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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第十四章~変革の時間~
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15.白狼さん

「みゅ…みゅあ…?」

「…お、起きた。能力に問題は…ないな。」

「え…パパ…これどういう状態…?」


 みゅうが目覚めた時にはサラ、ヴァルゴが荒縄で服の上から亀さん系の縛りを受けて天井から吊るされ猿轡を噛んでいた。


「五月蠅かった。以上。帰るぞ。」


 その件に関しては端的に答えておき、今村は寝ているクロノを揺り起こした。


「ん…あ、お兄ちゃぁん…」


 黒髪の美幼女、クロノが寝起きで今村に甘えた声を出した瞬間、みゅうが親の仇を見る目でクロノを…正確にはその一部分を睨みつけた。


「…みゅうちょっとその子とお話がしたいなぁ…」

「え!いいよ!みゅうちゃんって言うんだって!?よろしくね!」

「…うん。」


 今村が天井から二人を降ろしている間にみゅうはクロノの胸部を凝視して暗い顔をする。


「みゅうだって…大きくなれば…」

「え?え?何何?クロノどうかした?」

「さぁて…帰りましょうか…」


 混乱している場の状況などお構いなしに今村はサラとヴァルゴをローブで適当に持ってみゅうを促す。


「え、あ、う、うん…ぅにゃっと…」


 今村の邪悪な笑みが浮かんでいるのを見てみゅうは何かまたよくないことをたくらんでるなぁ…と思いながらキスされるので喜んで時空間を飛んだ。
















「…お、あの世界は壊されたな。クロノ危なかったなぁ~?」


 出発してしばらくし、力の探知でクロノが先程までいた世界が特異点討伐隊によって破壊されたのを知った今村はクロノにそう告げた。クロノも頷く。


「ホントお兄ちゃんがいなかったら…」


(ふっふっふ~みゅうの仕込み通りクロノちゃんもパパにめろめろだね!胸がおっきかったのは知らなかったけど…まぁいいや!これでパパを包囲できるよ!【可憐なる美】様まで陥落させてたのは流石に驚いたけど…こちらからしたら1000神力!覚悟してね!)


 クロノが今村にべったりなのを見ながらみゅうは心中で喜びの声を上げる。そんな時、みゅうの移動中の自空間にクロノがいた世界方面から干渉が入った。


「っ!パパ!何か来るよ!」


 それを受けて今村は「千辺特化異化探知」を行い、顔を歪める。


「…ちっ。良い所によぉ…まぁいっか…知った顔みたいだし…『転移宝玉』みゅうこれ中に入れたままにしてろよ~」

「え、うん…でも!危なくなったら…」


 みゅうが心配そうな顔をするが、今村はそれを煩わしげに受け取ってからふと思いついたことを実行することにし、それを面に出さないように適当なことを言ってみゅうを宥めておく。


「ならんよ。あの正義馬鹿はちょろいから。他が来てればキツイかも知れんがいないみたいだしなぁ…」


 そして今村は手間が省ける良い獲物が来たとばかりにみゅうたちの移動空間からすぐ外まで来ている訪問者の下へと移動した。





「…【冥魔邪神】……お前か。」

「はろ~!壊れ人狂い人化物の【悪魔の申し子】だよ。ユース。おっひさ~」


 目の前に現れた今村に対して何の驚きもせずに相対したのは巨大な白狼だった。彼は今村のふざけた態度に牙を見せて唸る。


「世界のバグが…」

「バグも昇華されれば仕様だよ?まぁそんなことは置いといて、ユースにお話がありま~す!」


 今村は『呪具』のクラッカーを出してパーンッ!といい音を出しながらふざけた対応を取る。ユースは慣れた態度でそれに耳を傾けた。


「ぶっちゃけ今の俺めっちゃ弱いじゃん?」

「…そうだな。今のお前と決着をつけるのは好ましくないと感じるほど弱っておるな。」


 白狼は重々しい態度で首を縦に振った。今村は内心の嘲りを面に出さずに話を続ける。


「んで、雌雄を決す的な戦闘するにはさぁ…やっぱりそれ相応の力での攻防が望ましいよな?んじゃ…分かんねぇ?」

「…見逃せ、と?」

「そそ。まぁ勇気を重んじ秩序を貴び誇りを胸にする白狼の長ともあろうユースが弱ったから!と全力で攻撃して戦いたいなら…まぁ別だけどね~」


 今村は悪戯っぽく笑う。その目にはするわけないよね?という侮蔑の視線が宿っている上、体の薬物は思考を減退する物に変えてあり常時発動の危機感減退能力の効きもばっちりだ。


「……確かに、今のお前と闘うのは気が乗らんのは事実だ。」

「お、んじゃ…」


 今村の言葉を遮って白狼は「ただ、」と続ける。


「これだけ特異点、それにゲネシス・ムンドゥスという異質世界が広がっている中漫然と見逃すというのには無理がある。」

「おっけ~んじゃ、ほい。」


 今村は白狼に歪な砂時計を放り投げた。それは逆さにしても砂を落とさない役割を放棄していると思われるものだが、白狼の耳はほんの僅かだが落ちる砂の音を確認していた。


「…これは…まぁ察するに決戦までのカウントダウンということか?」

「そういうこと。それはゲネシス・ムンドゥスの大体5日ね。今の俺は『呪い神』だし。準備させてれば戦士の面目も立つだろう?」

「…相手から申し込まれた決闘だ。我らは受け取るだけよ。そして、勝つ。」


 白狼はそう言って肯定の意を示すと軽く睨んで念動力で砂時計を浮かし、虚数庫の中に仕舞った。


「ところでさぁ、決闘に邪魔が入るとアレじゃん。俺友神はいないけど悪ノリする知り合いはいっぱいいるからさぁ。」

「…『隠者の宝貨』を貸せと?」

「察してくれるとありがたいね。」


 「隠者の宝貨」は一定以上の格上の能力者、もしくは権力者の認知阻害の効果を持っている。


 今の今村であれば第1世界中級程度の神々を格上を宝貨は判断し、その能力を発揮するだろう。


 そして白狼は第1世界の下級だ。能力の発揮は出来ない。白狼は価値を疑っていないので今村に念動力で黒味がかった金貨を軽く投げた。


「…では、誇りに掛けて誓ったぞ。」

「あぁ。」


 白狼はそう言ってこの場所から消えて行った。一人残された今村は顔を一気に破顔する。


「ちょろい!今の俺の速攻で作った毒じゃ思考誘導程度しかできないのに!何てチョロいんだ!この場で殺せばよかったのに!ぅう~あ~っ!愛してるぜあの馬鹿を!ひゃっはー!」


 今村は宝貨をローブの襟首に収納しておく。そしてくるくる回った。


「…でもまぁさっき大量に読書した時に思ったけど…しばらく隠遁生活も悪くないかも…何てったってテンションで能力値が変わるし!ってか読んでないのが山ほどあるしな~ん~」


 そんなことを言っていても今村の計画的にはまずクロノに協力してもらう作品のことが今の優先順位No.1だ。


「まずは創って~あ、戦力増強のために『幻夜の館』の面々の記憶貰うか!俺は『復讐法ハンムラビ』が強くなる。相手は俺の(嫌な)記憶がなくなってWin-Winだ!ヒャハハハハ!」


 そこで今村はふと襟首に仕舞った宝貨の効きが微妙であることに気付いて修正を入れる。


「おっと、落ち着けってかぁ…?フフフフフ…大丈夫大丈夫…ククククク……あ、そう言えば記憶がなくなった時の女性の落とし方を知らん奴と茉優で撮ってそれを相馬に役立てようとしたのは失敗したんだったなぁ…」


 今村の思考は修理しながらでも仮に今考えていることを実行した際の未来予想に向かっている。


「…まぁ記憶の弄りはいいか。勝手に矛盾を脳が消してくれるでしょう。祓に関してはちょっと弄った方が面白そうだから…やっぱ面白さって正義だよなぁ…」


 「隠者の宝貨」の効果が自分でもはっきり分かるようになって今村は改造の手を止め、歪んだ笑みで舌打ちする。


「あの馬鹿女神ども…変な加護掛けてたな…?まぁこっからは大丈夫だが…まぁいいや。こっからは…愉しいし。」


 殊更楽しげな顔になると今村は「転移宝玉」の下へと飛ぶ準備を一瞬の間にしながら呟いた。


「さぁ、始めようか…」




 ここまでありがとうございました!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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