飛ぶから。今の使った分の時間で換算すると…この世界で6年。」
その言葉を受けて勿論話を聞いていない月美は驚いた。
「だ…それは大丈夫なのでしょうか…?」
「…まぁ、こないだバカンス代わりに記憶無くして心から戦闘を忘れて異世界に飛んでみたら記憶無しで神とバトってたぐらいだし戦闘的にも性格的にも特に変わらんだろ。」
それはそれで問題がある気もするが、あまり時間がなさそうなので月美は自分が呼ばれた用件を尋ねる。すると今村は普通に笑って答えた。
「あぁ、人間時だと今ほど理性が強くないと思う。だから色んな意味で襲うかもしれんから適当な所に避難しておいて。で、呪具は他の誰の手にも渡さないように。」
「…………はい。」
「んじゃ…未来の俺へっと…」
今村は小学生の卒業する時の手紙みたいな題名でここの取扱い方、それに現状ややること、注意事項などをまとめた物を作りだした。
「よし。んじゃ…」
今村はこうなる可能性が出て来た時点での保険であるここの自室のベッドに転がって意識を失った。
ここまでありがとうございました~!




